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コナン・ドイル『マラコット深海』

 

 コナン・ドイル(Sir Arthur Conan Doyle)著, 大西尹明訳『マラコット深海』("The Maracot Deep")東京創元社 1963 創元推理文庫

 潜水艇の前段階の潜水装置に「潜水球」というのがある。船から吊り下げられた中空の球に乗り込んで、海中を調査するというシンプルな仕組みのメカだ。『緯度0大作戦』(1969)や『アトランティス7つの海底都市』(1978)などの名作SF映画に登場してたのが印象深いけれど、架空のものではなくしっかり実在メカで、この『マラコット深海』が発表される前年に考案されている。正確には密閉型のものを「潜水球」、下部が水中に向けて解放されているものを「潜水鐘」と呼ぶらしい。『アトランティス7つの海底都市』の「ベル号」は形状こそ球形だが、その構造からして潜水鐘と呼ぶほうが適切かもしれない。
 この潜水メカは潜水艇と比べると自由度が少ない代わりに、ケーブルでがっちり水上と繫がっているという安心感がある。もちろん映画や小説の中では、決まってそのケーブルが切れてしまうのだけれど……。

 本作の主人公たち三人が調査のために乗り込んだ潜水メカは、その形状から「潜降函」と呼ばれているが、構造は「潜水球」と同様のものだ。案の定、巨大ザリカニ怪物にケーブルを切断されて、人跡未踏の深海へと降下していく。絶望的な運命を早々と受け入れて、意外にもお気楽に過ごしていた主人公たちを救出したのは、深海の環境に適応したアトランティスの人々だった……。彼らが登場した途端、それまでのSFっぽかった作品のトーンが急激に変化して、ファンタジー色というか、オカルト色が強まっていく。

 SFにカテゴライズされる著者の長編作品には『失われた世界』("The Lost World")、『毒ガス帯』("The Poison Belt")、『霧の国』("The Land of Mist")、『マラコット深海』の4作品がある。『マラコット深海』は著者が心霊現象に真っ向から取組んだ『霧の国』に次いで、その死の前年に発表されている。若かりし日に船医として洋上に身を置き、眼科医でもあった著者が、晩年心霊学に傾倒していったことはよく知られているが、本作の構成はそんな著者の人生の変遷をそのまま反映しているようにも見える。潜降函、瓶詰の手紙、アトランティス大陸、深海の怪物などなど、あまり活躍しないものもあるけれど、晩年の著者の好んだガジェットの数々がてんこ盛りに盛り込まれているのも楽しい。


 アトランティス 7つの海底都市 [DVD]』スティングレイ 2010


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