『ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』

 『ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 怪奇っぽいテーマを掲げた巻が続いたが、やっぱ前巻が苦しかったのかこの第23巻はテーマなし。ところが当時、雑誌『ほんとにあった怖い話』では「幽霊寮」なる特集を組んでいたらしく、そのエピソードがこの第23巻に集中している。おかげで図らずも「幽霊寮」のテーマがぴったりな巻になった。このどーにもビシッと決まらない感じが好ましい。

 さて、この巻のざっくりした印象はというと、とにかく絵が綺麗。少年マンガっぽいタッチはほとんどなくなって、すべてよく整った少女マンガ風のタッチで統一されている。単純に作画が安定しているかどうかの一点でみれば、これまでの巻の中では間違いなくトップクラス、実に読みやすかった。ただあらためて感じたのだが、淡白な少女マンガのタッチは頭からいきなりトップギヤに入れるような、強引な怪奇ムード作りには全然向いてない。この手の短編だとじわじわムードが出てくる前にページが尽きてしまう。そのため結構苦労してるなーって感じのエピソードもあった。

 反面、日常にすっと不吉な影が射すような描写、得体のしれないものに怯える登場人物の心理描写などは、淡白な少女マンガタッチの得意とするところである。「第一話 奇々怪々女子寮」などはその好例で、派手さはないけれど、ゾッとするような繊細な描写が光る。少女マンガに由来する「白い心霊マンガ」の王道を行くエピソードだ。それからもう一編、「第七話 屍の館」は珍しい自衛隊の寮を舞台としたエピソードだった。舞台となる「問題の部屋」に度胸試しをするように、隊員が入れ替わり立ち替わり宿泊する。すると皆同様の恐怖体験をする。いよいよ語り手(投稿者の父親)の番になった。真夜中に彼が見たものは……、という話。類話の多いシンプルなストーリーにシンプルなめくりの効果がよく効いている。子供心にはこのエピソードが最もコワイんじゃないかと思う。
 他にも寮やアパートにまつわる話が複数収録されている。「第八話 童子への贈り物」は座敷わらしで有名な岩手のR旅館を舞台にした話。火事で焼けてしまう前の出来事だ。幽霊屋敷好きには楽しめる一冊だった。



『奇々怪々女子寮 他』画・佐和田知生 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、’92『ハロウィン』10月号 掲載
 「第一話 奇々怪々女子寮」投稿者・東京都 茂手木裕美さん ※幽霊屋敷
 「第二話 橋に出る幽霊」投稿者・熊本県 羽田由美子さん ※橋の怪

『第三話 真夜中の白い指』投稿者・東京都 Qちゃん 画・赤津みづは ’92『ハロウィン』10月号 掲載 ※心霊スポット・虫の知らせ

『さわがしい隣人 他』画・天ヶ江ルチカ ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、’93『ハロウィン』1月号 掲載
 「第四話 さわがしい隣人」投稿者・東京都 P.N KAORUさん ※幽霊屋敷・金縛り
 「第五話 すれちがう霊たち」投稿者・新潟県 水沢ひろこさん(仮名) ※肝試し・家族の体験

『異界の狭間から… 他』画・七色虹子 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第六話 異界の狭間から…」投稿者・静岡県 匿名希望さん ※路上の怪・家族の体験
 「第七話 屍の館」投稿者・宮城県 カラスさん ※幽霊屋敷・家族の体験

『第八話 童子への贈り物』投稿者・大阪府 榮本明美さん 画・黒田祐乎 ’93『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※妖怪

『第九話 幽霊アパート』投稿者・長崎県 M・Mさん 画・藤方萌葱 ’93『ハロウィン』3月号 掲載 ※幽霊屋敷



『ほんとにあった怖い話〈23〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:赤津みづは 他

 ISBN-13:978-4-2579-8506-8
 ISBN-10:4-2579-8506-2


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『ほんとにあった怖い話〈22〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈22〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 金縛りと予知夢をテーマにした第20巻(21巻は芸能界編)は至極じみーな印象だったが、この22巻のテーマは「妖怪」。カバーのソデのリードには「“幽霊見ちゃった!!” というのはよくある話。でも“妖怪” は、めったに見られない。今回は、得体の知れない奴に出会った体験集。」とある。幽霊見ちゃった!! がよくある話かはさておき、とりあえずめっちゃ期待させられるのだが……、実はこの巻、全くテーマに沿ってないのだ。読了後、カバー外して中身を確認してしまうくらいのレベルで妖怪分が足りない。下の収録リストの※マークの通り、メインは幽霊屋敷もの、それから霊感少女だ。

 とはいえ、全然ダメダメかというと、そうでもない。似たようなモチーフが多いのに退屈な感じがしないのは、それぞれのエピソードが色々な意味でバラエティに富んでいるからだろう。異様な幽霊が次々とあらわれる金縛りもの「第一話 呪縛の夜」、幼い頃から特殊な能力に目覚めた霊感少女もの「第二話 折れた護符」は、実話怪談らしい支離滅裂な怪奇現象を暗いトーンで描いた好編。体験者の身長や体勢をしっかり踏まえた上で、その視点からの怪異を的確に表現している。とくに第二話は少ないページ数ながら構成も巧みで、効果的な回想シーンがごく自然に挿入される。妖怪不足のガッカリ感は拭いがたいが、この2編を読めるだけで充分にモトがとれた気分になる。それにしてもなんでテーマを幽霊屋敷か霊感少女にしなかったかなぁ。



『呪縛の夜 他』画・時任竹是 ’92『ほんとにあった怖い話』11月号、’93年1月号 掲載
 「第一話 呪縛の夜」投稿者・群馬県 匿名希望さん ※金縛り
 「第二話 折れた護符」投稿者・東京都 上田美津子さん ※霊感少女

『第三話 真夜中の侵入者』投稿者・東京都 坂本敦子さん 画・塚田さとみ ’92『ほんとにあった怖い話』9月号 掲載 ※予知夢

『第四話 霊夢住宅』投稿者・千葉県 神保杏子さん 画・丸傳次郎 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号 掲載 ※幽霊屋敷

『夢の探し物 他』画・神谷和巳 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号、’92『ハロウィン』9月号 掲載
 「第五話 夢の探し物」投稿者・山形県 平由美さん ※不思議な夢
 「第六話 白昼夢の街」投稿者・静岡県 匿名希望さん ※異世界

『第七話 K住宅怪奇談』投稿者・青森県 匿名希望さん 画・谷ゆたか ’92『ハロウィン』10月号 掲載 ※幽霊屋敷

『恐怖の訪客 他』画・山口夏実 ’92『ほんとにあった怖い話』11月号、’92『ハロウィン』11月号 掲載
 「第八話 恐怖の訪客」投稿者・奈良県 たまちゃん ※幽霊屋敷
 「第九話 私って霊感少女?」投稿者・北海道 KEY-KEYさん ※霊感少女

『誕生日がこわい 他』画・茶々丸 ’92『ほんとにあった怖い話』11月号、’93年1月号 掲載
 「第十話 誕生日がこわい」投稿者・宮城県 高橋和美さん ※霊感少女・妖精
 「第十一話 霊からの警告」投稿者・大阪府 由宇さん ※金縛り



『ほんとにあった怖い話〈22〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:神谷和巳 他

 ISBN-13:978-4-2579-8254-8
 ISBN-10:4-2579-8254-3


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『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』

ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 第2巻以来の「芸能界編」、前回は寡聞にも知らない人ばかりで困ってしまったが、今回はおそろしく豪華!!
 まず霊感ミュージシャンとして名を馳せた「池田貴族」、この本が刊行された頃から怪談にどっぷりの「つまみ枝豆」、説明不要の「人間椅子」。錚々たるメンツだ。さらに池田貴族の体験談には「宜保愛子」が、つまみ枝豆の体験談には「稲川淳二」が、それぞれに霊的なアドバイスをするゲストとして登場。豪華!! 残念ながら女子の中には知ってる人がいなかったのだが、さっき検索してみたところ、こちらもなかなかの顔ぶれのようだ。とはいえ、体験者のメンツが豪華だからといって、アンソロジーとして面白怖いとは限らない。芸能人編だけに、ホテルなどの宿泊施設、レコーディングスタジオ、TV番組の収録中といった、似たようなシチュエーションが重複してしまっており、ここまでの既刊分と比較して、やや水準を下回る出来となっている。

 それぞれの体験談には複数の霊体験が含まれていて、人から聞いた話はごく少なく、実際に話者が体験した話がメインである。収録されたエピソードの中で特に面白かったのは、つまみ枝豆の『怪奇ホテル』。作画はやや物足りなかったが、ダントツで面白かった。閉まりかけるエレベーターのドアの隙間から真っ赤なマニキュアをした腕がチラッと見える、その手がホテルのドアの下の隙間から入り込み絨毯を掻きむしっているなど、おどろおどろしい幽霊を登場させるのではなく、パーツの嫌なチラ見せで恐怖シーンをうまく盛り上げている。他のエピソードと比較してモダンな印象を受けた。
 深夜怖い話をしてた人ってイメージの池田貴族の体験談は、ライブハウスの機材トラブルにまつわる話や高校生の頃の心霊体験。作画はこのジャンルの大御所山本まゆり。人間椅子の体験談は初期メンバーでドラムスの「上館徳芳」が語る、金縛り、レコーディングスタジオにまつわる怪談。目新しいところはないが、少女漫画タッチで美化されたねずみ男スタイルの鈴木研一が見所。「みなさんイカ天って知ってますよね。僕たちはそこからデビューした人間椅子です」という冒頭のモノローグが時代を感じさせる。



『AM4:00の怪現象』語り・池田貴族 画・山本まゆり ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.16 掲載 ※ライブハウスの怪談

『怪奇ホテル』語り・つまみ枝豆 画・林正之 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.13 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・TVの怪談

『人形は見ていた』語り・本田理沙 画・美濃みずほ ’92『ほんとにあった怖い話』1月号 掲載 ※人形の怪談・レコーディングスタジオの怪談・金縛り

『四人目の声』語り・人間椅子 画・丸傳次郎 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.14 掲載 ※金縛り・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談

『階段の怪談』語り・島崎和歌子 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.12 掲載 ※コックリさん・ホテルの怪談

『夢のお告げ』語り・麻倉未稀 画・山口夏実 ’91『ほんとにあった怖い話』Vol.15 掲載 ※ライブハウスの怪談・ホテルの怪談・レコーディングスタジオの怪談



『ほんとにあった怖い話〈21〉芸能界編』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:山本まゆり 他

 ISBN-13:978-4-2579-8249-4
 ISBN-10:4-2579-8246-7


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『ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館

 20代後半?のOLのKさんからちょっと不思議な話を聞くことができた。こっちからは全然尋ねてもないのに、「昔、この辺に住んでたんですよねぇ」って感じで、勝手に話しはじめてくれたのだ。ありがたい。ここのところゲロ出そうなくらい忙しかったのだが、捨てる神あれば拾う神あり、ごくまれにいいこともある。

 水田が所々潰されて、新興住宅地になりつつある地域である。Kさんは学生の頃、この辺のアパートから電車と徒歩で片道30分かけて、隣の市の大学まで通っていたのだそうだ。アパートはKさんが入居する直前にリフォームされて、やけに小綺麗だったらしい。しかも家賃が格安。彼女の友人の同じような部屋が月4万円、彼女の部屋は1万8000円だったというから、半額以下だ。
 ただ、さすがに安いだけあって、アパートの作り自体は安っぽく、壁は薄いし、二階への外階段はよほど気をつけても足音が「バインバイン」と響く無骨な鉄骨製だった。で、ある朝、外が騒がしいので廊下に出てみたら、その階段が無くなっていた。正確には根元から4本の鉄骨がポッキリ折れて、綺麗に横倒しになっていたらしい。「あんなの倒れたら絶対気付きますよ。風が吹いてたわけでもないし、どうして倒れたのか……」
 二階の住人だったKさんと隣室のお姉さんは、その日、「小さい消防車」のハシゴを使ってようやく下に降りることができた。家賃からして何らかの曰くがあったのかもしれないが、このこと以外、怪しい出来事は全く無かったとのこと。

 というわけで、全然怖くないけど、念願のちょっと不思議な話でした。嬉しかったのは、Kさんがオカルト関連に全く興味がなさそうな人柄だったこと、「ただそれだけの話」とはいえオリジナリティが感じられたこと。実はこれより少し前に他の人から、もうちょい怪談らしい話を聞いたのだけど、地方の出来事ながら新聞沙汰になった投資詐欺ががっつり絡んでいて、検索してみたらまだまだ関連情報が出てきたので書くのやめてました。

 さて本題。今回この第20巻には珍しい趣向がある。カバーのソデには→「多少霊感のある人ならば、かならず経験があると言っていい“金縛り”と“予知夢” —この2大テーマの恐ろしい体験を収録!!」とある。
「金縛り」と「予知夢」、業界的にはかなり地味なこれらのネタが選ばれたのは、体験を共有する読者が多そうとか、そんな感じの理由からだと思われるが、テーマを絞っただだけあってまとまりのある一冊になっている。ただ当たりかというとそうでもなくて、ややハズレ寄りというのが正直なところ。やっぱ地味だった。
 収録されたエピソードの中で、ガチで「予知夢」って感じの話は「第十話」。身の回りの小さな予知だけじゃなくて、湾岸戦争の予知までしてる。メインの現象の前兆として生じることの多い「金縛り」は、それだけで面白くするには難しいテーマなので、それに付随して生じる現象がメインになっている。印象的だったのは予知夢・金縛りのそれぞれの体験者が、いやよいやよと言いながら、かなりはっきりと優越感を持っているところで、これまでもそんな風に感じることはあったが、この巻ではそれがより顕著な感じ。上記のカバーのリードを信じるなら、金縛りにも予知夢にも無縁な自分には、霊感は全く備わっていないようだ。



『明け方の報せ 他』画・佐和田知生 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号、『ハロウィン』8月号 掲載
 「第一話 明け方の報せ」投稿者・東京都 茂手木裕美さん ※虫の知らせ
 「第二話 台風の夜」投稿者・埼玉県 P.N北野椿さん ※学校(塾)の怪談・金縛り

『第三話 母が見ている』投稿者・大阪府 匿名希望さん 画・ひとみ翔 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※不思議な夢
 
『妖かしの桜 他』画・七色虹子 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号、12月号 掲載
 「第四話 妖かしの桜」投稿者・宮城県 高橋知美さん ※不思議な夢
 「第五話 闇からの呪文」投稿者・大阪府 高松朋美さん ※コックリさん・金縛り

『第六話 霊現象は睡魔と共に…』投稿者・栃木県 星樹綾さん(P.N) 画・南地裕子 ’92『ハロウィン』5月号 掲載 ※心霊写真・不思議な夢

『第七話 幽霊テレビ』投稿者・岡山県 匿名希望さん 画・植松麻里 ’92『ハロウィン』4月号 掲載 ※金縛り

『夢の中の絵 他』画・谷ゆたか ’92『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号 掲載
 「第八話 夢の中の絵」投稿者・愛知県 Miss味子さん(P.N) ※予知夢
 「第九話 死霊の足音」投稿者・宮城県 佐藤浩子さん(P.N) ※虫の知らせ

『夢なら夢でも… 他』画・黒田祐乎 ’92『ほんとにあった怖い話』9月号、11月号 掲載
 「第十話 夢なら夢でも…」投稿者・長崎県 中村和子 ※予知夢
 「第十一話 伝染性怪現象」投稿者・千葉県 常夏娘さん ※金縛り・伝染する怪談



『ほんとにあった怖い話〈20〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1993 ハロウィン少女コミック館
 著者:ひとみ翔 他

 ISBN-13:978-4-2579-8246-3
 ISBN-10:4-2579-8246-2


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『ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 さすがにこのあたりまで読んでくると、目次の段階で当たりハズレの見当がつくようになってくる。カバーのソデには「ほんとに、ほんとに、ほんと〜に体験しちゃった恐怖の体験、不思議な体験をマンガ化するシリーズ。ゾクゾクパワー、ますますアップ。」なんて書いてあったけど、見たところまずまずかなーって感じで、実際にそうだった。
 この巻の特徴は建物や土地にまつわる怪異譚が目立つこと(「第一話、第三話、第五話」など)。また下のリストの通り長めの作品も多い。前巻に続いて学校の怪談系のネタは皆無である。この時期、姉妹シリーズの『ほんとにあった怖い話 作家編』がスタートしていることからも、マンネリ回避のための試行がなされていたのかもしれない。

 ソデにあったゾクゾクパワーを存分に感じられるのは、収録作の中では「第五話 悪霊住宅」が唯一だった。もうタイトルからして並々ならぬ気合が感じられるが、トビラ含めて24ページの中に比較的地味な「手の怪」、ラップ音から、布団の上に乗ってくる系の複数の幽霊、逆柱(?)っぽい怪異まで「うちで起きたら嫌なこと」が詰め込まれている。作画も上々で、ページのめくりの効果もしっかり計算されている。ささやななえこ(ささやななえ)の名作『空ほ石の…』を彷彿とさせる怖いシーンもある。もともと絵の上手い人らしいが、マジで読者をビビらせてやる!! って気合がひしひしと感じられた。

 その他に印象的だったのは「第一話 ゆうれい居酒屋」と「第八話 最後の買物」。「第一話」はタイトルの通り霊的な現象が頻発する居酒屋の話。怪異自体はごくスタンダードなものだが、投稿者が一人だけ徹底して何も感じないのが面白かった。「第八話」は信楽焼のでっかいタヌキを買いに幽霊が骨董市に来る話で、なんとなく幸田露伴っぽいネタ。絵柄は淡白でホラー漫画としてはどーかと思うが、ほっこり系の話によくはまっていた。ここに出てくる骨董市に多分行ったことがある。



『第一話 ゆうれい居酒屋』投稿者・大阪府 高松明美さん 画・七色虹子 ’92『ほんとにあった怖い話』5月号 掲載 ※職場の怪談

『第二話 会いたくて淋しくて』投稿者・東京都 山崎悦子さん 画・黒田祐乎 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※家族の心霊体験

『第三話 異界の客達』投稿者・栃木県 松本裕子さん 画・山口夏実 ’92『ほんとにあった怖い話』5月号 掲載 ※霊感少女・職場の怪談

『第四話 のびる腕』投稿者・宮崎県 匿名希望さん 画・渡辺杜都 ’92『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※霊感少女(主婦)

『第五話 悪霊住宅』投稿者・大阪府 匿名希望さん 画・浅野まいこ ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※幽霊屋敷

『真夜中の泣き声 他』画・三浦尚子 ’92『ハロウィン』3月号 掲載
 「第六話 真夜中の泣き声」投稿者・北海道 須佐邦子さん ※水子
 「第七話 下校時の遭遇」投稿者・千葉県 匿名希望さん ※路上の怪

『最後の買物 他』画・天ヶ江ルチカ ’92『ほんとにあった怖い話』5月号、7月号、’92『ハロウィン』1月号 掲載
 「第八話 最後の買物」投稿者・東京都 柴田貴代さん ※骨董の怪談
 「第九話 午後の訪問者」投稿者・奈良県 中尾有香子さん ※ドッペルゲンガー
 「第十話 最後の別れ」投稿者・山形県 五十嵐理恵さん(P.N) ※家族の心霊体験



『ほんとにあった怖い話〈19〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:七色虹子 他

 ISBN-13:978-4-2579-8233-3
 ISBN-10:4-2579-8233-0


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『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』

ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館

 学校の怪談やコックリさんなどのポピュラーなネタはすっかり影をひそめ、家と職場にまつわる体験談が中心の巻。投稿者の年齢は前巻に続いてやや高めで、海外からの投稿もある。全体の印象はライトな絵柄、ソフトな怪異表現といった感じ。各話ごとに様々な怪異が生じてはいるが、総じてゆるめの話で占められた一冊だ。ところがそんな中に一編、とんでもないエピソードが含まれていた。泥の中のダイヤモンド、いや、ポップコーンの中の臼歯って感じの傑作エピソード、それが「第七話 子供達の家」である。作画はこれまでにも良作をものにしてきた時任竹是。

「第七話 子供達の家」のストーリーはいたってシンプルだ。千葉県A市の新興住宅地に越してきた当時10歳の投稿者が、新居で複数の子供の霊や動物霊を目撃し様々な怪異に見舞われるというもの。後にその土地にまつわる曰くが判明する。絵に描いたような幽霊屋敷ものである。作画担当者はそんなシンプルでオーソドックスなストーリーを、極上の作画で極上の作品に仕上げている。トビラ含めて28ページ、一切の隙も妥協も感じられない。トビラからしてめっちゃ怖い。ぐにぐに変化する視点や歪んだ構図が不安感を煽り、ただそこにいるだけのゴーストの姿も素晴らしくイビツに、不気味に表現されている。なかでも3ページにわたって描かれる投稿者とゴーストのファーストコンタクトは秀逸で、まるで自分がそこにいたかのように感じさせられる。絵柄は暗く、じっとりとしていて、古い木造家屋の匂いが漂ってきそうな雰囲気である。上手く例えられないが、つげ義春とひよどり祥子をいい具合にミックスした感じか。
 それにしてもこんな傑作が顧みられることなく埋もれてしまうのは実に惜しい。昨今の雑誌にポンと掲載されても、遜色がないどころか、並の作品なら全く太刀打ちのできないレベルの一編である。幽霊屋敷もののファンにとっては、この一編のためだけにこの本を買ったとしても、きっと後悔することはないだろうと思う。それくらいの作品。

 あとこの第18巻の巻末には、姉妹シリーズ『ほんとにあった怖い話 作家編』の広告が掲載されている。「〜作家編」もなかなか面白いシリーズなのでいずれ感想を書こうと思う。



『さまよえる亡霊 他』画・茶々丸 ’92『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号、5月号 掲載
 「第一話 さまよえる亡霊」投稿者・東京都 匿名希望さん ※幽霊屋敷・職場の怪談
 「第二話 ふりむいても誰もいない」投稿者・宮城県 高橋知美さん ※霊感少女・幽霊屋敷
 「第三話 死神が通り過ぎた夜」投稿者・愛知県 名古屋っ娘さん ※家族の心霊体験集

『第四話 からみつく腕』投稿者・大阪府 しゆさん 画・丸傳次郎 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※金縛り・幽霊屋敷

『見知らぬ人影 他』 画・塚田さとみ ’92『ほんとにあった怖い話』5月号、’91『ハロウィン』12月号 掲載
 「第五話 見知らぬ人影」投稿者・静岡県 石川一美さん ※心霊写真・職場の怪談
 「第六話 視線外の世界」投稿者・神奈川県 NAKOさん ※霊感少女

『第七話 子供達の家』投稿者・茨城県 匿名希望さん 画・時任竹是 ’92『ほんとにあった怖い話』3月号 掲載 ※幽霊屋敷・神隠し

『サウスエンド奇禍談 他』画・黒田祐乎 ’91『ほんとにあった怖い話』1月号、3月号 掲載
 「第八話 もうひとりの兄」投稿者・イギリス(ロンドン在住) A.Sさん ※幽霊屋敷
 「第九話 棲みついた影たち」投稿者・兵庫県 A.Nさん S.Yさん ※幽霊屋敷・職場の怪談

「※印」は各話の簡単な分類。サブタイからは内容がよく分からない話などに適当につけた。投稿者名の敬称については作中の表記通り。



『ほんとにあった怖い話〈18〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1992 ハロウィン少女コミック館
 著者:茶々丸 他

 ISBN-13:978-4-2579-8224-1
 ISBN-10:4-2579-8224-1


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