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ヨナス・リー『エリアスとドラウグ』

 

 ヨナス・リー(Jonas Lauritz Idemil Lie)著, 長野きよみ訳『エリアスとドラウグ』("Elias and the Droug" ロアルド・ダール(Roald Dahl)編, 乾信一郎, 他訳『ロアルド・ダールの幽霊物語』("Roald Dahl's Book of Ghost Stories")早川書房 1988 ハヤカワ文庫 所収)

 ノルウェーにはおなじみのクラーケンをはじめ、数多くの怪物の伝説が語り継がれている。16世紀に描かれた北欧の海図(カルタ・マリナ"Carta marina" ←詳しくはwiki等参照)を見てみると、やばいくらい怪物だらけで、まともに海には出られそうにない雰囲気。

 著者ヨナス・リーはノルウェーの漁師の迷信をベースにした民話調の短編小説をいくつも著していて、本作もそんな作品の一つだ。もちろん怪物も登場するが、出てくるのはクラーケンのようなUMAっぽいモンスターではなく、日本の舟幽霊の親玉みたいな怪物「ドラウグ」。訳注には「ドラウグは海の怪物で、海で行方不明になり埋葬してもらえなかった人々を乗組員としてひきいて船を操る。北部ノルウェーの迷信では、ドラウグを見た人間はすぐに死ぬといわれている」(p.149)とある。

 ストーリーはアザラシの姿をしたドラウグに傷を負わせた漁師が、家族とともに乗り込んだ船で暴風とドラウグに遭遇し、家族を失うというもの。登場するたびに姿を変えるドラウグが不気味だ。なかでも漁師の死の予告に現れるシーンは、心霊ものっぽい雰囲気満点。そしてクライマックスでは、漁師の目の前で妻や子供が次々と波にさらわれていく。前述のように民話調の作品だが、牧歌的なところは全然ない。絶望的な状況が端的に表現されていて、殺伐とした印象さえ受ける。数ある海洋奇譚のなかでも珠玉の作品だと思う。

 この作品が収録されている『ロアルド・ダールの幽霊物語』の編者ロアルド・ダールは、映画やTVドラマの脚本家(ヒッチコック劇場など)としても知られる作家で、本書に収録された作品はもともと『ゴースト・タイム』というTVシリーズの原作として集められたらしい。残念ながらTVシリーズパイロットフィルムを製作した段階でお流れになってしまったが、700以上の作品から選りすぐったというだけあって、さすがに面白い作品ばかりがずらっと並んでいる。幽霊小説が好きな人にはすごくおすすめ。


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