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櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』

 

 櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』角川書店 2013 角川ホラー文庫 Hく5-2

 正月に読んだばかりなので忘れないうちに。第1巻(←前の記事へのリンクです)は半年ほど前に読んだけど、なんとなーく気分が乗らなくて、この第2巻「幽霊たちとチョコレート」は今回が初読。冬の初めからバレンタインまでの、今の季節にぴったりな五つの短編とプロローグ+エピローグで構成されている。どれもほど良い長さで読みやすかった。

 基本設定等は前に書いた通りなんだけど、以前読んでて違和感があった点(ゲスい台詞の夾雑物感など)は見られなくなって、1巻と比べてチューニングがよく整ってる感じ。「第一話 シネマジェニック」はモキュメンタリー・ホラーを製作していた映研から持ち込まれた心霊映像についての案件(後述)。「第二話 彼女の彼」はかつて行方不明になった一人の女の子と、彼女をめぐる二人の男子学生の切ない系の話で、サブタイが秀逸。「第三話 幽霊の多い居酒屋」は害のない居酒屋ゆうれいの話で、主人公たちのリア充生活と幽霊が一番ガッチリ嵌合してるのがこの話かもしれない。「第四話 鏡の中の」は呪いの鏡にまつわる古典的な器物の怪談。「第五話 人形花嫁」も第四話に続いて古典的な人形怪談かなーと思いきや、ひとひねりある。以上のようなラインナップ。短編小説! って感じのキレはないけど、各話ごとの怪異が工夫されてるのがよかった。主人公の恋愛もじりっと進行。

 書き忘れていたが、本作は「大学生の主人公(男子)の淡い恋心をライトなタッチで描いた、オカルト風味のジュブナイル」である。印象としては学生生活8割、ゴースト2割。ガチホラーを期待していたらがっかりしてしまいそうだけど、今回は軽めであまり不吉じゃないのが読みたかったので(お正月ってことで)丁度よかった。気になったのはその8割と2割の乖離で、例えばチョコレートと幽霊は全く関係がない。チョコはチョコ、幽霊は幽霊。こんなに書いといて伏線じゃなかったのかと思うことが度々だった。あと主人公たちの周囲にある様々なオブジェクトの羅列にページが割かれているが、それが積み重なってどうになかった……ってならないのも惜しい。
 そんな収録作の中で一番面白かったのは「第一話 シネマジェニック」で、冒頭のナンパから盗撮、案件の持ち込みから解決に至るまで、撮影に使用したカメラを軸に最後まで綺麗に話が繋がっている。「映像」も目新しさこそないけれど、丁寧に描写されていてよかった。途中、あの盗撮をこんな風に絡めてきたよ! とワクワクしたのだが、全然ピンチ感なくてワロタ。もったいない。けど、それメインにしたら『リング』になっちゃうか。

 今月は読書の時間だけはどうにか確保できてるものの、プラモ作る時間は全然ないし、今期のアニメもまだちっとも見れてない。なかでも楽しみにしてたのがこのすばの2期、今日こそ寝る前に見ます!



『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』
 角川書店 2013 角川ホラー文庫 Hく5-2
 著者:櫛木理宇

 ISBN-13:978-4-0410-0663-4
 ISBN-10:4-0410-0663-5


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櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』

 

 櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス』角川書店 2012 角川ホラー文庫

 好きなジャンルの気楽に読めそうな本ってことで、帯にでっかく「映画化決定」とある本書と、続刊の「幽霊たちとチョコレート」を購入。電車の中で読んだ。自分は読むのが遅い方だと思うけど、休みを挟んで2時間足らずで読み終えることができた(「幽霊~」は未読)。特に難解なところもなく、読みやすい本だった。

 この作品は大学生の主人公(男子)の淡い恋心をライトなタッチで描いた、オカルト風味のジュブナイルだ。メインの五つのエピソードの他、主人公の高校時代を描いたプロローグと、第五話の後日談にあたるエピローグが収録されている。舞台はとある大学の「オカルト研究会」(通称「オカ研」)。ベタに怪しげなサークルだが、周囲からはしっかり認知され、少なからず尊重されているらしい。見たくもないのに幽霊が見えてしまう主人公の「八神森司」は、想い人の「灘こよみ」を追ってこのサークルに入会した。今日もオカ研には学生の怪しげな相談が持ち込まれる。
 本書でオカ研の面々が関わるのは次の5件。「第一話 壁にいる顔」は壁に浮き出した女の顔に見えるシミの話。怯えた相談者が引っ越した先のアパートの壁にも現れた。「第二話 ホワイトノイズ」では相談者が繰り返し見る夢についての案件が持ち込まれる。夢に出てくる女との約束を破った相談者とその彼女の周囲に、霊障っぽい出来事が頻発しているらしい。「第三話 南向き3LDK幽霊付き」はサブタイ通りのいわく付き物件の話。「第四話 雑踏の背中」はドッペルゲンガー、「第五話 秋の夜長とウイジャ板」では引き篭もりの少女のために、みんなで降霊会を催している。ストーリーは死者が出るような激しいものではなく、日常のプチ怪異っぽい感じ。

 主要な登場人物はサークルのメンバー五人で、それに毎回相談者が数人加わる。キャラクターはテンプレだが、ラノベのキャラのようにカリカリにキャラが立っているわけでもなく、昔の少年少女小説の登場人物を思わせるチューニングでかなり薄口だ。そんなキャラとプチ怪異の取り合わせだから、モチーフこそなじみ深いモノが選ばれてはいるものの、ホラーっぽい怖さはほとんどない。というか、もともと幽霊etcにピントが合ってないし、合わせるつもりもなさそう。
 ところがこの作品には思わぬところにギョッとさせられるポイントがある。例えば→「感謝して欲しいくらいよ。我慢してくっさい短小の仮性包茎の筆おろししてやったのにさ。」(p.106) ……これは相談者の彼女が彼に向かって吐いたセリフの一節だ。他にも精子をぶちまけただの、放尿したら勃起が治まっただの、「これいるか??」って感じのゲスい描写が所々にブチ込まれている。夾雑物感ハンパないが、基本『まんがタイムきらら』あたりに載ってそうなノリなだけに、ギャップから来るインパクトもハンパない。これがもしも幽霊etcに向いてればなーって気もするが、思うに著者は「やっぱ生きてる人間が一番怖いわ」主義者なのではないだろうか。事件のキーとなる人物がことごくクズ、胸のすくようなクズだったりするのも、同様の理由からのように思われる。

 そんなわけで収録作の中では、諸々の要素が渾然となった第五話がわりと面白かった。稲川淳二の名言に「怪談は怖いばかりじゃない」ってのがあるけど、さすがに怖くないのばかりでは困る(個人的にはたとえ盛大にずっこけていても、怖がらせようとする姿勢が感じられるだけで結構いける)。……とはいえ「怖くない心霊、超常現象もの」 ≈「スピリチュアルもの」を期待する読者は大勢いるわけで、本作はそういった読者にうってつけの作品だと思う。続刊もどんどん出てるようだが、読者に続きを読ませるのは超常現象関連の面白さではなく、主人公の恋の行方への興味だろう。



『ホーンテッド・キャンパス』
 角川書店 2012 角川ホラー文庫 く5-1
 著者:櫛木理宇
 イラスト:ヤマウチシズ

 ISBN-13:978-4-0410-0538-5
 ISBN-10:4-0410-0538-8


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