名和昆虫博物館について

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 前回の「天神神社(伊久良河宮跡)」(←前の記事へのリンクです)に続いて、以前から行きたいと思ってた「名和昆虫博物館」にも足を運んだ。「岐阜城」の建ってる「金華山」のふもとの「岐阜公園」にあるので、今度はほとんど迷わずに楽々到着することができた。

 この博物館のかっこいい建物は、京都の清水寺の近くにあるカフェ「五龍閣」などを設計した建築家武田五一(フランク・ロイド・ライトとも親交があったとか)によるもので、価値ある近代建築物として登録有形文化財に登録されている。建物の周囲をぐるっと見て回れるので、この手の建築物が好きな人にもおすすめ。館内も古き良き博物館って感じで実に居心地が良かった。住みたいくらい。

 下の「続きを読む」から館内の様子、おみやげなど。


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土屋健『デボン紀の生物』

 

 土屋健『デボン紀の生物』群馬県立自然史博物館監修 技術評論社 2014 生物ミステリーPRO

 その柑橘系っぽいネーミングのせいか、「デボン紀」のイメージは地味だ。「ジュラ紀」「白亜紀」の恐竜や、「カンブリア紀」のやたらキャラの立った生物群と比べると、代表的な生物があまりメジャーじゃないのも地味さに輪をかけている。しかし長い生物の歴史のなかで、超重要なのがこのデボン紀である。もちろんどの地質年代も理屈としては等しく重要なんだけど、デボン紀にはこれ以上ないほどキャッチーで特別なイベントがあった。それが生物の陸への進出である。

「魚の時代」とも呼ばれるデボン紀には、現生種である「ハイギョ」や「サメ」、「シーラカンス」の先祖が登場する。現在海や川で見られる多くの魚が属する硬骨魚類もこの時代に現れた。また今はいなくなってしまったけれど、板皮類の「ダンクレオステウス」(Dunkleosteus)という、本書の表紙に載ってるでっかくて怖い魚が海中を泳ぎまわっていたのもこの頃である。この本を(繰り返し)薦めてくれた知人はこのダンクレオステウスなどの甲冑魚の大ファンで、数年来状態のいい化石(←ものすごく高い)の購入を目論んでるらしい。彼が化石を入手した際にはぜひ写真を撮らせてもらって、できればここにアップしようと密かに楽しみにしてる。
 そんな彼にしてみれば、デボン紀を代表する生物と言えば躊躇なく甲冑魚! なんだろうけど、デボン紀には「アカントステガ」(Acanthostega)と「イクチオステガ」(Ichthyostega)という二大スターがいる。これらの生物については前にジェニファ・クラック著『手足を持った魚たち 脊椎動物の上陸戦略』(←前の記事へのリンクです)の感想でもちょこっと触れたけど、この機会にぜひそのスター性に富んだ勇姿をご覧いただきたい↓ ……地味とか、そういう感想は無しの方向で。

 ※「Tree of Life Web Project」の「アカントステガ」の項目↓
 http://tolweb.org/Acanthostega

 ※「Tree of Life Web Project」の「イクチオステガ」の項目↓
 http://tolweb.org/Ichthyostega

 本書には約6000万年にわたるデボン紀(今から約4億1900万年前〜)に生息していた生物が、化石の写真やイラストを用いてとても分かりやすく解説されている。漢字さえ大丈夫ならどの年代の読者でもOK。もしも漢字がダメでも、本書に限らずこのシリーズは写真がすごくいいのが特長で、眺めているだけでも楽しいと思う。白眉は数ページに及ぶ「三葉虫類」の項目。ほんの数センチほどの個体が鮮明に、見事に拡大されていて物欲を超刺激される。このトゲトゲの一本一本まで完全に掘り出された三葉虫、ヤフオクに出てることがあります。時には軽自動車なら買えそうな値段で。
 イラストの方は洋風のこってりした感じじゃなくて、スイーツでいうと和菓子の落雁みたいな雰囲気なので、これは好き嫌いが分かれそう。でも生々しさがないので、爬虫類苦手って人には向いてるかもしれない。しっかり読んでも見てるだけでも楽しいおすすめの本です。

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 というわけで、それらしい化石を出してきました。この休みは珍しくプラモデルを作ってたので、今日はPCの机で撮影。
 手前のはデボン紀の三葉虫の仲間(Metacanthina barrandei)で採集地はモロッコ。オレゴン州ポートランドのオーガニックな感じ? の店で買いました。端っこの小さいケースに入ってるのも三葉虫。これはルーブル美術館の近所の雑貨屋みたいなところで購入。データが付いてないので詳しいことは全く分からないけど、丸まっている形状が可愛らしい。色もいい。集めたいなあ、三葉虫。
 箱に入ってるハマグリみたいなのはデボン紀の「パラスピリファー」(Paraspirifer)。ずいぶん前に東急ハンズの化石コーナーで買ったもの。採集地はオハイオ州で値段はかなり安かったと思う。2000円前後だったかな。画像ではよく分からないけど、表面が金属っぽくキラキラしていて(黄鉄鉱化しているらしい)とても気に入ってます。

 このスピリファーの仲間は古生代の最も成功した腕足動物で、本書でもしっかり取り上げられている。両端が翼みたいにびゅっと伸びた、もっとかっこいい形のものもある(欲しい)。江戸時代中期に編纂された寺島良安の『和漢三才図会』では「石燕」という名で雑石類(巻之六十一)に分類されている。中国では古くから粉末状に砕いた石燕を漢方薬材として用いたり、安産のお守りとして「コヤスガイ」(←前の記事へのリンクです)みたいに妊婦に握らせたりしてたらしい。『竹取物語』に出てくる「燕の子安貝」の正体がこれなんじゃないかとも言われている。また九州の方では腕足類の現生種「シャミセンガイ」(Lingula)を味噌汁に入れたりして食べるのだとか。自分は食べたことがないけど、どんな味がするんだろう。

 ところでこの「生物ミステリーPRO」というシリーズ、最近ポスター付きの箱入りセット本が出てわりとまじで凹みました。途中からだけどコツコツ買ってただけにめっちゃ悔しい&これから買う人羨ましい。……次は同シリーズの『石炭紀・ペルム紀の生物』の感想書こうと思います。


 古生代の生物 4巻セット』 技術評論社 生物ミステリーPRO ヽ(`Д´)ノ


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末広恭雄『魚の風物誌』

 末広恭雄『魚の風物誌』雷鳥社 1971

 鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』のなかに「蜃気楼」という絵がある。波打ち際のでっかいハマグリの口から、ポワーンとフキダシのような気体が広がって、そのなかにおぼろげな風景が見える。どうやら山水を背景にした中国の建物のようだ。説明書きにはこうある。「史記の天官書にいはく、「海旁蜃気は楼台に象る」と云々。蜃とは大蛤なり。海上に気をふきて、楼閣城市のかたちをなす。これを蜃気楼と名づく。又海市とも云。」(※)
 ハマグリと蜃気楼の関係についてはじめて知ったのは、タイトルは忘れてしまったが澁澤龍彦のエッセイだったと思う。秦の始皇帝と徐福のことがメインで書かれていて、最後のあたりで少しだけハマグリが出てくる。当時は徐福のことに興味があったので、なんでハマグリ?? って感じだったのだけど、考えてみればめっちゃ不思議だ。アサリでもサザエでも、いや別に貝じゃなくてもよさそうなものなのに、なんでハマグリ??

 本書には魚類学者の立場から、なんでハマグリ?? に対する一つの答えが提示されている。最初にこれを読んだときには、多分これ当ってるんじゃないかと思った。
 貝が移動するシーンを思い浮かべるとき、イメージするのは決まって巻貝だ。水槽にエリンギの傘みたいな足? をぺたっとくっつけて、じりじりと移動していく。水族館や鮮魚店の店頭で見かける光景だ。ニンニク風味のアサリの酒蒸しが大好物な自分でも、この場合まず二枚貝はイメージしない。んじゃ二枚貝は自発的に移動しないかっていうと、そんなことは全然なくて、とくにハマグリはかなり風変わりな方法で移動するらしい↓

 ここからが本書の内容。
 何らかの事情でハマグリに移動する必要が生じたとする。するとハマグリは二枚の貝殻のあいだから、粘液を大量に放出しはじめる。粘液は帯状に長く伸びて海流に乗り、別の場所へとハマグリ本体を運ぶのだそうだ。海流を風のように帆(粘液の帯)に受けて走る、水中のヨットみたいな感じだ。この方法でハマグリは1分間に1メートル以上も移動するらしい。そんなハマグリの粘液放出を見た誰かが、蜃気楼と関連づけた(こじつけた)のではないか、というのが本書の著者の見解。まあ一匹二匹なら、なんだこれ? って感じる程度かもしれないが、現在よりもずっと沢山のハマグリが生息していた浜辺で、それらが一斉に透明な帯を吐き出したりしてた日には、何らかの怪異と関連づけて考えてしまうのも無理からぬことのように思われる。さぞかしすごい光景だろう。

 本書は青少年向けの真面目な科学エッセイ集だが、上記の「ハマグリ奇談」のほかにも、「竜蛇の話」「魚学的にみた童謡」「海の怪・魚の不思議」といった興味を引かれるタイトルが収録されている。実は本書の目玉は「魚と大地震」で、帯にも「大地震と魚の関係記録は著者が年月をかけて克明に集めたものでぜひ一読をお薦めしたい」なんて書いてあるのだけど、やっぱり怪奇っぽい話に惹かれてしまう。著者が実際に体験した、海中から飛び出した赤い火の玉の話(「海の怪・魚の不思議」)などはとてもおもしろかった。まるでUSOだ。その正体は今もって謎で、船上から著者と一緒にそれを目撃したある博士も首を傾げていたという。


 ※. 鳥山石燕『今昔百鬼拾遺 上之巻 雲 蜃気楼』(稲田篤信, 田中直日編, 田中衛監修『図画百鬼夜行』国書刊行会 1992 所収 p.188-189)


  鳥山石燕『画図百鬼夜行』国書刊行会 1992


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塚谷裕一『スキマの植物図鑑』

 

 塚谷裕一『カラー版 スキマの植物図鑑』中央公論社 2014 中公新書 2259

 亡くなった祖母の蔵書のなかに高浜虚子の『新歳時記』という本がある。子供のころその本が大好きだった。もちろん何の本なのかさえ知らなかったのだが、横長で箱入りという装丁のかっこよさと、小さい文字がぎっしり書いてある本格的な本って雰囲気に、めっちゃレトロでお宝な本に違いないと思い込んでいたのだった。その本の最後の方を開いてみると、種類別に分類された「季題」が居酒屋のお品書きみたいにずらーーっと並んでいる。ものすごい量だ。なかでも植物の季題は群を抜いて多い。それを見ただけで俳句のことはよく分からなくても、四季折々の草花と日本人との深い関わりを、量的に感じることができる。余談だが今日(日曜日)、朝から駐車場に停めておいた車のボンネットの上に、木蓮の花が何房もぼたぼたと落ちていて、丸めたティッシュでイタズラされたのかと思った。木蓮は咲いてるときは綺麗なんだけどな。

 この『スキマの植物』は、家の近所に散歩に出ると目に入る、アスファルトの隙間やコンクリートのひび割れや、石垣の石組みの間から、けなげに茎を伸ばして花を付けた「その辺の植物」を著者撮影の写真付きで紹介する本だ。正直植物は「まあまあ好き」って程度で、関連の本もあまり持ってないのだけれど、近所を普通に歩いてて捕獲した甲虫を地味に集めたりしてるので(←前の記事へのリンクです)、本書の趣向にはとても共感を覚えた。
 収録されてる植物は全部で110種。名前は知らないけど、そーいえば見たことあるかもって草花が多い。著者は植物学者なので時に専門的なネタも取り上げられているが、ややこしくなりそうな話も分かりやすく、さらっと書かれているのがよかった。興味深かったのが植物の和名の改名についての著者の見解で、「和名はそのイヌノフグリを引きずってやや品のない名前となっているが、それに対して一時提案された「星の瞳(ひとみ)」という別名は、あまりにもきれいごと過ぎたため、結局全く普及せずに終わった」(p.25)、これは春に咲く可愛らしい花「オオイヌノフグリ」の項目の一節。「めちんちん」「おぱんぱん」を思わせるアホなエピソードだが、安易な改名は名前の持つ歴史的な情報をリセットしかねない。また植物の改名とは同列に並べられないが、分譲目当てに地名が変えられたりすると、物理的な危険が生じる怖れさえ出てくる。上記に続けて著者は「名前はあくまで名前。変にいじらないほうがよいと思う。その点、最近、魚などでいわゆる差別用語中心に和名の変更が進められているのは、ややいきすぎの感がある」(p.25)と記している。同感。

 前述の通り植物全般には「まあまあ好き」という程度の興味しかないのだけれど、それでもちょくちょく見かける好きな花はある。それは夏頃に近所の本屋の駐車場傍に咲いてる、例えるならEx-Sガンダムの青色のような、とにかく綺麗な青色をした「ヤグルマギク」という花だ。ミス・マープルの「スリーピング・マーダー」の話にもちらっと名前が出てきた覚えがある。もちろん本書にもしっかり収録されているのだが、残念なことに本書に掲載されてる写真からは、この花の美しさはあまり伝わってこない。これは環境を写す必要があるため引き気味の絵になっているからで、寄って撮れる小さめの花はどれも綺麗に写っている。「スキマの植物」だから仕方のないところだと思うが、引き気味で花の様子がよく写ってない植物については、ヤグルマギクに限らず花のアップも載せて欲しかった。あと贅沢を言えば、食べられる植物かどうかの解説が載ってると、より実用性? が増したと思う。解説が無理なら食べられるマークでも。

 それとこれもごく身近な話なんだけど、この本を読んで解けた謎がひとつある。近所の家にちょうど身長くらいの高さの石垣があって、今の季節になると、積まれた不定形な石をぐるっと飾るように白っぽい小さな花が咲いている。前を通るたびに不思議な植え方してるなーとか思ってたんだけど、あれがまさに「スキマの植物」でスミレの仲間らしい。今年はまだ未確認だけどそろそろ咲いてるんじゃないかと思う。
 帯に「季節の植物図鑑として、通勤通学や散策のお供に」と書いてあった通り、とくにこの季節にはそんな使い方がぴったりな感じの本だった。おすすめ。


  高浜虚子『新歳時記』三省堂 1951


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岩満重孝『百魚歳時記 第三』

 岩満重孝『百魚歳時記 第三』 中央公論社 1982 中公文庫

 先日明日香村に出かけた際に、電車のなかで読むために持って行った二冊のうちの一冊がこの本。奈良に行くのに魚の本ってのがちょっとあれだけど、読みかけていたのをそのまま持って出たのだ。もう一冊はシャーリィ・ジャクソンの『たたり』だった。『たたり』の方はあまり進まなかったけど、こっちはすっかり読み終えることができた。どこを開いても読めるし、全項目に絵が付いているのが楽しい。

「事典風エッセイ」というこの本には、100種類以上の魚介類に関するエッセイが収録されている。基本一項目につき見開き2ベージ(800字なのだそうだ)で、上記の通りすべての項目に著者によるイラストが載っている。シリーズ三冊めということで、「アナハゼ」や「ミシマオコゼ」などのややマイナーな魚、タコやイカなどの軟体動物や貝についての項目が多い。生物学的な記述はそこそこで、歴史的、文学的なアプローチがメイン。

 貝貨として用いられた歴史を持つタカラガイ科の「黄色宝」(キイロダカラ)の項目を例にあげると、まず形状の解説から、分布、歴史、「この宝貝をお産の時にしっかり握っていると、やすやすと子供が産まれてくる」(p.17)などの俗信に触れ、それからジャン・コクトーの詩、締めくくりに上原一葉って人の「子安貝無医村にして珍重す」という句が引用されている。「子安貝」(コヤスガイ)はタカラガイの別名である。これだけの内容がさらっと書かれ、さらに食用の魚介類に関してはその調理法までが紹介されている。

 この「キイロダカラ」の項目には「それにしても、貝というものは何故あのように美しく、また人心をとらえるのであろうか」(p.17)とあって、同様の記述がほかの貝の項目にも出てくる。著者は魚はもちろん、本当に貝が好きなようで、その点で非常に共感することができた。文章も面白いし、気軽に読むにはもってこいの本だと思う。

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奥本大三郎, 岡田朝雄『楽しい昆虫採集』

 

 奥本大三郎, 岡田朝雄共著『楽しい昆虫採集』草思社 1991

 毎年梅雨が明けるころになると、「この夏はクワガタ採りに行こう」って思う。で、思うだけで実行しない。すっかり忘れてしまってるってこともあるんだけど、なにかのはずみで思い出しても、暑いからとか、忙しいからとか、遠いからとか適当な理由を付けてつい先送りしてしまう。そしてまた忘れる→思い出す→先送り→……と繰り返してるうちに夏が終わる。たまに街灯に甲虫が飛んできてるのを見かける。高確率で「アオドウガネ」というコガネムシの仲間だ。緑色が綺麗な可愛い虫なんだけど、さすがに「アオドウガネ」ばかりだと飽きる。クワガタ飛んで来てないかなーなんて期待してみても、未だに見つけたためしがない。たまに「アオドウガネ」以外の甲虫を見つけると採って帰る。例えば「ヤマトアオドウガネ」や「ヒメコガネ」など。やっぱりコガネムシの仲間ばかりだ。

 採ってきた甲虫は瓶の中にいれて酢酸エチルで殺す。この酢酸エチルは「緑色の甲虫や鱗粉をもつ甲虫を黄褐色や黒っぽい色に変色させることがある」(p.199)らしいのだけれど、今のところそうしたトラブルは生じてない。茶色のガラス瓶に入った薬品(500ml)が、全然減らないのが悲しい。数日間放置した後、ほど良い頃合いを見計らって展脚(足のポーズ決め)をする。展脚には10センチ角のコルクの板にトレーシングペーパーを貼付けたものと、待ち針を使っている。なにせ小さい甲虫ばかりなので、これで充分間に合っている。タトウを使った展脚は、何度かやってみたんだけどあまり上手くいかなかった。そしてまた数日間放置。その間に図鑑を見て標本の名前を調べたり、ラベルを作ったりする。これが結構楽しい。図鑑は30年近く前に刊行された、北陸館の『原色昆虫大圖鑑 第2巻 甲虫篇』に頼り切り。古さはともかく写真が分かり辛いので、そろそろ新しい本が欲しい。数日後、ラベルをつけた標本を小さい標本箱に入れて完成。こんな感じで「近所で見かける甲虫のコレクション(泣)」は計らずも充実してきている。来年こそクワガタを採りに行きたい。

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「近所で見かける甲虫のコレクション(泣)」の中から上記のものを。左から「ヤマトアオドウガネ」「アオドウガネ」「ヒメコガネ」、標本にしてからかなり経ってるのもあるけど、ピカピカのままで嬉しい。ラベルは住所が載ってるので、一応外してから写真を撮りました。そろそろ角の生えた黒いのも欲しい。

 というわけで、あまり本の感想とは関係ないことばかり書いてしまったが、この本には昆虫の採集から、上記のような標本の作成、保存まで、昆虫採集関連の様々なノウハウや情報が詰まっている。児童向けの本ではないので、ルビはほとんど振られてないけど、中学生くらいなら普通に読めると思う。写真は少なめ、その代わり説明には図が多く用いられている。どのページを開いても著者の経験に基づく行き届いた解説がされていて、採集標本はこれ一冊あればまず大丈夫って感じ。この本がなかったら、きっと標本を作ってなかったんじゃないかって気がする。ただ「昆虫の飼育」についてのことは書かれてないので注意が必要。
 巻末には「昆虫関係器具の店・標本商・専門書店」「昆虫の図鑑類と雑誌」「昆虫関係の学会と学会誌」「研究会・同好会と会報」「博物館・昆虫館一覧」のリストも付いている。昆虫の標本作りたいって人にはすごくおすすめの本。


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末広恭雄『魚と伝説』

 末広恭雄『魚と伝説』新潮社 1964

 この本は「淡水魚の伝説」「海魚の伝説」「水産動物の伝説」「怪異」という四つの章から構成されていて、38種類の魚介類や水生動物にまつわる伝説と考察が収録されている。なかには1種類について複数の伝説が取り上げられてるものもあるので、総話数としては70話以上。魚介類限定でこれだけの数の伝説や民話が集められているというのは、結構珍しいのではないだろうか。目当てはもちろん「怪異」、それと「水産動物の伝説」。

「はしがき」によると本書は「長年学んできた魚学の知識をつかって、魚の伝説や民話の神秘を科学的に追求してみたら、さぞや面白かろう」という魚類学者である著者の着想から編まれたものらしい。といっても伝説や民話にズバズバとメスを入れるって類いの本ではなく、著者自身がそうした伝説や民話を大いに楽しみ、科学的にはこうして解釈ができるよって感じの、大らかなスタイルのエッセイ集だ。

 目当ての「水産動物の伝説」に収録されているのは「イルカ」「クジラ」「タコ」「イカ」「ハマグリ」「アサリ」「真珠」。「カメ」は魚介類ではないからか未収録。多くの説話に登場するだけに惜しい。「クジラ」の項目では各地の「鯨の墓」や「鯨塚」「鯨碑」について言及されている。山口県長門市の「鯨の墓」はクジラが墓参りに来やすいようにと、海に向かって建てられているらしい。クジラは古くから色々な意味で特別視されていたようで、この「墓」や「塚」に類するものは全国各地に点在している。

「怪異」の項目は「化石」「死水」「人魚」、と少々寂しい。荒唐無稽なものが多いからかな。「化石」に収録されているのは、内部に水と魚が封じ込められているという有名な「魚石」の話。著者はこれを魚類の化石から発想された伝説ではないかと類推している。「人魚」については、ジュゴンなどの水生動物がその正体だろうとしながらも、ジュゴンの生息域から遥かに遠い土地にも人魚伝説が広く残っているというのは不思議とのこと。

 個人的には「参考文献」にある根岸鎮衛の『耳嚢』に出てくる超長い海の怪生物「いくじ」あたりの考察も読んでみたかった。『耳嚢』の記述は見てきたように生々しいし、あれは一体何なんだろう。それから色々な説話集で、かなり無茶な活躍をしてる「タコ」の記述が少ないのが残念だった。

 取り上げられている伝説や民話の大半は、江戸以前の説話集などから採られているが、なかには著者が直接聞き取りをしたものも収録されている。また実地調査に赴いている場合もある。基本的に魚売り場に並んでいるような、身近な魚介類が取り上げられていて、小難しい話はほとんどない。実はちょっとカゼをひいてしまって、読書に集中できてなかったんだけど、本書はどこを開いても楽しく読むことができた。

 いくつかの記事には関連する写真や図が、また巻末には「魚の伝説と民話分布図」が付いている。


 ※関連記事です↓根岸鎮衛『耳嚢』海と縁の下の変な生き物について
 http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-172.html


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ジェニファ・クラック『手足を持った魚たち 脊椎動物の上陸戦略』

 

 ジェニファ・A・クラック(Jennifer A. Clack)著, 池田比佐子訳, 松井孝典監修,『手足を持った魚たち 脊椎動物の上陸戦略("Gaining Ground : The Water to Land Adventure")』講談社 2000 講談社現代新書 シリーズ「生命の歴史」〈3〉

 古い話で恐縮だが、ハルキゲニアの復元図が上下逆さまだったってことを知ったとき、軽くショックを受けたことを覚えている。訂正された新たな復元図は、単に上下ひっくり返しただけのようにも見えるが、訂正前のハルキゲニアの、海底を爪先で立って歩くような、ちょっと品のある不思議な雰囲気は失われて、這ってる感の強い生物になってしまっていた。近頃ではさらに復元が進んで、派手めのナマコみたいになってる。ハルキゲニアって学名には「夢に出てきそうな」って感じの意味があるらしいが、これでは完全に名前負けだ。各段階の復元図や立体が沢山出てくるので、試しに画像検索してみて欲しい→「ハルキゲニア」。……やっぱり旧復元が一番かっこいい。

 最近めっきり毛深くなった恐竜を例にあげるまでもなく、古生物の復元は刻々と更新され続けている。もちろん学術的には最新のものが良いに決まってるのだけれど、想像で補うところが多い分、古い復元図の方が楽しい、かっこいい形をしてることが多い。「なんかおもしろそう」程度のノリでこの手の本を読みはじめているので、かっこいいとか絵が綺麗、もしくは絵が沢山載ってるとかは結構重要だったりするのだ。

 本書で取り扱われる「手足を持った魚たち」は、「アカントステガ」(※1)や「イクチオステガ」(※2)といった、四肢を発達させ水中の生活を離れたデボン紀の生物と、それに続く石炭紀の四肢動物である。少し前に『波打際のむろみさん』(※3)で、ちらっとネタにされていたけど、その重要性にも関わらず恐竜などに比べるとずっとマイナーで(人気がなくて)、石炭紀に登場した四肢動物のなかには多少怪物っぽいのがいるものの、かっこいいかどうかっていうと、あまりかっこよくない。イメージとしてはイモリやサンショウウオ、短い足の生えたナマズあたりを想像してもらえると、当たらずと雖も遠からずって感じ。しかしこれらの古生物は紛れもなく人類の祖先なのだ。

 そんなかっこよくないけど重要な古生物が、いかにして上陸するにいたったかについて、本書では化石として残された骨の変化を通してそのプロセスを説明している。「手足を持った魚たち」の陸上への進出は、全然スマートじゃなくて、グズグズと要領の悪いものだったようだ。それでもエラが舌に、ヒレが四肢に変化していく過程はとても興味深く、実感を持っては想像できないけれど、たった今キーボードを打ってるこの指が、大昔は魚のヒレの一部だったかと思うと不思議な気持ちになる。

 古生物学とか地質学とか聞くと、いかにもややこしそうで取っ付き難い気がするし、実際のところ本書にも片仮名の単語や専門用語が頻出する。そういった用語や「化石」「系統樹」「地質年代」などの基礎的な事項を、本書ではかなり噛み砕いて解説している。また一部に見辛いものがあるものの、図や表も沢山載っているし、巻末には簡単な「用語解説」が付いているから、それらを参考にじっくりと読み進めれば(結構時間かかりました)、今までこのジャンルには余り馴染みがなかった人でも充分に楽しめると思う。

 個人的に一番疑問に思っていたのは、水中に適応していた生物がなんでまたわざわざ陸に上がったのか、という点だった。それについても諸説が詳しく解説されているのだけれど、実はまだはっきりしたことが分かってないらしい。ずっと分からないままかもしれない。ただ上陸した時点で、陸上の環境が生物が棲息できる状態に整っていたことは確かで、序文には「生命とは、棲める環境が整っていれば必ずそのニューフロンティアに進出するという特性を持った存在なのだ」(p.3)とある。最近でも「地球近くで3個のスーパーアース発見」(※4)なんて無性に気になるニュースがあったけど、人類が宇宙に抱く情熱や好奇心もまた、この原始的な「生命の特性」の発露だったりするのかもしれない。


 ※1.「Tree of Life Web Project」の「アカントステガ」の項目↓本書の著者によるもので、感じのいい復元模型が載ってます。2006年6月13日更新。
 http://tolweb.org/Acanthostega

 ※2.「Tree of Life Web Project」の「イクチオステガ」の項目↓本書の著者によるもので、2006年2月9日更新。
 http://tolweb.org/Ichthyostega

 ※3. TVアニメ『波打際のむろみさん』、「すたちゃまにあ」内のサイト↓いえちーさん可愛いです。
 http://starchild.co.jp/special/muromisan/

 ※4. AFPBB News「地球近くで3個のスーパーアース発見、全てハビタブルゾーン内」(2013/06/26 12:24)↓
 http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2952545/10960876


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