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安田タツ夫『恐怖! 人魚の子守唄』

 安田タツ夫『恐怖! 人魚の子守唄』立風書房 1986 レモンコミックス 370 学園恐怖シリーズ

 町外れの岬の突端に佇む洋館、かつてそこには怪しい研究に傾倒した老人がたった一人で暮らしていたという。そんな洋館に一組のカップルが迷い込んだ。人気のない館内には様々な装置とともに、巨大な水槽が設置されている。怖る怖る水槽を覗き見るカップル。二人はそこに群れをなして浮遊する奇怪な生物を見た。すると男の挙動がにわかにおかしくなり、何者かに操られたかのように清々しく水槽に飛び込んでしまう。バリバリバシャバシャという嫌な擬音付きで貪り食われていく男。怪生物はヒトを食べるのだ。悲鳴を上げ、逃げ出そうとしていた女もまた呆然と立ち止まり、水槽を見つめるとこうつぶやいた。「あなたたちの言う通りにするわ。エサを運べばいいのね……」
 その頃、洋館のすぐ近くのビーチでは、主人公の「榊由紀子」とクラスメイトの面々が、中学生活最後の夏をエンジョイしているのだった。

 というのが少し長めのプロローグ。この後、中学生男女の充実したバカンスを数ページ挟んで、いよいよ最後の1ページまで続くノンストップの大殺戮劇が始まる。中学生たちを恐怖のどん底に叩き落す怪物は、遺伝子工学によって創造された水陸両棲の新しい「種」という設定。テレパシーでヒトと意思の疎通をし、思いのままに操る能力を持つ。ヒトに寄生して宿主を直接操ったりもする。そして女性に卵を産みつけて増殖するという。フェイスハガー(エイリアンに出てきた顔にくっ着くやつ)によく似た幼体がフェイスハガーみたいに顔に張り付いたり、ヒトの体を食い破って飛び出したりと、随所に『エイリアン』(1979)を意識した絵作りがされている。
 ストーリー自体は『ピラニア』(1978)→『SF/ボディ・スナッチャー』(1978)って感じの展開だ。うっかり解き放たれたモンスターの群れと、それに操られた人間に襲われて仲間が次々と殺されていく。モンスターのビジュアルは『モンスター・パニック』(1980)の半魚人と『悪魔の赤ちゃん』(1974)の赤ん坊を掛け合わせたみたいな雰囲気。

 ダイナミックプロ所属の著者だけに、バイオレンス、ゴア描写は容赦ないダイナミックさで、絵柄もめっちゃダイナミックプロ(H描写は控えめ)。『デビルマン』の1エピソードみたいだった。レモンコミックスのラインナップの中ではやや浮いてる感は否めないが、ジャンルムービー愛に溢れた良作。



『恐怖! 人魚の子守唄』
 立風書房 1986 レモンコミックス 370 学園恐怖シリーズ
 著者:安田タツ夫

 ISBN-13:978-4-6510-7117-6
 ISBN-10:4-6510-7117-1


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