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加門七海『祝山』

 

 加門七海『祝山』光文社 2007 光文社文庫

 原稿が遅々として進まない主人公のホラー小説家のもとに、旧友からメールが届いた。なんでも男女数人で群馬県のある心霊スポットを訪れて以来、気になる出来事が続いているのだとか。偶然にも心霊スポット突撃小説の執筆真っ最中だった主人公は、ネタになるかも! という軽い気持ちで旧友とその同僚たちと対面する。ところが実際に会ってみると、彼女たちには恐怖に直面している人独特の緊迫感がまるでない。元来心霊スポットでの肝試しには否定的だった主人公は、早々と後悔することになった。ノリがあまりにも軽すぎるのだ。しかし体験談を聞き、現場で撮影された写真を見せられているうちに、主人公はなんとも言い難い不吉な予感が湧き上がるのを感じた。この日以来、彼女は強力な災禍に巻き込まれていく。

 著者の実体験に基づいて書かれた実話怪談風の作品。ホラー作家が持ち込まれたネタに飛びついて酷い目に合う。『203号室』と続けて読んだけど、どっちも面白かった。
 実話怪談風というだけに、生じる怪異に派手さはない。めっちゃやばいことが起こってるらしいんだけど、具体的にすごい何かが出現するわけでもない。そもそも幽霊らしい幽霊も出てこない。それでも読み進めるうちに、細々と積み重なっていく不吉な出来事の背後に、人知の及ばない深い闇が口を開けている、そんな風に感じられてくる。不可知な毒ガスにじわじわ侵されてるような嫌な感じだ。登場人物の不遜で罰当たりな振る舞いにもいちいちイライラさせられる。
 劇中では旧友が精神的におかしくなり、男性の一人は交通事故であっさりと死亡してしまう。彼女たちはなぜそんな目に合わなければならなかったのか。その謎を巡って、ストーリーはミステリーっぽく展開する。文章は淡白で軽めだが、実話怪談風のノリによく似合っているように思う。作品のキモになる「山岳信仰」についての記述も、勢いとそのらしさを損なわないよう程々に抑えられている。
『ノロイ』(2005)や「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!・シリーズ」(2012〜)のようなフェイク・ドキュメンタリーのファンにはオススメの作品。カバーのデザインも作品内容をよく反映した抜群の雰囲気。



『祝山』
 光文社 2007 光文社文庫 か36-5
 著者:加門七海

 ISBN-13:978-4-3347-4305-5
 ISBN-10:4-3347-4305-6


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