木村心一 『これはゾンビですか?〈6〉はい、どちらも嫁です』

 

 木村心一 『これはゾンビですか?〈6〉はい、どちらも嫁です』富士見書房 2010 富士見ファンタジア文庫

 シリーズ初の短篇集。収録されているのは雑誌などに掲載された「第一話 水着の価値プライスレス」「第二話 いいえ、私は乙女座の女」「第三話 それは流れ星ですか?」「第四話 ようこそ危険地帯へ!」「第五話 ヌルヌルは正義」「第六話 一年で一番床を叩かれる日」の6話。各話のあいだをちょっとしたコントで繋いでいて、これ以降に出た短編集もこのフォーマットを踏襲している。今回のコントは「相川歩セクハラ裁判」。各話がセクハラ裁判での証言、回想ってことになっている。

 香ばしいタイトルが並んでるが、内容も相当自由な感じ。「第一話」は水着回、「第二話」はユーの誕生日の話、「第三話」はアニメ本編でも感じよく映像化されていたトモノリの天体観測の話。「第四話」はセラの料理回、肉じゃがの秘伝書を巡るドタバタ劇だが、珍しくしっかりデレるセラが可愛いのでセラファンは必読。「第五話」はセラvsサラスのヌルヌルバトル。「第六話」は平松が本領を発揮する百人一首大会だが、歩との過去話にも触れられていて、実は平松がヒロインなかで誰よりも早く歩とのフラグを立てていたことが判明する。

 という感じで、うっかりまるまる飛ばしても、本編を読む分にはほとんど影響のないエピソードばかりで、いつにも増して気楽に読むことができた。アニメでは本編に組み込まれた話もあるし、OVA化されたエピソードの多くはこの巻から採られている。本編から独立してるから使い勝手がいいらしい。基本的にどれもメインのキャラを二人ほどピックアップして、すったもんだのあげくその絆が深まりましたって感じの筋立てなので、該当するキャラのファンならより楽しく読めると思う。


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

木村心一『これはゾンビですか?〈5〉ああ、マイダーリンはロクデナシ』

 

 木村心一『これはゾンビですか?〈5〉ああ、マイダーリンはロクデナシ』富士見書房 2010 富士見ファンタジア文庫

 前巻で復活した最強の魔装少女リリスの弱点を探るべく、それを知っているという京子を招いての合コンが開催される。アニメでは一話の半分程度に圧縮され、規模自体かなり縮小されていた合コン回だが、原作では一冊まるまる使って合コン(と吸血忍者の会議)をやっている。舞台が合コン会場が中心になるから、いつもの居間でまったりなシーンはごく少なめ。新キャラといえばミミズクくらいで、相川勢力の四人と他のレギュラー陣とのカオスな交流がじっくりと描かれている。ストーリーよりも会場のあちこちで発生する単発的なイベントを積み重ねる構成で、モブの多さからしてこの原作通りにアニメ化するのは確かにちょっと大変そうだ。

 そんな混沌とした状況下、渦中の京子を上回る勢いで存在感を発揮したのは大先生だった。それとアンダーソン君とミミズク。大先生は「魔装少女」の無茶さをストレートに体現したようなナイスキャラだけど、立場上、普段前面に出ることがない。それだけにこの巻ではアンダーソン君とのからみ(エロい意味じゃなくて)、酔っぱらい具合、恐るべき太っ腹ぶりなど、いいシーンが多くて嬉しかった。一応戦闘シーンもある。ほんとハルナじゃないけど「アユムん家に住めばいいのにっ!」って思ってしまう。
 前巻で株を上げた平松も登場シーンは少ないものの、しっかりとフォローされている。ユーと平松の将棋対局は屈指の見せ場だと思う。あとユーがいちいち妬いてるのも実にいい。歩が合コン会場と吸血忍者の会議(宴会)を行き来するドタバタぶりも、コントみたいで楽しかった。

 という感じで思いつくままに書いてしまったけれど、この第5巻ではクリスの弱点と居場所をはじめ、大先生の弱点(?)、アンダーソン君の特殊能力と戦闘力、それから次巻への伏線となるS級メガロの存在など、重要な情報が諸々判明している。
 合コンで一冊というとどうにもアホっぽいけれど、ネタ満載で満足度は高い。好きなキャラが活躍することもあって、とても楽しく読むことができた。


 これはゾンビですか? オブ・ザ・デッド〈4〉[Blu-ray]』角川書店 2012


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

木村心一『これはゾンビですか?〈4〉うん、先生が最強だよ!』

 

 木村心一『これはゾンビですか?〈4〉うん、先生が最強だよ!』富士見書房 2010 富士見ファンタジア文庫

 声優さんの素晴らしい酔っぱらい演技と、レインボーカラーに彩られたゲロが印象的だったアニメ二期、その後半のそのまた半分くらいのベースとなったのがこの第4巻。学園祭の話です。

 学園祭の準備の夜という甘酸っぱいシチュエーションのなかで、これまでじわじわと頭角を現してきていた平松の魅力が炸裂している。あとトモノリもアホかわいい。相変わらず本題に入るまでのフリ、日常(?)シーンがやたら長いのだが、それがまたおもしろかったりする。学校が舞台になると、むりやり登校してくるハルナ以外の居候娘二人の出番は必然的に少なくなっしまって、前半はとくにそんな感じなのだが、学園祭がはじまって以降は話せるようになったユー、トイレの花子さん姿のセラの可愛らしさを堪能することができる。

 今回は最後の最後にクリス vs 吸血忍者+歩の戦闘があるくらいで、バトルシーンはごく少ない。しかもクリスの強さが圧倒的すぎて、まともな勝負になっていない。このクリスというキャラ、実は原作を読んだ時点では、いまいちピンとこないというか、良さが分かりづらいキャラだったのだが、アニメで動いて酔っぱらってるのを見て、俄然好きなキャラになった。いやー魔装少女いいわ。全般的に。

 アニメはこの原作を大幅に改変しながら、ここはってシーンをしっかりと押さえて作られていた。各イベントとキャラの感情線がよりシンプルに整理されていて、原作を読んだあとでも間違いなく楽しめると思う。ユーが熱血したり土下座したりといった、微妙にキャラがぶれてるように感じられたところは、さっくりカットされている。
 もちろんアニメしか見てないって人とっても、この原作はおすすめ。アニメでは消化しきれなかった設定もあるし、葉書職人のネタのような文章のおもしろさにもますます磨きがかかっている。


 これはゾンビですか? オブ・ザ・デッド〈1〉[Blu-ray]』角川書店 2012


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

木村心一『これはゾンビですか?〈3〉いえ、それは爆発します』

 

 木村心一『これはゾンビですか?〈3〉いえ、それは爆発します』富士見書房 2010 富士見ファンタジア文庫

 アニメ二期の放送が終わってからしばらく経つが、「これゾン」はローテーションにしっかり残っていて、もう何度か見返している。ミストルティン先生がぶっ壊れてから復活するまでのアホな展開は、何度見ても飽きの来ない素晴らしさだ。アニメと原作ではあちこち異なってるがどっちも面白い。

 この第3巻はまだアニメでいうと1期の途中で、ユーが全然出て来ないからファンには寂しい限り。しかしその代わりといってはなんだが、残された面々の絆がしっかり深まっている。掛け合いはいつも通り素晴らしいし、キャラの意外な一面が描かれてたりするのも楽しい。そしてこの第3巻ではセラがじみーに株を上げている。もともと料理に関してネジが飛んでるだけで、数少ないしっかり者キャラだったのだが、これまではどうしても一歩引いてる印象が強かった。それが今回は凹んだり弱ったり甘えたりして実にイイ。とくに印象的だったのは↓この場面。

 俺はセラの頭にぽんと手を置く。そのまま髪を撫でようとしたが、
「歩、セクハラです」
 セラは涙目で俺を睨み付けたので、手を離した。
 すると、セラはいきなり胸に飛び込んできた。
「おいおい、セクハラだぞ」
「これは、……サービスと言うんですよ」(p.95)


 ……まぁ、こうやってここだけ引用してみると、単に甘々なだけのような気がしないでもないが……とにかく、すごくいいシーンなんです。普段はきっつい綺麗なお姉さんなんですよ、この人。最後の最後にユーが出て来るし、ハルナはいつも通りアホ可愛かったりするんだけど、やはりこの本で一番のシーンといえばここかなぁ。

 というわけでユーをめぐる「夜の王」との抗争も、まるで最終回のように一件落着。この第3巻は表紙から中身まで、セラに持ってかれたって感じで、ファンの人は大喜びに違いない。そういえばストーリーについては全然触れてなかったけど、こう見えて結構古典的な構造の物語がしっかりとあります。ほかにこの巻で判明したことを列記すると「ハルナは十四才」「ゾンビってレベルじゃねぇ」「ヴィリエと冥界の抗争の理由」「悪魔男爵は実在する」など。次の第4巻では新展開、妖精さんも登場する。


 これはゾンビですか? ~ずっと、貴方が好きでした。青春のBlu-ray Box~』角川書店 2012


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

木村心一『これはゾンビですか?〈2〉そう、私は死を呼ぶもの』

 

 木村心一『これはゾンビですか?〈2〉そう、私は死を呼ぶもの』富士見書房 2009 富士見ファンタジア文庫

 この作品に登場する女の子は、ユーを筆頭にことごとく可愛らしく、何だかんだいいながらも主人公に好意的だ。しかし、主人公の歩がまったく羨ましくならないのがこの作品のおもしろいところで、得難い美点だと思う。まず惨殺されて、ゾンビとして復活、腕がちぎれたり胴がまっぷたつになるけど、復活、ゴスいコスプレでキモイと罵られながら戦うなんて、さすがにハードル高すぎる。

 というわけで紫の表紙の第2巻。表紙のイラストはユーだけど、なんといってもこの巻の目玉はシリーズ屈指のボケキャラで巨乳のトモノリの登場。それと大先生の戦闘シーンかな。

 まずは日常シーンから。アニメでもよく再現されていた試験勉強の一幕。三者三様のリアクションが楽しく描かれている。なかでもハルナの天才すぎる天才ぶりが遺憾なく発揮されている。相変わらず個々のリアクションを通して登場人物を紹介するのが上手い。ゲームセンターで遊ぶシーンも同様で、ユーがメダルゲームってところが愛らしい。またハルナとセラが、いつのまにか随分仲良くなってるらしいことが判明する。セラは完全にハルナの「お姉さん」だ。
 このゲーセンのエピソードが全体の丁度半分くらいで、ここまでのあいだにトモノリが先々拡張性の乏しそうな「豚骨ラーメン」というアイテムを引っさげて登場している。

 そして夜の王の登場。あー、これ前巻から続いてたんだ。そういえば前巻のラストくらいで一悶着あったような……。登場人物がずっと和気あいあいとしてる状態が続いても、本筋はどうなったんだよ、とか気にならないのもこの作品の素晴らしいところ。
 素晴らしいといえば、前巻でやたら目についた歩の「~なのさ」って言い回しがなくなってる。あれわざと痛いキャラを演出してるのかと思ってたけど、もしかして著者は素で書いてたのか……いや、効果が薄いってことで止めたのかもしれない。とにかく改善されてよかった。変な語尾にしなくても、上記のようにリアクションでその人となりが伝われば充分だと思う。

 この第2巻の七夕のくだりで、歩がいくらなんでもそりゃないだろ!ってほど頭の悪い願い事を短冊に書く。あまりの暴挙に物凄い違和感を感じてたんだけど、最近『ユリイカ 2013年 2月号』の著者のインタビューを読んで、多少納得することができた。なんでもゾンビになった時点で、歩はもとの歩よりも相当バカになってるらしいのだ。……なるほどー。今回も物語は全然収束する気配なく次巻へと続く。


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』

 

 木村心一『これはゾンビですか?〈1〉はい、魔装少女です』富士見書房 2009 富士見ファンタジア文庫

 めでたく11巻も発売されたことだし、この機会に1巻から感想文を書いてみようと思う。

「えっ! アニメ化すんの? 遅すぎる! 」というでかい文字が目に付くピンクの帯にピンクの表紙、タイトルが見当たらないけど、「1 はい、魔装少女です」←これがタイトルか?? というのが第一印象だった第1巻。
 ためしに買って読んでみたら、これが面白かった。そしてアホだった。もともと筆談キャラが大好物なので、ユーがどストライクだったってこともある。とくにユーのメモは「肉がいい」「素敵」などなど簡潔な分、歩じゃないけど想像の幅が広がって実にいい。それからユーの紫のドレスをはじめとする、各キャラのコスも素晴らしい(歩の魔装少女コスは除く)。

 この1巻では冒頭で主人公の歩が、空から落ちてきた魔装少女のハルナと出会うところからはじまる。絵に描いたような「落ちもの」だ。二人で帰宅すると居間ではネクロマンサーのユーがお茶飲んでいる。主人公の非日常は少し前から始まっていたらしい。というか一回死んで、すでにゾンビ化している。
 本書のゾンビは、なにをされても死なない、リミッターが外れているからバカ力が出る、太陽光線に弱い、という点が特徴で、あとは普通の人間と変わらない。ロメロゾンビやブードゥーゾンビのイメージとは相当異なっている。ネクロマンサーや、さらっと夕食に混ざってる吸血忍者についても、作劇上足枷になりそうな設定はあっさりカット、俺設定満載のキャラクター造形となっていて清々しい。キャラが多くても著者が好みで設定の枝葉をはらっているから、煩雑にならないのがいい。

 そうこうしてるうちにメインの四人が出揃ってしまう。人集めにだらだらとページを割かない。キャラの可愛さが最重要な本書において、さっさとみんな揃えて、互いの初対面のリアクションでキャラの性格描写までしてしまおうという判断だろう、多分。そしてその狙いはばっちり成功していると思う。ユーとハルナの静かに互いを牽制し合うかのようなリアクションは実によかった。途中、回想として挿入されるユーと歩のなれそめも、珍しくしっとりとしたいい雰囲気だった。

 本書はプロローグに続いて、一応繋がりのある4本の短編、エピローグという構成。第一話で面子が揃って以降は「メガロ」という動物のぬいぐるみの形態をした敵キャラを倒したり、ボーリングや買い物に行ってドタバタするという通常営業に入る。何度が戦闘描写があるけれど、一人称で状況を解説しながら戦うというのはさすがに苦しそうだ。
 4本の短編を繋ぐストーリーは、ゾンビ化する前の歩を殺したのは誰かというミステリー仕立てになっている。早々とバレてしまってるような気もするが、犯人が判明して、それをさらに影から操る者の存在を匂わせて本編は終わる。あちこちに次巻以降に使えそうなタネがばらまかれているし、まだまだ語り足りないところが多く残されてる感じ。
 
エアマルチプライアー AM01N30IB』Dyson (ダイソン)


にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)