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杉戸光史『怪奇!! ばけ猫の家』

 杉戸光史『怪奇!! ばけ猫の家』ひばり書房 1985 ヒット・コミックス 怪談シリーズ 102

 先週『貞子 vs 伽椰子』のトレーラーを見た。『リング』(1998)も『呪怨』(2000)も好きな作品だし、白石監督の作品もよく見てる方なので超期待している。初めて『呪怨』の1巻(ビデオのやつ)を見た時、最初の方でまさかの怪猫もの?? って喜んだ覚えがある。実際には幽霊屋敷に都市伝説ネタを絡めた作品だったのだけど、怪猫映画は当時も今もかなり好きなジャンルで、地味にソフトを集めてたりする。なのでネコミミ(可動式)に隈取り調のネコメイク&白装束というスタイルの化け猫には、それなりに親しみを感じてはいたのだが、さすがにそのまんまで漫画に出てくるとなると浮いてる感は否めない。この作品にはそんなまんまな化け猫が登場する。

 就寝中の女の子に突如襲い掛かるクラシックな化け猫。ただならぬ気配に駆け込んできた姉らしき女の子もあっさりと倒されてしまう。「この屋敷は今後誰にも渡さん」そう言い残して消える化け猫。
 場面は変わって、高級そうな自動車が田舎道を走っている。ハンドルを握るのは父親、母親と姉妹は楽しげに談笑している。この家族、よりにもよって↑この屋敷に引っ越そうとしているのだ。当然屋敷に向かう途中から不吉な事が起こる。ふいに横切った黒猫に急ブレーキをかけ、慌てて車外に出てみると、そこには生々しい肉片の残った頭蓋骨が二つ。「それにしても嫌なものを見たものだ」と沈みつつもスルーした家族だったが、これは化け猫の仕業である。
 屋敷に到着した後も、数々の怪異が家族を襲う。狙われるのは主に姉だ。今回の引越しには建前上妹の喘息の転地療養という理由があったのだが、実は頭のおかしくなった姉の頭の療養のためというのが本当のところで、実際に家族を振り回しているのも怪異そのものではなく、それに触発されてどんどんヤバくなる姉なのだった。妹はそれなりに新生活をエンジョイしていたのだが、化け猫の魔の手は妹へと迫る。

「化け猫」は「猫又」と混同される事が多く、ウィキペディアにも「区別は曖昧」なんて書かれているが、化け猫の顕著な特徴を挙げるなら、しっかり「妖怪」の猫又よりも「幽霊」寄りで、怪異として生じる過程に人の思念(怨念、遺恨)が介在するケースが多い事だろう。この作品においては「この世にうらみを残して死んだ死者の霊魂と、猫との合体によってうまれた妖怪である」と定義されている。
 というわけで、上記の通りまんまな化け猫にはどーしても慣れないが、伝統芸「ネコじゃらし」もあるし(ドクロを操ります)、ポーの『黒猫』の化け猫版の名作『怪猫呪いの壁』(1958)を彷彿とさせるシーンもある。これら従来の怪猫映画をしっかり踏まえている辺りには好感が持てる。きっと著者も怪猫映画に親しく接していたに違いない。そして終盤には従来の怪猫映画を超える驚くべき展開が用意されていて、この一点において本作は怪猫漫画史上に肉球付きの足跡を燦然と残す画期的な作品となっている。

 それが「化け猫 vs 化け猫」である。クライマックス、化け猫に襲われ絶体絶命の妹の前にヒーローっぽく現れたのは、頭のおかしい姉の生霊と化け猫に殺害された飼い猫のシロが合体した、ネグリジェ姿の化け猫だった。絵面的には衣装を着せられたネコ同士がにゃごにゃごやってるようにしか見えないが、まさに「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!!」を先取りする展開である。ピーク時には年間に複数の作品が公開されていた怪猫映画も、残念ながら映画がモノクロからカラーに変わる時期に人知れずフェードアウトしてしまった。もしもあと数年、怪猫映画が作り続けられていたなら、怪獣映画のvs路線の影響を受けるかなんかして、本作のように泥臭いキャットファイトを繰り広げる化け猫の勇姿を見る事ができたかもしれない。そんな風に考えると非常に惜しい。



『怪奇!! ばけ猫の家』
 ひばり書房 1985 ヒット・コミックス 怪談シリーズ 102
 著者:杉戸光史

 ISBN-13:978-4-8280-1102-8
 ISBN-10:4-8280-1102-1


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