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平山夢明『怖い本〈1〉』

 

 平山夢明『怖い本〈1〉』角川春樹事務所 2000 ハルキ・ホラー文庫

 本書には幽霊譚をはじめ、妖怪らしきものが出てくる話や、異界を垣間見た話、なんとも分類し難い奇妙な話など、全50話が収録されている。一話毎の完成度は高く、凄惨な描写が地雷のようにあちこちに埋められているから、うっかり気を抜いて読めない。そんななかでも特に印象に残ったのは、以下の5編。

「一話 ボールをつく子」サッカーやバスケットボールの要領で自分の頭をドリブルする子供の霊の話は、学校の怪談としてもまずまず知られた話だと思うけれど、この話が特異なのはドリブルに至る経緯に重きを置いていて、そこが読者にとって予期しない恐怖のピークになっているという点である。この話に限っては悲嘆のピークと言い換えられるかもしれない。登場人物のなかで最も嘆き、恐怖したのは誰だったのか。筋立てがトラディショナルな分、著者の特徴が顕著に表れている。

「七話 おすそわけ」沖縄の「ユタ」の家系で、他人に幽霊を見せることができるという、はた迷惑な能力を持った女性が登場する。もし幽霊見せてやるっていわれたらどうするだろう。この話に出てくる「それ」ならグロすぎて勘弁だけど、幽霊を選ばせてくれるならちょっと見てみたいかな。

「一四話 ヴァンパイア」この手の実話怪談としては超珍しいヴァンパイアもの。欧州には吸血鬼譚が山ほど残っているけれど、宗教との関わりが深い事象でもあることから、現代の日本でヴァンパイアはなかなか難しい。そんなわけでこの話の舞台も必然的に海外、アメリカのジョージア州である。著者の知人らしいサンシローという人物が、友人の招きで訪れた大きな館で不気味な家族と遭遇する。作中しわしわの老人を「悪魔のいけにえの」と形容しているが、登場人物のノリや妙な雰囲気は、デヴィッド・リンチの映画を彷彿とさせる。サンシローの飄々とした性格故に怖さはあまり感じないけど、窓に四人の影が見えるくだりにはぞくっとくる。またラストの老人の姿には、その土地柄から南北戦争の遺恨が垣間見えるように感じた。

「二一話 赤い卵」タイトルからは全く想像がつかないけれど、人形と呪いにまつわる怪談。いつのまにか家にあったアンティークドールを部屋に飾ったところ、奇怪な現象に見舞われるようになる。定番って感じのスジ運びで、最後に占い師が出てきて「こんなものを持ってちゃいかん!」なんていいながら印を結ぶシーンまである。この占い師や霊能者が最後に出てくるパターンの話は数多いけど、読むたびによしっ!って思う。

「二九話 小包」一人暮らしの体験者のもとに心当たりのない小包が届く。なかには髪の毛が入っている。次に届いた小包には髪と、剥がした顔の皮が入っている。小包はその後も頻繁に届き、テッシュや血のついた絆創膏、歯などが同梱されるようになる。たちの悪いストーカーの仕業のようで気味が悪いが、ラストでこれまでに届けられた身体のカケラの総量が明かされると、恐怖度が一気に跳ね上がる。

 本書はかつて勁文社から出てた『新「超」怖い話』の1~3巻から著者の執筆分を再編集したもの。勁文社の本はなかなか見かけないから、こんなふうに手軽に読める形で出版してくれるのはありがたい。
 それとこの手の表紙は本当に気味が悪い。なにかの拍子にたまに目が合うし、そのたびにさり気なく裏返しにしたりする。小洒落てないけど効果的で、昔ひばり書房の恐怖マンガが、部屋の片隅で嫌なオーラ発していたことを思い出す。


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