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高橋克彦『幽霊屋敷』

 

 高橋克彦『幽霊屋敷』(綾辻行人, 他著『見知らぬ私』角川書店 1994 角川ホラー文庫 所収)

 傑作幽霊屋敷小説。

 幽霊屋敷をモチーフにした作品の多くが、「なぜそんなところに行くはめになったのか」という点には、あまりウエイトを置いていない。大まかに「好奇心から」もしくは「たまたま住む(滞在する)ことになった」というのが主流で、なかには「解体作業」や「調査のため」といったものもあるけれど、いずれも「好奇心」「たまたま」の範疇を越えないように思う。ほかにも「超常的な力な引き寄せられて」(夢で見たとか)というわりとポピュラーな導入があって、これは屋敷と登場人物の因果関係を書く必要があるため、比較的長めの作品で用いられることが多い。

 この作品の主人公は、夫に捨てられて自殺した娘の霊を慰めるために、「出る」と評判の、娘夫婦のかつての住居(現在廃屋)に赴いた父親だ。この動機付けだけで、なんかコレよさそう! って予感がひしひしとする。「父親と娘の幽霊」なんて聞くと、お涙頂戴っぽい展開を連想してしまうが、本作に関してはそんなことは全然なくて、押さえ気味の描写ながら怪異もしっかり怖ろしい。娘の幽霊がドカンと出たりはしないけれど、物音や気配のほかにも、視覚的で気味の悪い現象が発生している。

 あと忘れてならないのが、娘夫婦のもと住居がごく普通の分譲住宅だったということだ。その辺でよく見かけるような、なんの曰くも無さげな新しめの住宅って設定なので、それが無惨に荒れ果てた様子を想像するのも容易い。もともと実話怪談の得意とする状況設定だし、最近では映画などで散々見慣れてしまったけれど、それでもまだ現代の怪談としては上々の雰囲気だと思う。
 物語は娘の自殺から、迷って出た理由までを完全に詳らかにするだけではなく、幽霊屋敷の行末を示唆して終わる。どっちかというと地味な作品だけど、隙のない、美しく整った名編で、幽霊屋敷ファンじゃない人にもすごくおすすめ。


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