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友成純一『幽霊屋敷』



 友成純一『幽霊屋敷』角川書店 1995 角川ホラー文庫

 日本の民話とクトゥルフ神話とエンパイア・ピクチャーズをごちゃ混ぜにして、幽霊屋敷でパッケージした感じのホラージュブナイル。非常に読みやすく、その手のファン向けのサービスシーンもたっぷりの、楽しい作品だった。怪獣も出てくる。

 舞台は熊本県の球磨川の上流に位置する山あいの集落……、ここでピンと来る人もいるかと思うが、熊本県の球磨川流域は同じく九州の筑後川や、関東の利根川、岩手県遠野地方と並ぶ全国有数の河童の産地(あと球磨焼酎でも有名)。八代市には「河童渡来之碑」が建立されてるし(※参考 九州河童の会編『九州河童紀行』←前の記事へのリンクです)、なにより近年においても河童の目撃情報があるのがすごい。上流は美しい渓流環境で、釣り好きの人にはたまらないスポットらしい。

 そんな山深い集落の外れに、「離れ屋敷」と呼ばれる洋館はひっそりと立っていた。かつてそこには河童が住み着いていた、などという噂がまことしやかに囁かれ、最近では幽霊が目撃されているという古い建物である。そのいわく付き物件にある家族が入居した直後から、村では妙な事件が頻発しはじめる。なかでも女性の行方不明事件は、のどかだった村に不吉な影を投げかけた。主人公の高校生たちは、知らず知らずのうちに事件の渦中に巻き込まれ、その驚愕の真相に迫っていく。「離れ屋敷」には彼らの想像を絶する秘密が隠されていたのだった。

 というのが大まかな流れだが、前半(全部の2/3くらい)と後半(1/3)とでは随分と雰囲気が違っている。前半は屋敷の妖しい噂と、好奇心から屋敷に吸い寄せられていく主人公たちの姦しい日常が、かなり丁寧に描写される。途中で挿入される凄惨な離れ屋敷の縁起物語も、ストーリー上あまり生かされてないのが残念だけど、読み応えのある好エピソードだった。
 主人公たちが屋敷に足を踏み入れる後半は、著者の趣味全開でなんでもありのゾンバイオなノリ。前半のいい雰囲気はどうなったんだよ!って気がしないでもないが、これはこれでおもしろい。ただどうしてもページ数が足りてない感じで、かなりドタバタしてる。最後はどさくさに紛れてガッパまで出てくる。カッパじゃなくてガッパ!

 それから主人公たちの学校に転校してきた屋敷の娘(美少女)も、香山滋の『月ぞ悪魔』(←前の記事へのリンクです)の「スーザ」か、『トータールリコール』(1990)のミュータント(こっちかな)って感じの非常に魅力的なキャラだった。しかし彼女もまたフェードアウト気味なのが実に惜しい。散々思わせぶりに振舞ってた分、大活躍して欲しかった。


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