ARIA (アリア) 2016年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』最終回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』最終回

 - エピローグ -

 帰宅途中、広田は電車の中でたまたま麻衣を見かける。あの事件からどのくらい経ったのかは分からない。一週間やそこらではなさそうだ。依頼者は結局、あの家から引っ越してしまったらしい。
 平日のかなり遅い時間である。これからバイトに行くという麻衣を、半ば強引にオフィスまで送るという広田。道すがら二人は何気ない言葉をかわす。いかがわしいバイトのこと、そしてこの世に残った死者の思いのこと。そんなことを話しているうちに、広田は麻衣の心に触れる。「あたし何もできないけど、可哀想にって言ってあげたい。あなたが辛くて、あたしも辛いよって、せめてそう言ってあげたいの」
 短い別れの言葉を告げて駆けていく麻衣。夜を迎えた渋谷の街には人が溢れている。

 2012年9月号から4年にわたる連載が終了した。
 このエピローグの登場人物は二人だけ。雑踏の中で交わされる、何気なくて少しぎこちなくて、ムズムズするような二人のトークの流れが素晴らしい。これまで小野不由美の原作小説には触れてこなかったが、最後なので少し書いておくと、このコミカライズ版では原作から大小様々な変更点がある。大きなところではキャラが削られていたり、小さいところではセリフが整理されていたり。ここの広田と麻衣の会話も原作ではもう少し長くて、麻衣のちょっと小悪魔的で世話焼きな性格が発動しているのだが、本作ではそのあたりを思い切って削って、麻衣の優しさと純粋さに焦点を当てている。もちろん肝心なところは削られてないのだけれど、おかげで麻衣の可愛さが何割増しかになっている。

 それにしてもこのしんどい内容の作品に、4年間も向き合っていた著者はさぞかし大変だったろうと思う。おかげで最良のコミカライズを4年間も楽しむことができた。このエピローグの冒頭、広田が車内の麻衣を見つける数コマ。他の乗客に埋もれるように立つ麻衣の姿を斜め後ろから捉えた、なんてことはない絵面のコマなんだけど、読者を作品に引き込む力はハンパない。こうしたシーンを見ることができるのがコミカライズの醍醐味だと思う。

 というわけで「ゴーストハント」関連、次からはリライト版を頭からか、本作の原作のどっちかの感想を書く予定。いやその前に本作のコミックス第3巻か。『悪夢の棲む家 ゴーストハント』シリーズ完結第3巻は10月7日発売。


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ARIA (アリア) 2016年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第21回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第21回

 - DAY 5 -

 ……関口の霊が除霊された翌朝。約4年間にわたって描かれてきた真っ暗な5日間が終息し、画面は穏やかで清浄な光景へと反転する。すごい開放感。画面が白い。綾子はなんかキレてるし、麻衣はナチュラルに綾子を煽ってるし、真砂子はしゃべらないし、ナルと広田は元通りトゲトゲしている。こんな姦しくも頼もしいSPRの面々とも、もうすぐお別れだ。
 警察の聴取に応える笹倉一家には一連の記憶がまるで無く、何が何やらといった状態のようだ。彼らは罪に問われてしまうのか。事の成り行きには頓着せずに、彼らを擁護する麻衣。彼女のこんな闇雲な優しさが人も霊も癒していくのだろう。

 リロードされる川南辺家のあの日の様子は、このシーンのために4年間真っ暗だったと言われれば、納得してしまうほどの美しさ儚さで胸を打つ。過去の記憶と現在が交差する一刹那が全力で表現されている。「入ってくるな」「戻れ」「そっちへ行くな」という広田の台詞が切ない。玄関に置かれた土産の紙袋の、細々とした中身まで彼は熟知している。広田の事件に対する思い入れはこんなにも深かったのだ。

 次回はいよいよ最終回。


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ARIA (アリア) 2016年 05月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第20回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第20回

 侵入したラスボスと思しき怨霊に九字を放つぼーさん。生前の外形を留めた影のような姿が、数ページかけて暗闇に溶けていく。終わったらしい。残留していた元の家族の霊もやがて消えていくだろう。SPRの面々に安堵の色が浮かぶ。依頼者の家族はまだ少し不安げだ。そんな中ナルはジーンと対話をしていた。ジーンはやけに眠くなってきたと言う。存在のための「場」が解体されようとしているのか……。

 記念すべき連載第20回だけど、短っ! ! 扉合わせて13ページのうち、九字砲発射→怨霊消滅で半分以上を占めているから、尚更短く感じられる。これ前回分と一緒に載せた方が、スッキリ綺麗にまとまって良かったんじゃないだろうか。コミックスでまとめて読む分には関係ないけど、原作付きの雑誌連載ってこのあたりの構成がほんと難しいと思う。劇中の経過時間は多めに見積もっても10分そこそこ。
 というわけで今回もページ数的には物足りなく感じたが、ラストのナルとジーンのガラス越し? の会話のシーンが、久々にしっとりとしたいい雰囲気だった。長らく霊能バトルや過去の殺戮の再現のような、殺伐としたシーンが続いてきたからなー。

 あと『孤島の鬼』の方は連載快調。各ページがキャラクターのキメ顔のアップで構成されてる感じの、不思議な絵面の作品。


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ARIA (アリア) 2016年 03月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第19回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第19回

 前回から引き続き真っ暗な屋内で、隣の笹倉一家の猛攻を凌ぐナル&広田。ナルに降りかかる恐怖の刃 ⎯ あわやってタイミングで、超久々に麻衣の九字砲が炸裂する。さらに荒事ならこの人の、リンさんが合流。ルパン三世で五ェ門が出てきたみたいな、盤石の安心感だ(ぼーさんたちもひっそり合流)。屋内に侵入した笹倉一家を一通り掃討する。

 扉合わせて全15ページをフルに使ったPK、式神、九字砲が飛び交うトンデモバトル回だが、相変わらず真っ暗なこともあってすこぶる地味なのが「ゴーストハント」らしい。一般人なら軽々殺られるフィジカルレベルの笹倉一家をわりと容易く倒していくSPRの面々。それでも能力が絶妙にチューニングされているから、そんな無茶な……って気はしない。地味だけど。
 最後の最後でラスボスが登場していよいよクライマックスのクライマックス。しかしほんとにジリジリしか進まないなあ。

 ところで今月号で『すべてがFになる』がバタバタっと終了したかと思うと(全8話)、今度はなんと江戸川乱歩の長編『孤島の鬼』のコミカライズがスタートした(※)。『孤島の鬼』は乱歩の趣味と実益を兼ねた最高傑作って言われる作品だけど、確かに『ARIA』向きかも。


 ※雑誌『ARIA』サイト内『孤島の鬼』の作品紹介です→ http://aria-comic.jp/contents/list191.html


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ARIA (アリア) 2016年 01月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第18回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第18回

 うっかり忘れそうになったけど、定期購読してたおかげで助かった。雑誌の小口を見て最後の方にやけに黒いページが固まってたらそれがゴーストハント。今回も超黒々としてる。

 前回隣の笹倉一家の襲撃シーンで終わってたけど、今回は珍しく屋外からのスタート。といってもほんの3コマほどですぐに屋内のシーンになってしまうのだが。そして屋内は屋内でも笹倉邸の屋内である。ぼーさんたち一行が笹倉邸へ不法に侵入する。屋内は暗い。ゴミ袋がうず高く積み上げられ、すっかりゴミ屋敷みたいになってる。誰もいない。……誰もいないってことは!?
 事態のヤバさにぼーさんたちが気付く頃、依頼者の家では激しいバトルが始まっていた。

 いやー暗い。これもしアニメ化したらTV版『ToLOVEる』並に何やってんのか分からなくなりそう(『ToLOVEる』は真っ黒じゃなくて真っ白だけど)。しかし雰囲気は上々。心霊的な怖さじゃないけど、かなり怖い。暗闇の中のアクションの表現にもキレがある。何かに取り憑かれて「キエーッ!!」となるキャラはつのだ漫画で馴染み深いけど、笹倉一家には単に取り憑かれて操られてるのとは異なるヤバさが漂っている。想像以上に暴力的だった。今回は麻衣がいいところを見せる。責任感があるのはいいけど、バイトなんだからまじで無理すんなって感じ。あと回が進むごとにキャラの等身が伸びてるような気がする。「能力」を使いまくって電池切れのナルが襲われるところで次回に続く。全16ページ。

 ところで前回病欠してた著者は、すっかり快復したようでなによりです。


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ARIA (アリア) 2015年 11月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』休載

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』休載

 もう確認済みって人も多いと思うが、「ARIA (アリア) 2015年 11月号」の『悪夢の棲む家 ゴーストハント』は残念ながら休載。理由は著者の体調不良とのこと。最近どんどんページ数が少なくなってきてたのも、もしかするとあまり体調がよくなかったからかもしれない。次回第18話は11月28日発売の1月号に掲載予定。それから気になるコミックス第3巻の発売も2016年春以降に延期された。早くコミックスでまとめて読みたいです。


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ARIA (アリア) 2015年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第17回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第17回

 姿見が開いている。暗闇の奥に複数の人影が垣間見える。隣の笹倉一家がとうとう侵入したのだ。女性陣は二階に待避し、ナルと広田は一階で笹倉一家の動向を探っている。屋内の照明は未だ落ちたままである。そんな暗闇のなかで、窓に貼られた鏡を通して、不完全ながらナルはジーンとのコンタクトに成功する。ジーンにはPKを使用するナルのバックアップをする能力が備わっているのだ。廊下がきしむような音をたてる。身構えるナルと広田。扉をゆっくりと開いて、刃物を手にした笹倉一家が二人に襲いかかった。

 雑誌(←結構厚い)をペラペラっとめくって、黒いページがひとカタマリあったらそれが「ゴーストハント」。そのくらい黒い。前回からずっと明かりが消えたままだから黒い(暗い)のだけど、これが効果的に嫌な雰囲気を盛り上げている。今回はスラッシャーっぽいノリで、暗闇で出刃包丁振り回して襲ってくる中年のおっさん、という物理的な怖ろしさを堪能することができる。これナル一人ではヤバかったんじゃないかな。今更ながら広田がいてほんとよかった。危うく地獄絵図になるとこだった。

 ……そんな感じの第17話だが、とにかく短い。ここのところ毎回書いているが、今回はさらに短くなって、12ページ。隔月で12ページは厳しい。せめてあと6ページは欲しい。


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ARIA (アリア) 2015年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第16回

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第16回

 明かりの落ちた屋内。停電は隣の笹倉一家の仕業らしい。屋外に出ようにもドアが開かない。窓も封鎖されている。閉じこめられてしまったのだ。これも停電と同様、笹倉一家によるものだろう。闇に閉ざされた一軒家のなかで、笹倉一家の襲撃に備えてバリケードを作るSPRの面々。もしかするとすでに屋内に侵入しているかもしれない。麻衣たち女性陣は二階に避難させるとして、彼らに襲われた場合、戦力になるのはナルと広田だけ。相手は三人、凶器を帯びている可能性も高い。いざとなればPKを使う決意をするナルを止めようとする麻衣。そのときナルが懐中電灯で照らした窓に映っていた姿は……。

 物理的に盛り上がってきた、第16回。会話シーンが続いてきてたので、すごい急展開に感じる。これまで以上にキャラに動きが出たことと、ずーっと画面が暗いこともあって、家の手狭で息苦しいような雰囲気がよく出ている。緊張感も上々。
 しかーし、短い! 前回「扉を含めて17ページ。隔月で17ページってのは寂しい!」って書いたけど、今回はそれよりもさらに短い13ページ(扉込み)。内容はもの足りるけど、ページ数はほんともの足りない。

 それと今月号から『すべてがFになる』のコミカライズがはじまった。アニメ化に合わせた連載らしい。原作を適度に整理してマンガ化されているが、真賀田博士はもう少し見た目子供っぽい方が超常的でよかったと思う。好きなキャラなのでちょっと残念。初回は57ページ、ウエディングドレス姿の死体が出てくるところまで掲載。絵的に地味になりかねないこの作品の謎解きが、どんな感じで表現されるか楽しみだ。


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