Category小説・日本 1/13

大阪圭吉『幽霊妻』

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  大阪圭吉『幽霊妻』(『とむらい機関車』国書刊行会 1992 探偵クラブ 所収) 専門学校の校長、平田章次郎が殺害された。46歳だった。彼は厳格で口喧しい学者肌の男で、最近も判然としない理由から、一回りも年下の妻を離縁していた。そして元妻が身の潔白を訴える遺書を残して自殺したと聞いても、葬儀にさえ出ようとしなかったのである。そんな偏屈な平田の様子が目に見えておかしくなったのは、しぶしぶ出かけた元妻の墓参か...

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横溝正史『黒猫亭事件』

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  横溝正史『黒猫亭事件』(『本陣殺人事件』角川書店 1973 角川文庫 金田一耕助ファイル2 所収) 昭和22年3月、東京の郊外。巡回中の巡査が寺の一角を掘り返す若い僧「日兆」の姿を目撃する。巡査が確認すると、穴の中には女の腐乱死体があった。死体の顔面はもとの顔が判別できないほど損壊されていて、検視の結果他殺と判明した。同じ場所に黒猫の死体も埋められていたため、黒猫を飼っていたという寺に隣接する酒場「黒猫」と...

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横溝正史『富籤紳士』/『生首事件』/『幽霊嬢』

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 横溝正史『富籤紳士』 横溝正史『生首事件』 横溝正史『幽霊嬢(ミス・ゆうれい)』(『芙蓉屋敷の秘密』角川書店 1978 角川文庫 所収)『富籤紳士』 気付けば「並河三郎」一人を残して家はもぬけの殻になっていた。知人の「朝木妻吉」とその恋人とが同棲する家に居候しはじめて、三ヶ月ほど経った頃の出来事である。取り残された並河に助け舟を出したのは、隣接する「結婚媒介所高砂屋」のおかみさんだった。以前から高砂屋のお...

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幸田露伴『蘆声』

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  幸田露伴『蘆声』(『幻談・観画談 他三篇』岩波書店 1990 岩波文庫 所収) 三十年ほど前の出来事である。当時の自分は気ままな暮らしをしており、毎日のように中川べりへ出かけては釣り糸を垂らしていた。ちょうど秋の彼岸の少し前ごろのことだと覚えている。その日も午後から中川べりの西袋へ出向いた。と見ると、いつも自分の座るところに、十二、三歳の貧しい身なりの少年が釣り糸を垂れている。自分は場所を譲ってくれない...

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遠藤周作『蜘蛛』

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  遠藤周作『蜘蛛』(『怪奇小説集』講談社 1973 講談社文庫 所収) 霧雨の夜、主人公の私(著者)は叔父に請われて、四谷の料亭で催される怪談会に出向いた。私が料亭に到着した時には、すでに何人かの会員が順に持ちネタを披露しはじめていた。会員の多くは年配らしかった。皆素人なので当然語りは上手くない。ネタ自体どこが怖いのかサッパリである。ふと見ると、一人若い男がいる。青白い、端正な顔立ちの青年だ。そんな彼が不...

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米田三星『生きている皮膚』

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 米田三星『生きている皮膚』(鮎川哲也編『怪奇探偵小説集〈1〉』双葉社 1983 双葉ポケット文庫 あ02-1 所収) エロいゴシップで浮名を流した女流作家「川口淳子」(34)は癌に蝕まれていた。乳房の表皮にできた悪性の腫物が右の腋窩まで這い上がり、乳房の上方で小さいイチゴほどの形で表皮を破っていた。表皮癌である。彼女は顕微鏡のレンズ越しに自らの組織片を覗き見ると、病状を告げるいとまもなく錯乱した。「顔、顔だ! …… や...

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海野十三『生きている腸』

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 海野十三『生きている腸(はらわた)』(『十八時の音楽浴』早川書房 1976 ハヤカワ文庫 JA73 所収) 医学生「吹矢隆二」は、その日も朝から、腸(はらわた)のことばかり考えていた。彼はすこぶる風変わりな医学生で、助手でもないくせに、大学医科にもう7年も在学していた。長い在学期間、彼はひたすら腸のことを考えていたのだ。そして今夜、彼は刑務病院の外科長を強請り、おそらく囚人から切除したばかりの「生きている腸」の入...

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睦月影郎『生娘だらけ』

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  睦月影郎『生娘だらけ』祥伝社 2016 祥伝社文庫 十八になる家老の息子「修吾」は、三沢藩士の子女が通う女ばかりの藩校「桜桃舎」に下男として潜入していた。桜桃舎では十七になる「珠代姫」が身分を隠して学んでおり、その身辺を警護する密命を帯びていたのだ。そしてもう一つ、彼には特殊な務めがあった。 桜桃舎の生娘たちが出す下肥は、近在の豪農に高値で買い取られており、できた野菜などは献上品として用いられていた...

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