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睦月影郎『生娘だらけ』

 

 睦月影郎『生娘だらけ』祥伝社 2016 祥伝社文庫

 十八になる家老の息子「修吾」は、三沢藩士の子女が通う女ばかりの藩校「桜桃舎」に下男として潜入していた。桜桃舎では十七になる「珠代姫」が身分を隠して学んでおり、その身辺を警護する密命を帯びていたのだ。そしてもう一つ、彼には特殊な務めがあった。
 桜桃舎の生娘たちが出す下肥は、近在の豪農に高値で買い取られており、できた野菜などは献上品として用いられていた。確かにどっかのおっさん産というよりも、武家の生娘たちのものだと思えば気分がいい。修吾はそんな下肥の管理と百姓たちへの采配を一任されていたのである。
 修吾は何かと忙しなく立ち働きながら、女の園の暮らしをエンジョイしていたが、あるとき美人剣術指南役の「弥生」に素破(忍者)と疑われ、捕えられてしまう。そしてどエロい責めを受けるのだが……。

 タイトルに偽りなしの「生娘だらけ」な一冊である。著者の作品の多くには超能力者や妖怪やらがザクザク登場するが、本作は前に感想を書いた『姫の秘めごと』(←前の記事へのリンクです)同様、超常的な要素が全くないタイプの作品(くノ一は出てくる)。とはいえ当然、普通の時代ものではない。あくまでも背景扱いなのが少々残念ではあるが、下肥云々のくだりなど、なさそうでありそうな絶妙なさじ加減が心地いい。実際に江戸時代には下肥を出す階層によってその買取価格が違ってた、なんて話もある。大奥の下肥は価値が高かったとか。
 主な女性キャラは、剣術指南役で年上の「弥生」、年下の村娘「小梅」、娘たちの教育係で後家の「真弓」、そして「珠代姫」という面々。なかでも弥生と小梅はダブルヒロインって感じの活躍をみせる。それぞれのキャラ付けは上記の『姫の秘めごと』で書いたので重複を避けるが、毎度似通った「いつものキャラ」であっても、主人公との関係性が異なっているので意外に飽きがこない。微調整に工夫が凝らされている印象。

 で、本作のお姫さま「珠代姫」について。今回は上記の登場人物のほかに、姫の母親や下働きの少女たちの濃厚な濡れ場があるため、肝心の姫の出番が少なからず食われてしまっているように思う。お姫さま目当ての自分としては寂しい限りだが、嬉しいことに主人公との濡れ場のほかにも上質なエロシーンが用意されていた。男女の身体を学ぶ講義のなかで、「教材」となった珠代姫が皆の前で体をさらすのだ。同門の少女たちの、同性ならではの容赦ないリアクションが素晴らしい。ナイス羞恥プレイなので、この手のが好きな人には強くオススメできる。フェティッシュなエロてんこ盛りで、気楽に読める作品。



『生娘だらけ』
 祥伝社 2016 祥伝社文庫
 著者:睦月影郎

 ISBN-13:978-4-3963-4204-3
 ISBN-10:4-3963-4204-7


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睦月影郎『姫の秘めごと』

 

 睦月影郎『姫の秘めごと』実業乃日本社 2015 実業乃日本社文庫

 山中で孤独に暮らしていた農夫「十郎」のもとに、ある時、天からお姫さまが降ってきた。なんと彼女は藩主の姫君「小巻」だという。輿入れに向かう途中、つむじ風に巻き上げられ、崖から落ちてしまったのだ。すっかり小巻に懐かれた十郎は、江戸の上屋敷に奉公することになり、小巻の周辺の美女、美少女たちと情交を重ねていくのだが……。

 まず何と言ってもタイトルが素晴らしい。めっちゃ好奇心を刺激される。今まで誰も思いつかなかったのか、思いついても「ないわー」って感じでボツにされてきたのかは分からないが、「姫」と「秘めごと」、この取り合わせは「おっぱいアイス」クラスの魅惑的な発明だ。壮絶な出オチを懸念される人がいるかもしれないが、心配は無用。しっかりしっぽりと「姫の秘めごと」が描かれている。
 その内容はというと、著者の時代もののファンには「いつもの感じで、あ、今回は超常的な要素なしです」で、概ね伝わるかと思う。というのも、著者の時代もの(とくに近作)は、大まかなストーリーの進行や人物の配置などがごく似通っていて、一作ごとの微妙な差異を楽しむ作品って感じになっているのだ。
 ざっと説明すると、冴えない主人公が何かの拍子に上流階級の子女と親密になり、おっそろしく都合のいい立場を(計らずも)確保しつつ、知り合った女性と片っ端から性交渉を持つというもの。主人公の性欲を妨げるものがまるで存在しない、この上なくお気楽な世界観だ。お気楽極楽ヴィクトリアンポルノに通じるおおらかさがある。

 主人公は多くの場合、17〜20才くらいの青年、お武家だったり町人だったりするが、性格は控えめでやたら淫気が強い。腋と股間と足の指の股に執着する重篤な匂いフェチである。彼と関係を持つ女性陣は大まかに四つのパターンに分類される。
 まず年上の女武芸者。『剣客商売』のヒロイン「三冬」を彷彿とさせるキャラで、決まって「脛にはまばらな体毛もあって野趣溢れる」とか「突っ立ったオサネは大きめ」とか描写され、もれなくMである。本作の「胡蝶」は二十代半ばの家老の娘で、藩の剣術指南役を務めている。もっと年上のキャラも登場する。後家さんや夫婦生活に不満を抱いた武家の女性が多く、本作では姫の乳母兼お世話係となっているが、主人公の奉公先のおかみさんだったりすることもある。お屋敷で下働きをしている町娘は年下枠(ロリ枠ってほどではない)。ときにヒロインの中でも群を抜いた存在感を見せる。立場上動かしやすいキャラなのか、様々な特徴を付加されることも多い。忍者だったりとか。
 そしてお姫さま。著者の作品に登場するお姫さまは例外なく魅力的だ(巫女っぽいキャラも魅力的だが本作には登場しない)。今度のお姫さまはどんなかなーって興味だけでも、充分に新刊の購入動機となる。主人公と同年代に描かれることが多く、浮世離れした可憐なキャラである。純粋無垢過ぎて下々の者を下々の者として認識さえしてない。本作の「小巻」は性に対する好奇心が旺盛な反面、羞恥心が極端に薄く、主人公の眼の前で平然と用を足したあと(←全裸で)後始末までさせている。どことなくぽやーっとしてるところが可愛らしい。やっぱりハズレないな、お姫さま。

 著者の多くの作品には妖怪や付喪神や、超常的な能力を持ったキャラが登場するが、本作には残念ながら超常的な要素はない。そこのところがやや物足りない気もするが、最近の著者の時代ものとしてはスタンダードな作品で、多忙な毎日からの逃避にはもってこいな一冊。日頃のストレスを脳ミソのシワもろとも消し去ってくれる。微スカ注意。



『姫の秘めごと』
 実業乃日本社 2015 実業乃日本社文庫
 著者:睦月影郎

 ISBN-13:978-4-4085-5216-3
 ISBN-10:4-4085-5216-X


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