『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』

ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 第2巻以来の「芸能界編」、前回は寡聞にも知らない人ばかりで困ってしまったが、今回はおそろしく豪華!!
 まず霊感ミュージシャンとして名を馳せた「池田貴族」、この本が刊行された頃から怪談にどっぷりの「つまみ枝豆」、説明不要の「人間椅子」。錚々たるメンツだ。さらに池田貴族の体験談には「宜保愛子」が、つまみ枝豆の体験談には「稲川淳二」が、それぞれに霊的なアドバイスをするゲストとして登場。豪華!! 残念ながら女子の中には知ってる人がいなかったのだが、さっき検索してみたところ、こちらもなかなかの顔ぶれのようだ。とはいえ、体験者のメンツが豪華だからといって、アンソロジーとして面白怖いとは限らない。芸能人編だけに、ホテルなどの宿泊施設、レコーディングスタジオ、TV番組の収録中といった、似たようなシチュエーションが重複してしまっており、ここまでの既刊分と比較して、やや水準を下回る出来となっている。

 それぞれの体験談には複数の霊体験が含まれていて、人から聞いた話はごく少なく、実際に話者が体験した話がメインである。収録されたエピソードの中で特に面白かったのは、つまみ枝豆の『怪奇ホテル』。作画はやや物足りなかったが、ダントツで面白かった。閉まりかけるエレベーターのドアの隙間から真っ赤なマニキュアをした腕がチラッと見える、その手がホテルのドアの下の隙間から入り込み絨毯を掻きむしっているなど、おどろおどろしい幽霊を登場させるのではなく、パーツの嫌なチラ見せで恐怖シーンをうまく盛り上げている。他のエピソードと比較してモダンな印象を受けた。
 深夜怖い話をしてた人ってイメージの池田貴族の体験談は、ライブハウスの機材トラブルにまつわる話や高校生の頃の心霊体験。作画はこのジャンルの大御所山本まゆり。人間椅子の体験談は初期メンバーでドラムスの「上館徳芳」が語る、金縛り、レコーディングスタジオにまつわる怪談。目新しいところはないが、少女漫画タッチで美化されたねずみ男スタイルの鈴木研一が見所。「みなさんイカ天って知ってますよね。僕たちはそこからデビューした人間椅子です」という冒頭のモノローグが時代を感じさせる。



『AM4:00の怪現象』語り・池田貴族 画・山本まゆり ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.16 掲載 ※ライブハウスの怪談

『怪奇ホテル』語り・つまみ枝豆 画・林正之 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.13 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・TVの怪談

『人形は見ていた』語り・本田理沙 画・美濃みずほ ’92『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※人形の怪談・レコーディングスタジオの怪談・金縛り

『四人目の声』語り・人間椅子 画・丸傳次郎 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.14 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談

『階段の怪談』語り・島崎和歌子 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.12 掲載 ※コックリさん・ホテルの怪談

『夢のお告げ』語り・麻倉未稀 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.15 掲載 ※ライブハウスの怪談・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談



『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:山本まゆり 他

 ISBN-13:978-4-2579-8249-4
 ISBN-10:4-2579-8246-7


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つのだじろう『うしろの百太郎〈3〉』

 つのだじろう『うしろの百太郎〈3〉』講談社 1983 KCスペシャル 33

 我が子を失った親の慟哭を強烈に描いた「第七章 磯幽霊怪異編」「第八章 一太郎が死んだ!」を収録。その他写真ネタ等。びびる一太郎の正面に大きく黄緑色の手のひらを配したカバーイラストは、シリーズ随一のかっこよさ。このイラストのTシャツが欲しい。

「第七章 磯幽霊怪異編」
「夏です!! まっさおな空に白い入道雲がムクムクとわきあがり、白い波しぶきがみんなを海へさそいます! 」(p.6) ……そんなモノローグから一転、いきなり水死者が出て、全然レジャー気分じゃなくなる海パン姿の「一太郎」親子。がっかりムードの一太郎だったが、旅館の娘に誘われて何の気なしに磯へと出向いていく。ところが磯まで来てみると、真っ暗な夜の海は思いのほか怖ろしかった。気付けば少女の姿がどこにも見当たらない。波にさらわれてしまったのか。その時、波間から現れた何者かの霊が一太郎を海中に引きずり込んだ。同じ頃、一太郎の父親は戻らない息子を必死に探し続けていた。その日は旅館の娘の命日だったという。翌日、家族の祈りも虚しく、一太郎は水死体となって浜辺に打ち上げられたのだった。
 真っ暗な海と葬式のシーンが印象的な不吉さ満点の一編。このエピソードでは一太郎がまじで死亡してしまうのだが、それよりも行方不明になった息子の姿を必死で追い求め、その死を嘆き悲しむ両親(特に父親)の激しい描写が圧感。この「磯幽霊怪異編」と続編の「一太郎が死んだ!」を合わせて一冊のちょうど半分ほどの長さになるのだが、悲嘆にくれる両親の様子が延々と描かれていて、正直なところめっちゃ重い。もともと感情的な一太郎父が、号泣するわ、落ち込むわ、ピラミッドパワーに頼るわで、暑苦しいったらない。それでも著者の気合がビンビン伝わってくるから流し読みもままならない。改めて著者の力量のもの凄さを実感することができた。嘆きの一太郎父の他にも、黒々とうねる海と激しい波しぶき、水ぶくれした霊の不気味な表現等々、実に見所が多い。劇中「舟幽霊」(柄杓を欲しがるやつ)や、三重県津市の集団水難事件にまつわる怪談が、ストーリーから乖離することなく自然に挿入されているのも良かった。傑作エピソード。

「第八章 一太郎が死んだ!」
 棺の中でぽっかり覚醒する一太郎。早すぎた埋葬にパニックに陥る一太郎だったが、棺桶には懐中電灯や呼び出しのベルなど、息子が万が一蘇った時のための準備が万端整えられていた。さすが一太郎父。結局一太郎は行方不明から丸々五日目にして復活する。
 2ページ目にしてサブタイは無かったことに。主人公だけにそりゃそうだよなーと思う反面、棺桶の暗闇と花の中で身動きひとつできない状況がしばらく続くのでまだまだ安心できない。一太郎が復活した後は、一太郎の臨死体験と父によるその解説で占められていて、通常営業に戻った印象。前話で海に引き込まれて以降の怖ろしい出来事の数々が詳らかにされる。今回の一太郎の死は、「魂の尾」が肉体と繋がったままの幽体離脱の状態だったという。魂の尾のいかにも頼りなげな描写が怖い。当然切れたらアウト。最終回っぽいエピソードだが、ここで軽く触れられた「死後の世界」については、後により詳細に描かれることになる。

「第九章 恐怖の心霊写真」
 上級生の女子から持ち込まれた心霊写真の調査のために、撮影現場の山を訪れた一太郎親子と同行者数名。とりあえず周辺を撮影してみると、早速それらしい写真が撮れた。そこにあるはずのないテントが写っていたのだ。テントの霊なんてあるのか?? そんな疑問を抱きつつキャンプを続ける一太郎たちだったが、深夜の森の中で写真の通りのテントを目撃する。と思ったらテント大爆発。その直後、同行していた青年「望月さん」の様子が豹変する。望月さんはダイナマイトを手に一太郎を拉致、そのまま逃走してしまう。山中に潜伏して爆弾を作ろうとしていた過激派の霊に憑依されたのだ。
 読者の予想の遥か斜め上をいく驚愕の展開。エピソードの大半は国会議事堂の爆破を目論む望月さん(憑依済み)の活動で、プラス一太郎父の心霊解説少々って感じ。女子中学生が何となく持ち込んだ心霊写真のために、とんでもない事が起きてしまっている。最大の見せ場は、電車の中で向かい合って座る一太郎と望月さんの頭上で、百太郎と「バレスチン民族解放戦線の闘士の霊」(過激派の霊)が睨み合っているところ。もの凄い絵面だ。著者の異能ぶりを堪能できる一編。

「第十章 念写の実証」
 ある日飼い犬の「ゼロ」が、一太郎と父親の前で「だれの目の前でも証明できる物理現象」、「念写」を実演してみせる。たちまちテンションMAXまで登りつめた父親は、清田君や福来博士、様々な海外の実例を引き合いに出しつつ、念写の実在について延々と語るのだった。
「この章における登場人物の発言は、すべて漫画家つのだじろうが、その心霊科学、超常現象研究の生命をかけてまったくの真実であり、責任を持つことをちかいます!」(p.272)という、やる気満々の著者の言葉から始まる短めのエピソード。図、写真、インタビュー記事から構成されていて、実に「心霊恐怖レポート」らしい。著者はエピソードごとに虚実のバランスを自在に変化させて作品にメリハリをつける。一太郎父のキレっぷりが半端ない。

「第十一章 ポルターガイスト」
 薪割りの斧が突然空中に飛び上がり、被害者の頭部を叩き割った。すぐさま警察に通報されるが、事件の一部始終を家族や使用人が目撃しており、捜査たちまち行き詰まった。被害者の妻によると、この事件はポルターガイストの仕業であり、専門家を呼ぶ必要があるという。そこで召喚されたのが一太郎と父親。心霊現象を全く信じようとしない捜査陣を尻目に調査を開始すると、たちまち激しいポルターガイストが生じたのだった。
 次巻に収録される話のプロローグ的なごく短いエピソードだが、黒く重々しい画面からは著者の気合が伝わってくる。霊との交信実験が始まったところで続く! ! 詳細は次巻の感想で。



『うしろの百太郎〈3〉』
 講談社 1983 KCスペシャル 33
 著者:つのだじろう

 ISBN-13:978-4-0610-1033-8
 ISBN-10:4-0610-1033-6


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『ほんとにあった怖い話〈14〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈14〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1991 ハロウィン少女コミック館

 このアンソロジーは1989年の第1巻から1991年の第14巻まで、たった3年というハイペースで刊行されている(全30巻です)。各巻ごとの印象はわりとバラバラなんだけど、たまに既視感が強く感じられる巻がある。初期の頃のように学校の怪談がメインで短い話が多いからか、この第14巻もそんな一冊だった。

 久々に第1巻から通して読んでみると、多少なりとも流行の盛衰が感じられるのが面白かった。その筆頭はもちろん「コックリさん」である。1冊まるまるコックリさん回があるかと思えば、しばらく音沙汰がなくて、やがて忘れた頃に名前を変えて復活する。実に根強い。
 コックリさんの異名は数多く「エンゼルさま」「守護霊さま」「キューピットさま」など様々だか、この第14巻では「星の王子さま」なんて呼ばれている。上記の3例はスピリチュアルな存在ってことで何となく分かるけど、「星の王子さま」は一体どんな理由で採用されたのだろう。「花の王子さま」なんてファンシーな異名もあるし、単におどろおどろしさから遠ざかれば何でも良かったのか。それとも「アマツキツネ」からの転化……なんてことはまず無いか。
 その「星の王子さま」が出てくるのは「第二話 凝視(みつ)める目」で、ここでは降霊アイテムとしてポピュラーなコインと五十音の書かれた紙に代わって、シャーペンと白紙が用いられている。めっちゃお手軽だが、憑依されて無意識に墓場を訪れたり、溶け出した地面から無数の手が現れたりと、生じる怪異はかなり強烈だ。学校を取り巻く地勢に問題があったかも……という解釈も面白い。

「第六話 何かがそこにいる」は木造の旧校舎のトイレ(チェーンで厳重に封じられている)に幽霊が出るという、『ゴーストハント』の「旧校舎怪談」を地で行くようなエピソードだった。先生が話した「いわく」が劇中に組み込まれていて、そこが一番の恐怖ポイントになっている。
 下記のリストの通りこの巻は学校の怪談がメインとなっているが、これまでとは著しく異なる点がある。それはピンチの体験者が自らを守護してくれるモノの存在を明確に意識しているところだ。時に守護者はショートカットの美しい少女や、天使、発光体などの姿で少女たちの前に顕現し、彼女たちを救う。案外コックリさんの異名の数々を生み出した思いは、この何となくファンシーでご都合な守護者を希求する心理と同根だったのかもしれない。



『空白の時間 他』画・山口夏実 ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.14、VOL.15 掲載
 「第一話 空白の時間 〜私の臨死体験〜」投稿者・北海道 匿名希望さん ※病院の怪談・臨死体験
 「第二話 凝視(みつ)める目」投稿者・滋賀県 中原智子さん ※学校の怪談・コックリさん

『真夜中の奇跡 他』画・みの瑞穂 ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.14、VOL.15、’91『ハロウィン』3月号 掲載
 「第三話 真夜中の奇跡」投稿者・福岡県 匿名希望さん ※病院の怪談
 「第四話 トンネルの中で……」投稿者・東京都 松竹梅さん ※路上の怪
 「第五話 迷える少女」投稿者・埼玉県 亀山裕代さん ※学校の怪談

『第六話 何かがそこにいる』投稿者・埼玉県 笹田利恵さん(仮名) 画・市川みなみ ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.14 掲載 ※学校の怪談

『真夜中の影 他』画・ひとみ翔 ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.14、’91『ハロウィン』1月号 掲載
 「第七話 真夜中の影」投稿者・静岡県 匿名希望さん
 「第八話 亡者の演奏」投稿者・静岡県 福島永子さん ※学校の怪談

『第九話 闇からの歌声』画・谷ゆたか ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.14 掲載
 「その1 亡霊合唱団」投稿者・大阪府 M・Mさん ※学校の怪談
 「その2 追悼式」投稿者・大阪府 匿名希望さん ※学校の怪談

『迷い出る者たち 他』画・黒田祐乎 ’91『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.13、VOL.14 掲載
 「第十話 迷い出る者たち」投稿者・兵庫県 匿名希望さん ※蛇
 「第十一話 神隠しの校舎」投稿者・静岡県 杉山明子さん(仮名) ※学校の怪談

「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。

 ※参考↓ 美堀真利『コックリさんの不思議』
 http://serpentsea.blog.fc2.com/blog-entry-380.html



『ほんとにあった怖い話〈14〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1991 ハロウィン少女コミック館
 著者:山口夏実

 ISBN-13:978-4-2579-8183-1
 ISBN-10:4-2579-8183-0


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つのだじろう『うしろの百太郎〈2〉』

 つのだじろう『うしろの百太郎〈2〉』講談社 1983 KCスペシャル

 前巻から続く「第四章 コックリ殺人編」と、著者独特のスタイルが確立した「第六章 コックリ憑依編」に、真正面からPKに取り組んだ意欲作「第五章 念力少女ワッコ」を加えた3編を収録。百太郎の影は薄いが、すごい読み応えの一冊。

「第四章 コックリ殺人編」
 前巻で正気を失い入院してしまった「小早川先生」、幸いその後の容態は安定しているらしい。先生がおかしくなった原因は「心的分離」という精神異常の一種によるものだという。やがて小早川先生が復帰するのと時を同じくして、校内で凄惨な事件が発生する。生徒が連続して殺害されたのだ。退院早々、小早川先生の苦悩はハンパない。自分の身に危険が迫るのを感じた一太郎は、殺された生徒の霊を呼び出し真犯人を聞き出したのだが……。
 憑依された教師が生徒を襲う、以前感想を書いた『霊界通信』(←前の記事へのリンクです)でもほぼ同じネタが用いられていて既視感の強い一編だが、発表年次からすると本作がルーツなのかな。同じじゃないけど似た感じのシチュの作品は本作の「第十四章 イヌ神つき伝説」『呪凶介SPI霊査室』『学園七不思議』(←前の記事へのリンクです)等々数多い。さて本編では、前巻で散々ハウツーコックリさんをやってたにも関わらず、ここにきて所長(一太郎の父親)が「シロウトがやるのはぜったいにキケンだ!」(p.7)なんて言い出した。コックリさんに玄人がいるのかどうかはさて置き、後出しジャンケンも甚だしい。最後に「……もしこの話を聞いたら」が付いてくる怪談のような嫌な構成だ(褒めてます)。実際にはあまりの反響の多さと様々な問題が生じたことから、ゆるーっと方向転換をしたってのが真相ではなかろうか。シメはコックリさんもの定番の隔離エンド。盤石。

「第五章 念力少女ワッコ」
「後心霊科学超能力開発研究所」を訪れた少女「ワッコ」は強力な念力の持ち主だった。念じるだけでスプーンはおろか道路標識の支柱を軽々と曲げ、物体を動かし、発火させることさえできる。最初のうちは友好的に一太郎親子と接していたワッコだったが、一通りレクチャーを受けるとガラリと態度を変え、不気味な笑いを残して去っていった。それ以来、一太郎の周辺に奇怪な事件事故が頻発する。それは「後心霊科学超能力開発研究所」を逆恨みした、ワッコと彼女の父親の仕業であった。ワッコの父親もまた強い念力を持っており、親子揃って邪悪な念を研究所に送り続けていたのだった。一太郎たちの必死の抵抗も虚しく焼け落ちる研究所……。
 つのだ版『ファイアスターター』(“Firestarter”)。ただし本作のワッコ(とその父親)はチャーリー(とその父親)とは比べものにならないほど、邪悪で執念深い。心霊的な怖さはないけど、人の(逆)恨みの怖ろしさがごってりと重い一編で、めっちゃ悪い顔をしたワッコの父親の凄惨な死に様はトラウマレベルの迫力だ。またこのエピソードでは一太郎の家族が被る念力による被害の状況の他に、ESP全般についての講釈が丹念に描かれている。霊能力と超能力の関係については「現在はいちおうESP…超能力と心霊は…、わかりやすくするためにわけて考えるのが普通になっているがな……! とうぜんふかい関係がある!」(p.86-87)って感じで、なんとなく歯切れが悪いが、関係はあるが別のものということらしい。所長の部屋着は裸にガウンがデフォルト。

「第六章 コックリ憑依編」
 研究所兼自宅を失った一太郎とその家族は、ぱっと見「あきらかに霊気が漂っている」古い借家に身を寄せることになった。案の定心霊現象が頻発し一太郎を悩ませる。そんな一太郎のもとを二人の少女が訪れた。遊び半分で繰り返しコックリさんをやっているうちに、右手が勝手に動いて文字を書くようになったという。不在の父親に代わって担ぎ出された一太郎は、相談者の学校でコックリさんの講義をすることになった。
 劇中にこんな著者の言葉がある。「これからはじまるコックリさんの話はじっさいにあった事件として、読者の投書数通の中からつくった『実話』といえる話です。……つのだじろう」(p.243) ……実際にあったのか、作ったのか、はっきりしない気もするが、とにかく「実話」と言える話らしい。読者からの直筆の(ように見える)手紙の引用、精神病理学への不信感、催眠術師による心霊否定論などで構成されたエピソードで、これから延々と用いられることになる著者独特のスタイルがいきなり確立している。ストーリーよりもそれらの要素の真実性が重要視されるのも後続作と同様。ただしスタイルとしては完成されているが、後に著者自身が強く否定することになる「コックリさんじゃなくて「守護霊さん」なら絶対安心」などの意見が散見されるのはご愛嬌で、そのあたりを意識して読むのも楽しい。世間の苛烈なリアクションに辟易する著者のオーラがそこここに滲み出る好エピソード。


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『ほんとにあった怖い話〈11〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈11〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1990 ハロウィン少女コミック館

 全15話、短めの話がごちゃっと詰まっている。目につくところでは鉄道関連の怪談が3話収録されているが、全体にまとまりのない(作画的にも)……良く言えばバラエティに富んだ巻。内容以外の特徴としては、すべてのサブタイトルに「 ! 」「?」「…」が付いてないところが挙げられる。下のリストの文字がなんとなーく詰め詰めに見えるのは多分そのせい。

 トータルではそんな感じなんだけど、個々のエピソードには興味深いものがいくつかあった。とくに松世眞由美画の『生死のかけ橋』(第六話〜第十話)は、読者をどーにかして怖がらせようって姿勢の顕著な好編。作画こそまだこなれてない感じだけど、前フリなしにふっと「黒い気配」を描き込んだり(p.113)、腕が床を這ってくるシーンを怪異の視点から描いてみたりと(p.106)、細かな工夫が凝らされている。どれも短い話だし、数えてみればほんの数コマの「怖い絵面」だが、怪異の表現に関して高いセンスが感じられた。
 また珍しいところでは「第五話 胎児の涙」が、妊娠、流産、水子供養を扱っている。これらのネタは実話怪談ではわりと定番なんだけど、少女向けの雑誌に掲載されていた本シリーズには、これまでストレートに採用されることがなかった。投稿者は26歳の主婦、内容も怨念を前面に押し出した怖い話ではなく、心から水子を悼む母親のちょっといい話になっている。



『異次元列車 他』画・黒田祐乎 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.10 掲載
 「第一話 異次元列車」投稿者・東京都 井上裕美子さん ※鉄道の怪談
 「第二話 早朝列車綺譚」投稿者・千葉県 まんまる・Kさん ※鉄道の怪談

『瞳の封印 他』画・山口夏実 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.10 掲載
 「第三話 瞳の封印」投稿者・東京都 高橋茉莉花さん(仮名)
 「第四話 絆の河」投稿者・兵庫県 花村利香さん ※臨死体験
 「第五話 胎児の涙」投稿者・茨城県 奥村ゆう子さん(仮名)

『生死のかけ橋 他』画・松世眞由美 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.10、’90『ハロウィン』4月号、8月号 掲載
 「第六話 生死のかけ橋」投稿者・静岡県 匿名希望さん
 「第七話 死の予感」投稿者・北海道 匿名希望さん
 「第八話 変わらぬ母の愛」投稿者・京都府 高木一美さん
 「第九話 この世ならぬ訪問者」投稿者・大分県 匿名希望さん ※コックリさん・金縛り
 「第十話 真夜中の徘徊者」投稿者・神奈川県 森山慈子さん(仮名) ※病院の怪談

『幽霊アパート 他』画・おちあいわたる ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.10、’90『ハロウィン』7月号 掲載
 「第十一話 幽霊アパート」投稿者・千葉県 市原剛さん ※幽霊屋敷・路上の怪
 「第十二話 松の木通りのタクシー」投稿者・大阪府 P.N.ペコちゃん ※タクシーの怪談
 「第十三話 霧の予知夢」投稿者・山梨県 匿名希望さん ※鉄道の怪談

『第十四話 霊の棲む部屋』投稿者・兵庫県 大田勝也さん 画・佐和田知生 ’90『ハロウィン』3月号 掲載 ※幽霊屋敷

『第十五話 死者の呼び声』投稿者・東京都 P.N.川澄苳緒子さん 画・植松麻里 ’90『ハロウィン』6月号 掲載 ※金縛り・学校の怪談



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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『ほんとにあった怖い話〈10〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈10〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1990 ハロウィン少女コミック館

 前巻同様、全9話を収録した第10巻。

 定番の霊感少女・コックリさんネタの「第一話」~「第三話」は、目新しさこそないものの読みやすい構成で、抑制の効いた怪異の表現にも好感が持てた。何でもかんでも霊の仕業にしてしまう霊感少女が登場する。多少ぎこちなさが残るロリっぽい(←珍しい)作画は、このシリーズ初登場の谷ゆたか。「谷豊」と言えばハリマオだけど、もちろん別人。「第三話」には複数の実話怪談本にも収録された「路上の生首」が出てくる。
「第八話 選ばれた家!?」はサブタイ通りのしっかりとした幽霊屋敷もので、投稿者の知人が入居した家の仏間の畳に、床下から棒で突いたかのような無数の穴が開くという珍しい現象が生じている。舞台となるのは曰くありげな古い屋敷とかじゃなくて、心霊現象とは無縁な感じの新興住宅地の新しめの家だ。招聘された霊能者が怖れをなして引き返すという、定番のシークエンスもある正調心霊マンガ。
『第九話 蛇嫁様』は投稿者の母親の若い頃の話らしいが、まるで民話のようなエピソードだった。娘に取り憑いた蛇を払うために、お稲荷様を信仰しはじめたある家族。娘の友人だった投稿者の母親が久しぶりに彼女のもと訪れると、その家族がキツネのような挙動をしていたという。具体的に何かが起こったってわけじゃないけど、不気味な余韻が残るエピソードだった。

 というわけで全体に地味な印象だが、いくつか興味深いエピソードがあった。コックリさん系の話も根強く2話収録されている。



『霊頭痛 他』画・谷ゆたか ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.9、’89『ハロウィン』10月号、’90『ハロウィン』1月号 掲載
 「第一話 霊頭痛」投稿者・宮城県 角田祐美さん ※霊感少女・コックリさん
 「第二話 初めてのコックリさん」投稿者・東京都 佐藤順さん ※コックリさん・路上の怪
 「第三話 真夜中過ぎの訪問者」投稿者・大阪府 匿名希望さん ※金縛り

『とどかなかった声 他』画・黒田祐乎 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.9、’90『ハロウィン』2月号 掲載
 「第四話 とどかなかった声」投稿者・東京都 匿名希望さん ※旅先の怪談
 「第五話 純白の風景」投稿者・北海道 P・N日向忍さん ※金縛り

『第六話 闇の足音』投稿者・東京都 匿名希望さん 画・鷹魏真知子 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.9 掲載

『もうひとりの家族 他』画・山口夏実 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.9 掲載
 「第七話 もうひとりの家族」投稿者・長野県 秋子さん
 「第八話 選ばれた家!?」投稿者・岡山県 匿名希望さん ※幽霊屋敷

『第九話 蛇嫁様』投稿者・北海道 恩田晴美さん 画・瀧清流 ’90『ハロウィン』増刊『ほんとにあった怖い話』VOL.9 掲載 ※憑き物



「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。


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