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菊地秀行『妖山鬼』

 菊地秀行『妖山鬼』徳間書店 1991 徳間文庫 き-3-4

 ホラームービーの偉い人、菊地秀行によるヒロイック伝奇ホラー。『山童子』と『剣鬼山』の二編が収録されている。ともに雑誌に発表された作品で、『山童子』は掲載時から大幅に加筆されているとのこと。
 新潟県の山奥の廃村に踏み入った強盗殺人犯の三人(男2女1)が、次々に山中の邪悪な霊の餌食になっていく。そんな山の邪気を払うために遣わされたのは、ぱっと見普通の「少年」だった。少年と魑魅魍魎との壮絶なバトルが始まる……というのが『山童子』。同様の「少年」が登場する『剣鬼山』では、自らの先祖にあたる孤高の刀鍛冶の足跡を求めて山中に分け入った青年が、山の魔に憑かれて暴走する。彼に取り憑いた邪霊は、刀鍛冶の打った妖刀に魔力につられて山に集まったらしい。彼を追って山に入った恋人の「安代」もまた強烈な霊の影響を受けるが、危うく難を逃れることができた。彼女を救ったのは超常の能力を持った一人の少年だった。

 どちらもグロと戦闘に全振りした思い切りのいい作品である。伝奇色は妖刀「餓竜剣」の出てくる『剣鬼山』の方が濃い。エロ描写にもかなりのページが割かれているが、やってることのエグさに反してエロさはほとんど感じられなかった。単に好みの問題って気もすごくするが、本作のようなキメキメの文体は、エロ描写との相性があまりよくないように思う。というか本作の場合は、濡れ場もバトルの一環って感じ。
 で、その戦闘シーンだけど、ノリノリのキレキレ。著者の作品の特徴を一つ挙げるなら、なんといってもそのスピード感だが、本作でも映像的で無性にかっこいい神速のバトルが何ページも続く。「少年」「坊ちゃん刈り」といったバトル中の呼称が煩雑で、読んでてごちゃごちゃしてくるところもあったけど、勢いに任せて一気に読んだ。「あとがき」によると人間以外のものを都会で活躍させるのはかなり大変で、『山童子』では舞台を山中に設定したことで、驚くほど楽に筆が進んだという。
 あとキャラクターについては、『剣鬼山』の「安代」がよかった。どっちの作品にも無理にキャラを立たせたような人物は出てこないが、安代はビビりながらもギリギリでど根性を発揮する蘭姉ちゃん(←コナンの)みたいなキャラクターで、少年との距離感が絶妙。ヒロインの見本のようなヒロインになっている。酷い描写が盛り沢山の作品だけど、なぜか読後感は良かった。

 本書の巻末には「あとがき」の後ろに「はじめにホラーがあった」で始まる「あとがきの逆襲 (我がSF・ホラー映画)」が収録されており、怪猫映画と吸血鬼映画について著者が熱く語っている。



『妖山鬼』
 徳間書店 1991 徳間文庫 き-3-4
 著者:菊地秀行
 解説:三橋暁

 収録作品
 『山童子』
 『剣鬼山』
 
 「あとがきの逆襲 (我がSF・ホラー映画)」

 ISBN-13:978-4-1958-9329-6
 ISBN-10:4-1958-9329-1


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