いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈3〉』完

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈3〉』完 講談社 2016 KC×378 ARIA

 とうとう第3巻、最終巻が出ました。第1巻が出たのが2013年の6月だから、3年と数ヶ月かかっての完結だ。今回ばかりは本当の本当に完結なので、寂しさもハンパない。この先何かあるとすれば「悪夢の棲む家」のリライトくらいか。
 内容はずっと追ってきたので割愛するが、この作品は単に原作に忠実なだけではなく、原作のニュアンスを丁寧に汲み取り、それを出来うる限りの繊細さで表現した上質のコミカライズである。説明調のセリフが多く場面転換の少ない密室劇であることや、クライマックスの暗闇の中のアクションをどう見せるかなどなど、コミカライズに際して勝手に不安視していたことは全て杞憂に終わった。

 このまま褒め言葉を並べてもしょうがないので残念だった点を挙げると、それは「真砂子」の出番が少なかったこと……じゃなくて、これで本当に終わってしまうってことに尽きる。原作者は続編を構想していたはずなのに。ヒロインの一人称で書かれた旧シリーズの第一話が学校の怪談ネタだったように、この新しいシリーズでもごくオーソドックスな戸建住宅(幽霊屋敷)がモチーフとして選ばれ、レギュラー陣が顔見せのようにぞろぞろと登場する。新シリーズ開始にあたって投入された「広田」が一話限りのゲストキャラでなかったとすれば、今後の展開は旧シリーズよりもう少し大人向けの、ミステリー要素の強い(事件がらみの)ホラーになっていたかもしれない。
 シリーズが中断した理由については、原作者が書きたいものと読者が望むものの乖離が原因と言われている(原作者自身がそう語っている)が、原作者の言葉の端々には現在もなお本作への強い愛着が感じられる。今こそ続きを書いてくれればいいのになーと思う反面、ゴーストハント以降の原作者の怪奇系の著作を読むにつけ、中断当時、原作者が意図していた路線には実はゴーストハントという器は必要じゃなかったのかも、とも思う。

 さてコミカライズの話に戻すと、この第3巻には第11話からエピローグ(第22話)までの12話と、オマケの番外編が2話収録されている。単行本化に際して大きな描き足し、変更点はない。ただし既刊分と同様、背景と画面効果には細かく手が入れられ、白っぽかった空間を埋めている。
 今回まとめて読み返してみて、あらためて感じたのは第21話の「川南辺仁美」の帰宅シーンの素晴らしさだ。前に儚げで美しいって書いたけど、それまでのシーンから一転して明るい画面になっているにも関わらず、作品屈指の超おそろしいシーンでもある。彼女は長い間、この悪夢の中に閉じ込められていたのだ。もし広田アンチの人がいたとしても、このシーンの彼のリアクションを見れば、彼に対する評価を一変させるに違いない。決してハッピーな作品ではないけれど、ホーンテッドハウスものとしては最高水準の作品。


 第3巻収録分の各話の記事へのリンクはこちら↓
 ARIA (アリア) 2014年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第11回
 ARIA (アリア) 2014年 11月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第12回
 ARIA (アリア) 2015年 01月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第13回
 ARIA (アリア) 2015年 03月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第14回
 ARIA (アリア) 2015年 05月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第15回
 ARIA (アリア) 2015年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第16回
 ARIA (アリア) 2015年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第17回
 ARIA (アリア) 2016年 01月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第18回
 ARIA (アリア) 2016年 03月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第19回
 ARIA (アリア) 2016年 05月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第20回
 ARIA (アリア) 2016年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第21回
 ARIA (アリア) 2016年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』最終回

 ARIA (アリア) 2014年 05月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』番外編

 ※「番外編2」はARIA5周年記念描き下ろしショートコミック『甘々ARIA』に掲載。
 ※ 1〜3巻の帯についている応募券(第1巻特装版にもしっかり付いてました)を送ると、「全巻購入プレゼント」として「ポストカードコレクション」が貰えるそうです。全プレ。締め切りは2017年1月31日。



『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈3〉』
 講談社 2016 KC×378 ARIA
 漫画:いなだ詩穂
 原作:小野不由美

 ISBN-13:978-4-0638-0878-0
 ISBN-10:4-0638-0878-5


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いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈2〉』

 

 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈2〉』講談社 2014 プレミアムKC

 この7日に出たばかりの第2巻を買ってきた。表紙はナルと広田でちょっと地味。でも裏表紙の真砂子がかわいいのはよかった。

 毎回感想を書いてるけど、一話読み切りの要素が全然ない作品だから、やっぱりこうやってまとめて読むと読みやすい。とくに連載だとある回は真っ黒、ある回は真っ白って感じで、くっきり分かれすぎていて作品全体のトーンも掴みづらいし、あれ前回どんなだったっけ?なんて感じることも多かったのだけれど、まとめて読むと黒い回と白い回バランスがよく、自然につながるように構成されていることがよく分かる。

 で、その怖いシーン担当の黒い回は、あらためてみてもやっぱ素晴らしい。ナルのサイコメトリ、布団のなかで呟きはじめる依頼者の母親などなど、印象的な場面がいくつもある。なかでも冒頭の笹倉さん一家の気味の悪さは格別だ。なんら怪異が生じてないにも関わらず、異様に不穏な雰囲気を醸し出している。

 それからこの第2巻では満を持して真砂子が登場するので、そのことについてもちょっと書いておこうと思う。
 知っての通り本作は狭い(一般的な)住宅に入ったきり、登場人物が一歩も屋外に出ないという異例な展開を見せている。閉鎖空間における密室劇だ。前に各話の感想でも書いたけど、画面作りの困難さは半端ないと思う。そこで著者はカメラを上に向けたり下に向けたり、アングルを工夫して画面に変化をつけているのだが、真砂子に関しては微妙に見下ろすようなアングルが多用されている。また麻衣と対面するシーンが多いからか、後ろ姿で描かれることも多い。ちょっと後ろから彼女を見守っているかのような視点だ。動きの少ないキャラクターながら、デザイン的なかわいさや台詞だけに依ることなく、そういった特定のアングルが真砂子の華奢で繊細なイメージを形成しているように思う。まぁ本作の真砂子は落ち着いてるとは紙一重の、なんとなく茫洋としてる感じや、麻衣に対するお姉さんっぽい振舞いのおかげで、これまで以上に魅力的なんだけど。

 この第2巻には下記の通り第6話から第10話までが収録されている。雑誌掲載時からの大きな変更点はないが、背景と画面効果の追加が目立つ。頁数にしてだいたい全体の1/3くらいか。とくに直近第10話のジョンの除霊のシーンには大幅に手が入れられていて、白かった画面が黒くなっている。台詞は漢数字の「一」が「1」になってる程度の変更だけで、キャラの作画にも目立った変更はないが、第10話のp.145の中段のコマは新規にぼーさんと広田が追加されている。スケジュールの大変さを反映してか、後ろの方の話ほど手が入れられているように思う。

 あと本誌との連動企画「いなだ詩穂描き下ろし暑中見舞い」の応募券(コピー不可)が帯についてます。全プレだけど応募するには今月の『ARIA』についてる分も必要。次の巻が読めるのはまた来年かぁ。


 第2巻収録分の各話の記事へのリンクはこちら↓
 ARIA (アリア) 2013年 07月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第6回
 ARIA (アリア) 2013年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第7回
 ARIA (アリア) 2013年 11月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第8回
 ARIA (アリア) 2014年 01月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第9回
 ARIA (アリア) 2014年 03月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第10回


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いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈1〉特装版』

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 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈1〉特装版』講談社 2013 プレミアムKC

 早速買ってきました。待望の第1巻特装版。第1話から第5話までの5話と、広田が主人公の「あとがきまんが 俺の非日常的日常に関する考察」2ページが収録されている。カラー口絵は連載第1回めの時のもの。装丁は見ての通り、なかよしのコミックス版とも文庫版とも違って、小説のリライト版に近い雰囲気。

 各話の内容はこれまで隔月でぐだぐだと書いているので、興味のある方は下の方のリンクからご覧下さい。雑誌掲載時と比べて大きな変更点はなく、いくつかのコマへの背景の追加や、効果(?)の微妙な変更といった、細かいところに手が加えられている。
 細かいところと言えば、奥付の「初出」の項目に誤りがあるので、それを見て雑誌のバックナンバー買おうって人(いないか)は注意してください。正しくは「ARIA2012年9月号、11月号、2013年1月号、3月号、5月号」です。

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 特装版にはこんな感じのメモパッドが2冊付いてくる。ちょうどコミックスの半分のサイズ。全プレのハロウィンカードの応募券は、特装版にもちゃんと付いてる。

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 ついでに現在発売中の『ARIA (アリア) 2013年 07月号』の付録のシール。ナルと麻衣の小さいシールが1枚ずつ。下に置いてあるのは『悪夢の棲む家 ゴーストハント』の連載開始時の雑誌のチラシ。

 改めて読み返してみても、やっぱり麻衣の成長ぶりには驚かされる。シリーズを通して読むと、その成長が実に自然に描かれているのがよく分かる。いつの間に……って感じ。それからぼーさんの空気を読みつつ、絶妙に他人との距離を測る能力の高さという、漫画で描くには難しそうなところが、さらっと表現されているのも素晴らしい。あと翠さんかわいい。

 ほんとは通常版も欲しかったんだけど、今月は『水木しげる漫画大全集』を予約してしまったので、非常にヤバいのである。なので通常版の方は泣く泣く後日ということにした。まだ6月に入ったばかりなのに、きついなー。


 第1巻収録分の各話の記事へのリンクです↓
 ARIA (アリア) 2012年 09月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第1回
 ARIA (アリア) 2012年 11月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第2回
 ARIA (アリア) 2013年 01月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第3回
 ARIA (アリア) 2013年 03月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第4回
 ARIA (アリア) 2013年 05月号 いなだ詩穂著, 小野不由美原作『悪夢の棲む家 ゴーストハント』連載第5回


  いなだ詩穂『悪夢の棲む家 ゴーストハント〈1〉特装版』講談社 2013 プレミアムKC ARIA


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