鮎川哲也『積木の塔』

 鮎川哲也著, 松本清張責任監修『書き下ろし・新本格推理小説集〈1〉積木の塔』読売新聞社 1966

 角川文庫の横溝正史シリーズと同じく、亡き祖母の蔵書から発掘した一冊。時刻表が載ってるトラベルミステリーである。初読の作品だったが、火サス屈指の傑作ドラマ、大地康雄の「鬼貫警部シリーズ」でバッチリ見てるので、全然初読って気がしなかった。
 
 最初の事件は目黒の喫茶店で発生する。客の男が毒殺されたのである。被害者はレコードのセールスマン「和田塚」、加害者は彼と同席し、行方をくらませたサングラスの女だと思われた。遺留品は皆無だったが、目撃者の証言によって女が「稲村」という男の妻らしいことが判明した。ところがその稲村の素性が分からない。和田塚の満州時代の知人ではないかとのことだったが、すぐに捜査は行き詰まってしまう。終戦のどさくさで資料が散逸してしまっているのだ。そこで当日被害者と同席していた女の行方を捜すことになった。女が所持していたライターを頼りにローラー作戦が展開され、捜査に当たっていた「鬼貫警部」がその住居にたどり着いた時、彼女がすでに殺害されていたことが判明する。女の名は「鶴子」。博多発急行「海星」の中で殺害され、車外に遺棄されたらしい。彼女には複数の愛人がおり、その中の一人、福岡在住の「由比」という男に目星を付け、捜査員が九州に向かう。

 ここまでが全8章のうちの2章で、混迷していた捜査がようやく端緒についたところ。やがて捜査陣は容疑者の鉄壁のアリバイに足踏みを余儀なくされる。そのアリバイ崩しが本作のメインである。
 作品全体の印象は簡潔な文体も相まって、めっちゃソリッド。余計なモノを削ぎ落として、推理に必要なことだけ精錬して組み立てた感じの作品。鬼貫警部はなかなか出てこないけど、出てきたかと思うとバラバラな手掛かりを忍耐強く繋ぎ合わせて、複雑なアリバイを崩していく。そんな推理の過程を登場人物と一緒になってトレースするのが無性に気持ちいい作品だった。厄介ごとがどんどん片付いていく爽快感があるので、犯人から何から全部知ってても何の問題もなく、楽しく読むことができた。もっと早く読めばよかった。また時代背景はじめ随所に変更点はあるものの、ドラマの出来の良さも再認識できた。

 ところで全く話は変わるけど、最初に書いた通りこの本は祖母の蔵書だ。これまでにも何冊か祖母の本の感想を書いたが、いつも決まって、ばあちゃんどう思ってこれ読んだんだろうって思う。生前の祖母とはほとんど本の話をしたことがなかった。まじで「面白かった?」「面白かった」くらい。祖母は読書クラブに入ってたので、そこで使ってた感想ノートにはそこそこの量の感想が残っているのだけれど、やっぱりもっと色々話しておけばよかったと思う。



『書き下ろし・新本格推理小説集〈1〉積木の塔』
 読売新聞社 1966
 著者:鮎川哲也
 責任監修・解説:松本清張

 ASIN:B000JA6ROY


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