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『本当にヤバイ ホラーストーリー 友だち地獄』

 

 永遠幸 地獄少女プロジェクト, 瀬田ハルヒ, 寿えびす, 秋本葉子, 瑞樹しずか著『本当にヤバイ ホラーストーリー 友だち地獄』講談社 2012 講談社コミックスなかよし 1360

 各社から少女向けのホラーアンソロジーが刊行されるなか、全巻共通の「~地獄」というおどろおどろしいタイトルが特徴的なのが、この「本当にヤバイ ホラーストーリー」シリーズ。通称「ヤバホラ」。「~」には「ヒミツ」「放課後」「ケータイ」など各巻のテーマとなる単語が入る。
 この第1巻は「友だち地獄」。収録作は全部で5編、うち1編は『地獄少女』のスピンオフっぽい作品で、実話怪談の体のエピソードも2編含まれている。主要な登場人物は全て小学生から高校生くらいの女子。どのエピソードでも彼女たちの心の綾を丁寧に描き、対人関係のちょっとした悩みや友人とのすれ違いを盛大に拡張して、教訓を含んだホラーストーリーに仕立てている。作画は当然ながら少女マンガタッチ全開でとても可愛らしい。

『地獄エレベーター』瑞樹しずか「愛知県 早坂和香さん(高1)のハガキをもとにしたお話です。」
 二人の秘密の遊び場は、今ではあまり使われなくなった旧エレベーター。学校の帰りにはエレベーターに乗って、友達の「好き度」を教え合う。ある日一人のクラスメート(女子)の評価をめぐって、二人は仲違いをしてしまう。なかなか仲直りするきっかけを掴めない主人公だったが……。
「親友」に抱いた嫉妬と疑念が悲劇を生む話。……って書くとめっちゃドロドロしてそうだけど、嫉妬といっても「〇〇ちゃんって、あたしよりあの子の方がいいんだー」程度の、ほんのちょっとしたヤキモチが発端になっている。しかもすべてが主人公の独りよがりだったりする。死亡エンドなので実話怪談ぽさはスポイルされてしまっているが、思春期の主人公の捉える世界の偏狭さが悲劇に直結しているあたり、正調少女向けホラーとしての完成度は高い。幽霊も出る。

『てるてる坊主』瀬田ハルヒ「東京都 菅統子さん(中1)のハガキをもとにしたお話です。」
 遠足の班分けで先生に「〇〇さんも班に入れてあげてくださ~い」って言われる小学生の女の子が主人公。高飛車でクラスメートをことごとく見下している反面、実は仲間に入りたくて仕方がないという、厄介なコミュ障キャラである。ポイントは「自分の思い通りの待遇で仲間に迎えられたい」ってところ。そんな主人公がクラスに溶け込めたきっかけは、彼女のてるてる坊主がとにかく「効く」からだった。これも死亡エンド。主人公がせっせとてるてる坊主を作りはじめたところでオチが読める。それにしても「好きなもの同士で〜」とかさっさと禁止すべきだなー。

『ゆーれいライフ』寿えびす
 イケメンのゆーれいとの淡い恋愛を経た霊感少女が社会復帰を果たす話。少年マンガなら確実にエロ方面に全振りって感じのネタを、頭ぽんぽんでとどめ、品良くまとめている。ちょっとお姉さんっぽいエピソード。

『櫻の少女たち』秋本葉子
 とある中学の校庭にある「無限桜」にはどんな願い事も叶えてくれるという伝説がある。ただし桜を敬わないと確実に死ぬ。そんなハイリスクな呪物に女子演劇部を絡めたストーリー。主役の座の奪い合いでもやるのかと思いきや、上記の『地獄エレベーター』と同様、女の子の友達同士の三角関係っぽい関係を軸に展開する。桜と女子中学の相性は抜群で、その上演劇部。全部盛りって感じの豪華さがある。収録作のなかでは教導的な要素が最も薄いエピソードである。

『地獄少女 さまよえる恋心』永遠幸 地獄少女プロジェクト
 主人公は親友が恋敵になった女子。例によって「閻魔あい」から藁人形を受け取ったが、「次の恋を頑張ろう」と思い直してそれを捨ててしまう。ところが親友の彼氏は幼なじみ。必然的に三人で行動を共にすることが多く、目の前で二人の恋の充実ぶりを見せつけられることになる。そこで主人公は怪しげな業者に、親友へのほんの少しの嫌がらせを依頼することにしたのだが……。まぁ、エスカレートするわなー。結局、藁人形の赤い糸をほどいたのと同じ結末を迎えるが、「親友」の鈍感さには主人公が少々気の毒になってしまう。他のエピソードにはない生身の「彼氏」の存在が、少女の嫉妬心を生々しく強化している。



『本当にヤバイ ホラーストーリー 友だち地獄』
 講談社 2012 講談社コミックスなかよし 1360
 著者:永遠幸 地獄少女プロジェクト/瀬田ハルヒ/寿えびす/秋本葉子/瑞樹しずか

 ISBN-13:978-4-0636-4360-2
 ISBN-10:4-0636-4360-3


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『妖怪奇聞 異譚』

 

『妖怪奇聞 異譚』少年画報社 2015 ドッキリコミック

 ちょっと前にコンビニで買ってきた怪奇マンガのアンソロジー。「ドッキリコミック」というレーベル名がいい味。52ページの作品『物見の文士 怪篇酒呑童子事件』のほか、8〜16ページの短編が22本収録されている。

 画風は色々だけど、絵のレベルは全体に高めの印象。内容も実話怪談風あり民話風ありって感じで、時代設定もそれに応じて様々だ。最初の方に実話怪談風で芸風の似通った作品 ── 登場するのが『怪談イズデッド』のヒキコさんみたいなハイテンション系の怪異で、画面いっぱいに「うがががががが」ってなったところでブチッとEND ── が並んでいるが、後半にいくほどバラエティに富んだ作品が多くなる。タイトルには「妖怪」とあるが、オリジナル妖怪や幽霊っぽいのが出てくる話も多く、あまりこだわりは感じられない。

 一通り読んでみて感じたのは、特に実話怪談風、都市伝説風の作品に関して、扉合わせて8ページ前後では読者の視点(人称)をコントロールするのが難しそうだなーってことだった。よく全員死亡オチの怪談話を本当にあった調で語られると「え? それじゃその話、一体誰から聞いたんだ?」ってなるけど、端緒とオチまでがめっちゃ近いので、あれに似た違和感がどうしても拭いきれない。変化をつけ難いから構成も似通ってしまうし、結局オチの怖い絵勝負みたいになっている。いっそ実話怪談ってことにしてしまえば、人称云々の難易度は下がりそうだけど……。

 収録作のなかで印象に残ったのは、にしだかなの『崖棲みの妖怪』。子供とごく小さな怪異の関係と、それを取り巻く環境が描かれた作品で、これは飛び抜けてよかった。怪異との距離感が素晴らしい。この人の作品、もっと読みたいと思って検索してみたら、ネコ漫画がずらっと出た。ネコ漫画、未知のジャンルだ。怪奇マンガは描いてないのかな。
 同様に子供と小さな怪異をモチーフにした池田さとみの『妖怪 一寸』(←怖い話じゃない)もよかったが、最終ページの柱コメントがハンパなくいらない。なんだこれ。8ページの作品のなかでは、高荷真弓の『妖怪 墨男』が古き良き怪奇マンガを彷彿とさせるタッチで印象に残った。

 という感じで思うところはあったけれど、やっぱこの手のアンソロジーは楽しい。コンビニでふらっと買ってしまっても、後悔のない一冊。以下収録作品↓



『妖怪 雨宿り』大矢夢
『妖怪 べとべとさん』佐原ナギ
『妖怪 墨男』高荷真弓
『妖怪 隙間女』ひるのつき子
『妖怪 茶釜女』紫卯野まゆ ※時代もの
『妖怪 雲外鏡』浅野りん
『妖怪 さみしんぼう』織田千代
『妖怪 竹とりの怪』tamacco(たまっこ)
『妖怪 人もどき』ヒワタリ
『妖怪 みがわり地蔵』柴秋尾 ※時代もの
『妖怪 変身鏡』灰花弘
『妖怪 座敷童』幡司みとう
『妖怪 濡れ女子』カナコロ
『物見の文士 怪篇酒呑童子事件』えす☆おう ※時代もの
『妖怪 恨み蛇』糺ノ森たゆた
『妖怪 もざいく』瞳ちご
『妖怪 メトロノーム 〜ふるえる音階〜』たらさわみち
『崖棲みの妖怪』にしだかな
『妖怪 がしゃどくろの骨』山崎零
『妖怪 一寸』池田さとみ
『− 九十九堂奇譚 − 妖怪 白無垢』慎結
『妖怪 伍伴』永尾まる ※時代もの
『妖怪 エンミスベリ』まわれぎみ




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