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G・K・チェスタートン『竜とカクレンボ』

 G・K・チェスタートン(G.K.Chesterton)著, 佐藤高子訳『竜とカクレンボ』(“The Dragon at Hide-and-Seek” チェスタートン・他著, 佐藤高子, 渡辺南都子訳『ビバ! ドラゴン ファンタジイ傑作集〈2〉』早川書房 1981 ハヤカワ文庫 FT28 所収 )

 本格推理小説の巨匠によるドラゴンスレイヤーもの。G・K・チェスタトンの本は創元推理文庫の『ブラウン神父の童心』一冊きりしか読んでないので、巨匠の巨匠たる所以を説明することはできないが、江戸川乱歩の『海外探偵小説作家と作品』には「深夜、純粋な気持ちになって、探偵小説史上最も優れた作家は誰かと考えて見ると、私にはポーとチェスタートンの姿が浮かんでくる。この二人の作品が、あらゆる作家と作品を超えて、最高のものと感じられるのである」(※)なんて書いてある。わざわざ「深夜」なのがめっちゃ乱歩らしい。門外漢からすると、ドイルやクリスティに比べて、ややマイナーに感じられるのだが、とにかくすごい人らしい。今やってるドラマの『ブラウン神父』、これ録画して毎週見てるんだけど、このドラマに対するBBCの力の入れっぷりも、巨匠の作品ならではって気がしてくる。

 そんな巨匠の作品に登場するドラゴンは、巨大さにおいてヤマタノオロチを彷彿とさせる威容を誇り、驚いたことに機械仕掛けのメカドラゴンである。具体的に描写はされないが、時代からしてスチームとか動力源にしてそうな感じ。著者は産業革命の真っ只中を生きた人だから、メカドラゴンの侵攻によって旧態依然とした王国が蹂躙されるあたりには、何らかの寓意があるのかもしれない。王族や高官が臣民を差し置いて、さっさと逃げ出してるし。
 で、この強大なドラゴンと対峙するのが、主人公の騎士「ラヴロック卿」である。劇中では無頼の騎士なんて呼ばれているが、とにかくはちゃめちゃな設定のキャラだった。猛烈に信心深い彼は、なぜかお尋ね者(罪状不明)として国をあげて追い回されてるのに、相当無茶して教会に通っている。ステンドグラスをブチ破ってあらわれたり、地下道を掘ったり。ところが逃げ隠れが得意なので、誰も彼を捕らえられない。その目を見張る神出鬼没ぶりは、あまねくこの地方に知れ渡っていた。
 ドラゴン、騎士とくれば当然お姫様だが、この作品ではお姫様もまた風変わりだ。彼女、「フィロメル姫」は浮世離れした人柄で、「いささかおつむが弱く、生活の知恵にまったく欠けていた」(p.68)と描写される。出番は少ないわりにやけにインパクトが強い。

 ストーリーは、ドラゴン出現 → 退治? → めでたしめでたし、というこれ以上ないくらいシンプルで、力の抜けた竜退治譚である。この作品そのもの(もしくは一部分)が何らかのアレゴリーだったりするのかどうか、著者の意図するところは分からないけど、この手のメルヘンにはあるまじきキャラ立ちが面白かった。ごく短いページ数にもかかわらずキャラバカ立ち。


 ※『江戸川乱歩推理文庫〈46〉海外探偵小説作家と作品 2』講談社 1989 p.33


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