『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』

ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 第2巻以来の「芸能界編」、前回は寡聞にも知らない人ばかりで困ってしまったが、今回はおそろしく豪華!!
 まず霊感ミュージシャンとして名を馳せた「池田貴族」、この本が刊行された頃から怪談にどっぷりの「つまみ枝豆」、説明不要の「人間椅子」。錚々たるメンツだ。さらに池田貴族の体験談には「宜保愛子」が、つまみ枝豆の体験談には「稲川淳二」が、それぞれに霊的なアドバイスをするゲストとして登場。豪華!! 残念ながら女子の中には知ってる人がいなかったのだが、さっき検索してみたところ、こちらもなかなかの顔ぶれのようだ。とはいえ、体験者のメンツが豪華だからといって、アンソロジーとして面白怖いとは限らない。芸能人編だけに、ホテルなどの宿泊施設、レコーディングスタジオ、TV番組の収録中といった、似たようなシチュエーションが重複してしまっており、ここまでの既刊分と比較して、やや水準を下回る出来となっている。

 それぞれの体験談には複数の霊体験が含まれていて、人から聞いた話はごく少なく、実際に話者が体験した話がメインである。収録されたエピソードの中で特に面白かったのは、つまみ枝豆の『怪奇ホテル』。作画はやや物足りなかったが、ダントツで面白かった。閉まりかけるエレベーターのドアの隙間から真っ赤なマニキュアをした腕がチラッと見える、その手がホテルのドアの下の隙間から入り込み絨毯を掻きむしっているなど、おどろおどろしい幽霊を登場させるのではなく、パーツの嫌なチラ見せで恐怖シーンをうまく盛り上げている。他のエピソードと比較してモダンな印象を受けた。
 深夜怖い話をしてた人ってイメージの池田貴族の体験談は、ライブハウスの機材トラブルにまつわる話や高校生の頃の心霊体験。作画はこのジャンルの大御所山本まゆり。人間椅子の体験談は初期メンバーでドラムスの「上館徳芳」が語る、金縛り、レコーディングスタジオにまつわる怪談。目新しいところはないが、少女漫画タッチで美化されたねずみ男スタイルの鈴木研一が見所。「みなさんイカ天って知ってますよね。僕たちはそこからデビューした人間椅子です」という冒頭のモノローグが時代を感じさせる。



『AM4:00の怪現象』語り・池田貴族 画・山本まゆり ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.16 掲載 ※ライブハウスの怪談

『怪奇ホテル』語り・つまみ枝豆 画・林正之 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.13 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・TVの怪談

『人形は見ていた』語り・本田理沙 画・美濃みずほ ’92『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※人形の怪談・レコーディングスタジオの怪談・金縛り

『四人目の声』語り・人間椅子 画・丸傳次郎 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.14 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談

『階段の怪談』語り・島崎和歌子 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.12 掲載 ※コックリさん・ホテルの怪談

『夢のお告げ』語り・麻倉未稀 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.15 掲載 ※ライブハウスの怪談・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談



『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:山本まゆり 他

 ISBN-13:978-4-2579-8249-4
 ISBN-10:4-2579-8246-7


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『ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 20代後半?のOLのKさんからちょっと不思議な話を聞くことができた。こっちからは全然尋ねてもないのに、「昔、この辺に住んでたんですよねぇ」って感じで、勝手に話しはじめてくれたのだ。ありがたい。ここのところゲロ出そうなくらい忙しかったのだが、捨てる神あれば拾う神あり、ごくまれにいいこともある。

 水田が所々潰されて、新興住宅地になりつつある地域である。Kさんは学生の頃、この辺のアパートから電車と徒歩で片道30分かけて、隣の市の大学まで通っていたのだそうだ。アパートはKさんが入居する直前にリフォームされて、やけに小綺麗だったらしい。しかも家賃が格安。彼女の友人の同じような部屋が月4万円、彼女の部屋は1万8000円だったというから、半額以下だ。
 ただ、さすがに安いだけあって、アパートの作り自体は安っぽく、壁は薄いし、二階への外階段はよほど気をつけても足音が「バインバイン」と響く無骨な鉄骨製だった。で、ある朝、外が騒がしいので廊下に出てみたら、その階段が無くなっていた。正確には根元から4本の鉄骨がポッキリ折れて、綺麗に横倒しになっていたらしい。「あんなの倒れたら絶対気付きますよ。風が吹いてたわけでもないし、どうして倒れたのか……」
 二階の住人だったKさんと隣室のお姉さんは、その日、「小さい消防車」のハシゴを使ってようやく下に降りることができた。家賃からして何らかの曰くがあったのかもしれないが、このこと以外、怪しい出来事は全く無かったとのこと。

 というわけで、全然怖くないけど、念願のちょっと不思議な話でした。嬉しかったのは、Kさんがオカルト関連に全く興味がなさそうな人柄だったこと、「ただそれだけの話」とはいえオリジナリティが感じられたこと。実はこれより少し前に他の人から、もうちょい怪談らしい話を聞いたのだけど、地方の出来事ながら新聞沙汰になった投資詐欺ががっつり絡んでいて、検索してみたらまだまだ関連情報が出てきたので書くのやめてました。

 さて本題。今回この第20巻には珍しい趣向がある。カバーのソデには→「多少霊感のある人ならば、かならず経験があると言っていい“金縛り”と“予知夢” —この2大テーマの恐ろしい体験を収録!!」とある。
「金縛り」と「予知夢」、業界的にはかなり地味なこれらのネタが選ばれたのは、体験を共有する読者が多そうとか、そんな感じの理由からだと思われるが、テーマを絞っただだけあってまとまりのある一冊になっている。ただ当たりかというとそうでもなくて、ややハズレ寄りというのが正直なところ。やっぱ地味だった。
 収録されたエピソードの中で、ガチで「予知夢」って感じの話は「第十話」。身の回りの小さな予知だけじゃなくて、湾岸戦争の予知までしてる。メインの現象の前兆として生じることの多い「金縛り」は、それだけで面白くするには難しいテーマなので、それに付随して生じる現象がメインになっている。印象的だったのは予知夢・金縛りのそれぞれの体験者が、いやよいやよと言いながら、かなりはっきりと優越感を持っているところで、これまでもそんな風に感じることはあったが、この巻ではそれがより顕著な感じ。上記のカバーのリードを信じるなら、金縛りにも予知夢にも無縁な自分には、霊感は全く備わっていないようだ。



『明け方の報せ 他』画・佐和田知生 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号、『ハロウィン』8月号 掲載
 「第一話 明け方の報せ」投稿者・東京都 茂手木裕美さん ※虫の知らせ
 「第二話 台風の夜」投稿者・埼玉県 P.N北野椿さん ※学校(塾)の怪談・金縛り

『第三話 母が見ている』投稿者・大阪府 匿名希望さん 画・ひとみ翔 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※不思議な夢
 
『妖かしの桜 他』画・七色虹子 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号、12月号 掲載
 「第四話 妖かしの桜」投稿者・宮城県 高橋知美さん ※不思議な夢
 「第五話 闇からの呪文」投稿者・大阪府 高松朋美さん ※コックリさん・金縛り

『第六話 霊現象は睡魔と共に…』投稿者・栃木県 星樹綾さん(P.N) 画・南地裕子 ’92『ハロウィン』5月号 掲載 ※心霊写真・不思議な夢

『第七話 幽霊テレビ』投稿者・岡山県 匿名希望さん 画・植松麻里 ’92『ハロウィン』4月号 掲載 ※金縛り

『夢の中の絵 他』画・谷ゆたか ’92『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号 掲載
 「第八話 夢の中の絵」投稿者・愛知県 Miss味子さん(P.N) ※予知夢
 「第九話 死霊の足音」投稿者・宮城県 佐藤浩子さん(P.N) ※虫の知らせ

『夢なら夢でも… 他』画・黒田祐乎 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号、11月号 掲載
 「第十話 夢なら夢でも…」投稿者・長崎県 中村和子 ※予知夢
 「第十一話 伝染性怪現象」投稿者・千葉県 常夏娘さん ※金縛り・伝染する怪談



『ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:ひとみ翔 他

 ISBN-13:978-4-2579-8246-3
 ISBN-10:4-2579-8246-2


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『ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 さすがにこのあたりまで読んでくると、目次の段階で当たりハズレの見当がつくようになってくる。カバーのソデには「ほんとに、ほんとに、ほんと〜に体験しちゃった恐怖の体験、不思議な体験をマンガ化するシリーズ。ゾクゾクパワー、ますますアップ。」なんて書いてあったけど、見たところまずまずかなーって感じで、実際にそうだった。
 この巻の特徴は建物や土地にまつわる怪異譚が目立つこと(「第一話、第三話、第五話」など)。また下のリストの通り長めの作品も多い。前巻に続いて学校の怪談系のネタは皆無である。この時期、姉妹シリーズの『ほんとにあった怖い話 作家編』がスタートしていることからも、マンネリ回避のための試行がなされていたのかもしれない。

 ソデにあったゾクゾクパワーを存分に感じられるのは、収録作の中では「第五話 悪霊住宅」が唯一だった。もうタイトルからして並々ならぬ気合が感じられるが、トビラ含めて24ページの中に比較的地味な「手の怪」、ラップ音から、布団の上に乗ってくる系の複数の幽霊、逆柱(?)っぽい怪異まで「うちで起きたら嫌なこと」が詰め込まれている。作画も上々で、ページのめくりの効果もしっかり計算されている。ささやななえこ(ささやななえ)の名作『空ほ石の…』を彷彿とさせる怖いシーンもある。もともと絵の上手い人らしいが、マジで読者をビビらせてやる!! って気合がひしひしと感じられた。

 その他に印象的だったのは「第一話 ゆうれい居酒屋」と「第八話 最後の買物」。「第一話」はタイトルの通り霊的な現象が頻発する居酒屋の話。怪異自体はごくスタンダードなものだが、投稿者が一人だけ徹底して何も感じないのが面白かった。「第八話」は信楽焼のでっかいタヌキを買いに幽霊が骨董市に来る話で、なんとなく幸田露伴っぽいネタ。絵柄は淡白でホラー漫画としてはどーかと思うが、ほっこり系の話によくはまっていた。ここに出てくる骨董市に多分行ったことがある。



『第一話 ゆうれい居酒屋』投稿者・大阪府 高松明美さん 画・七色虹子 ’92『ほんとにあった怖い話』5月号 掲載 ※職場の怪談

『第二話 会いたくて淋しくて』投稿者・東京都 山崎悦子さん 画・黒田祐乎 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※家族の心霊体験

『第三話 異界の客達』投稿者・栃木県 松本裕子さん 画・山口夏実 ’92『ほんとにあった怖い話』5月号 掲載 ※霊感少女・職場の怪談

『第四話 のびる腕』投稿者・宮崎県 匿名希望さん 画・渡辺杜都 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※霊感少女(主婦)

『第五話 悪霊住宅』投稿者・大阪府 匿名希望さん 画・浅野まいこ ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※幽霊屋敷

『真夜中の泣き声 他』画・三浦尚子 ’92『ハロウィン』3月号 掲載
 「第六話 真夜中の泣き声」投稿者・北海道 須佐邦子さん ※水子
 「第七話 下校時の遭遇」投稿者・千葉県 匿名希望さん ※路上の怪

『最後の買物 他』画・天ヶ江ルチカ ’92『ほんとにあった怖い話』5月号、7月号、’92『ハロウィン』1月号 掲載
 「第八話 最後の買物」投稿者・東京都 柴田貴代さん ※骨董の怪談
 「第九話 午後の訪問者」投稿者・奈良県 中尾有香子さん ※ドッペルゲンガー
 「第十話 最後の別れ」投稿者・山形県 五十嵐理恵さん(P.N) ※家族の心霊体験



『ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:七色虹子 他

 ISBN-13:978-4-2579-8233-3
 ISBN-10:4-2579-8233-0


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竹河聖『おさわがせ幽霊(ゴースト)』

 竹河聖『おさわがせ幽霊(ゴースト)』朝日ソノラマ 1989 ソノラマ文庫〈497〉

 今年は31日と1日しか休めなかったので、のんびりプラモでも作りながら買ったきりになってる映画や、ハードディスクを圧迫してるアニメでも消化するか……なんて目論見はもろくも崩れ去り、結局隙間の時間に読書する通常営業になってしまった。ただ一応正月ってことで重めのはやめといて、楽しめの本を何冊か出してきて読んだ。竹河聖『おさわがせ幽霊(ゴースト)』、櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート』、キャロリン・キーン『幽霊屋敷の謎』、ウェン・スペンサー『ようこそ女たちの王国へ』など。『〜女たちの王国へ』は今2/3くらいまで読んだところ。なかなか面白い。『おさわがせ幽霊』は多分数十年(十数年じゃなくて)ぶりの再読で、ほとんど初読ってレベルまで内容を忘れていた。

 主人公は高校生でつのだリスペクトなネーミングの「一太郎」、それから一太郎のいとこの美人姉妹「華藻」「玉緒」。華藻は一太郎と同学年で、玉緒は一つ年下、二人合わせて玉藻前姉妹である。この三人が旅先や近所や学校で、やたらに幽霊に遭遇する。収録されているのは「第一話 首なし美女でございます」「第二話 幽霊屋敷でございます」「第三話 学園七不思議でございます」「第四話 背後霊でございます」の四話。それぞれ独立した短編だが、相互にゆるーく繋がっている。
 全体は幽霊の描写と三人のリアクションと、あと睦月影郎の本に出てきそうな「甘い少女の匂いが鼻腔をいっぱいにし、柔らかい胸が身体に密着してくる」って感じの微妙なフェチ描写で占められていて、それで全253ページ。セリフが多いし描写もなんとなくト書き調なので、アニメのシナリオでも読んでる気分になる。昨今のライトノベル以上にライトな作品である。書き忘れてたけど、コメディ作品だ。

 で、超久々に読み返してどうだったかというと、これが結構楽しめた。なんといっても主人公の美人姉妹がいい。普段人前では深窓の令嬢のように振舞っているのだが、一太郎の前でだけ本性をあらわして彼を虐待する。まあ虐待といってもプロレス技をかける、言葉で攻める、という非常に羨ましい虐待なのだが。この二人のお転婆ぶりのさじ加減が絶妙。話が進むにつれて微妙ながらじわっとデレてくる。
 肝心の幽霊は出るべき場所に出るべくして出たって感じのが出る。幽霊出る→主人公遁走の繰り返しだが、幽霊自体は各話ごとに工夫が凝らされていて(グロ描写はない)、そこだけ見ればコメディ作品とは思えないほど充実している。タイトルは最後の最後でしっくりとくるが、それまで「おさわがせ」なのはどう見ても主人公側。



『おさわがせ幽霊(ゴースト)』
 朝日ソノラマ 1989 ソノラマ文庫〈497〉
 著者:竹河聖
 イラスト:橘田幸雄

 ISBN-13:978-4-2577-6497-7
 ISBN-10:4-2577-6497-X


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『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 学校の怪談やコックリさんなどのポピュラーなネタはすっかり影をひそめ、家と職場にまつわる体験談が中心の巻。投稿者の年齢は前巻に続いてやや高めで、海外からの投稿もある。全体の印象はライトな絵柄、ソフトな怪異表現といった感じ。各話ごとに様々な怪異が生じてはいるが、総じてゆるめの話で占められた一冊だ。ところがそんな中に一編、とんでもないエピソードが含まれていた。泥の中のダイヤモンド、いや、ポップコーンの中の臼歯って感じの傑作エピソード、それが「第七話 子供達の家」である。作画はこれまでにも良作をものにしてきた時任竹是。

「第七話 子供達の家」のストーリーはいたってシンプルだ。千葉県A市の新興住宅地に越してきた当時10歳の投稿者が、新居で複数の子供の霊や動物霊を目撃し様々な怪異に見舞われるというもの。後にその土地にまつわる曰くが判明する。絵に描いたような幽霊屋敷ものである。作画担当者はそんなシンプルでオーソドックスなストーリーを、極上の作画で極上の作品に仕上げている。トビラ含めて28ページ、一切の隙も妥協も感じられない。トビラからしてめっちゃ怖い。ぐにぐに変化する視点や歪んだ構図が不安感を煽り、ただそこにいるだけのゴーストの姿も素晴らしくイビツに、不気味に表現されている。なかでも3ページにわたって描かれる投稿者とゴーストのファーストコンタクトは秀逸で、まるで自分がそこにいたかのように感じさせられる。絵柄は暗く、じっとりとしていて、古い木造家屋の匂いが漂ってきそうな雰囲気である。上手く例えられないが、つげ義春とひよどり祥子をいい具合にミックスした感じか。
 それにしてもこんな傑作が顧みられることなく埋もれてしまうのは実に惜しい。昨今の雑誌にポンと掲載されても、遜色がないどころか、並の作品なら全く太刀打ちのできないレベルの一編である。幽霊屋敷もののファンにとっては、この一編のためだけにこの本を買ったとしても、きっと後悔することはないだろうと思う。それくらいの作品。

 あとこの第18巻の巻末には、姉妹シリーズ『ほんとにあった怖い話 作家編』の広告が掲載されている。「〜作家編」もなかなか面白いシリーズなのでいずれ感想を書こうと思う。



『さまよえる亡霊 他』画・茶々丸 ’92『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号、5月号 掲載
 「第一話 さまよえる亡霊」投稿者・東京都 匿名希望さん ※幽霊屋敷・職場の怪談
 「第二話 ふりむいても誰もいない」投稿者・宮城県 高橋知美さん ※霊感少女・幽霊屋敷
 「第三話 死神が通り過ぎた夜」投稿者・愛知県 名古屋っ娘さん ※家族の心霊体験集

『第四話 からみつく腕』投稿者・大阪府 しゆさん 画・丸傳次郎 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※金縛り・幽霊屋敷

『見知らぬ人影 他』 画・塚田さとみ ’92『ほんとにあった怖い話』5月号、’91『ハロウィン』12月号 掲載
 「第五話 見知らぬ人影」投稿者・静岡県 石川一美さん ※心霊写真・職場の怪談
 「第六話 視線外の世界」投稿者・神奈川県 NAKOさん ※霊感少女

『第七話 子供達の家』投稿者・茨城県 匿名希望さん 画・時任竹是 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※幽霊屋敷・神隠し

『サウスエンド奇禍談 他』画・黒田祐乎 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第八話 もうひとりの兄」投稿者・イギリス(ロンドン在住) A.Sさん ※幽霊屋敷
 「第九話 棲みついた影たち」投稿者・兵庫県 A.Nさん S.Yさん ※幽霊屋敷・職場の怪談

「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。



『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:茶々丸 他

 ISBN-13:978-4-2579-8224-1
 ISBN-10:4-2579-8224-1


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『ほんとにあった怖い話〈17〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈17〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 全国の霊感少女、元霊感少女が続々登場して、「山ほどある」心霊体験を競うように披露している。全体の傾向は前巻によく似ているが、作画、構成はかなり向上している。構成に関しては凝れば凝るほど「ほんとにあった」感が失われていくから、痛し痒しといったところ。気になったのは霊感少女たちの霊体験がよく似通っていることで、中には相談事を持ち込まれるようなセミプロもいるのだが、霊体験自体に目立ったところはない。そんな長めのエピソードが大半を占めているため、またかよーと思うことも度々だった。投稿者の多くは主婦やOLで、対象年齢がやや上がってる感じ。

 そんな中で印象的だったのは『窓にうつる少女 他』 の2編、「第四話 窓にうつる少女」と「第五話 蛇の目がさの女」だった。「窓に〜」は旅先のホテルで、「蛇の目がさ〜」は近所の路上で、ただなにかを見ただけのシンプルな話だが(「窓に〜」には後日談がある)、それだけに「なにか」の面白さが重要になってくる。
「窓に~」で窓ガラスに映ったのは、日本人形のようなおかっぱの少女の姿だった。チラッとじゃなくしばらく映ったままだったので、不思議に思った投稿者があれこれと試しているのが面白い。「蛇の目がさ~」の投稿者はその辺の路上で蛇の目傘をさした和装の幽霊を見た。これ以上ないくらいシンプルなエピソードだが、和風情緒たっぷりで、幽霊の表現も押し付けがましくなくて実にいい雰囲気だった。作画の水準も高い。やっぱ短めの話の方がキレがあるな。



『恐怖は雨音と共に…… 他』画・黒田祐乎 ’91『ほんとにあった怖い話』11月号、’92年1月号 掲載
 「第一話 恐怖は雨音と共に……」投稿者・埼玉県 本田奈々央さん(仮名) ※霊感少女・心霊スポット・コックリさん
 「第二話 最後にひと目…」投稿者・神奈川県 仲川慈子さん ※霊感少女

『第三話 摩訶不思議母さん』投稿者・東京都 江川加奈さん(仮名) 画・天ヶ江ルチカ ’92『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※霊感少女(霊能者)

『窓にうつる少女 他』 画・佐和田知生 ’91『ほんとにあった怖い話』11月号、’91『ハロウィン』8月号 掲載
 「第四話 窓にうつる少女」投稿者・神奈川県 匿名希望さん ※旅先の怪談
 「第五話 蛇の目がさの女」投稿者・広島県 沖家美津江さん ※路上の怪

『第六話 海辺の幻視(ヴィジョン)』投稿者・神奈川県 P.N あめちゃん(文中では亜希子にしました) 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※虫の知らせ

『もうひとりの兄 他』画・渡辺杜都 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号、’91『ハロウィン』11月号 掲載
 「第七話 もうひとりの兄」投稿者・匿名希望さん ※ドッペルゲンガー・金縛り
 「第八話 何かが部屋にやってくる」投稿者・福井県 熊谷愛子さん ※金縛り

『第九話 幻の部屋』投稿者・東京都 茂手木裕美さん 画・森須久依 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※旅先の怪談

『闇の中の視線 他』画・植松麻里 ’91『ハロウィン』8月号 掲載
 「第十話 闇の中の視線」投稿者・東京都 山本のぞ美さん ※心霊スポット
 「第十一話 封印された仏壇」投稿者・福岡県 匿名希望さん

『第十二話 辻に棲む霊』投稿者・未詳(普通の女子高生) 画・松世眞由美 ’91『ハロウィン』9月号 掲載 ※路上の怪

「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。



『ほんとにあった怖い話〈17〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:渡辺杜都 他

 ISBN-13:978-4-2579-8217-3
 ISBN-10:4-2579-8217-9


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