読書メモ(怪奇系多め/ネタバレあり)

感想文、雑記。ネタバレあります。

『ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』

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ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館

 粒揃いだった前巻とは打って変わって玉石混淆な一冊。作画、構成が安定したエピソードに混じって、久々にかなり崩れた作画が見られた。また投稿内容を消化しきれないまま終わってしまってるような、ごく短いエピソードもあった。投稿者(体験者)の年齢は前号よりやや上がっており、住居や職場の体験が中心になっている。この巻にもドラマ化されたエピソードが複数収録されている。

 同一の作画担当者による第一話〜第四話は、すごく怖いってわけではないけれど、手堅くまとめられた印象。「第一話 奇妙な同居人」では三角形の土地に建てられた三角形の家に怪奇現象が頻発する。変わった形の土地というのは使いづらいだけじゃなくて、風水的にも凶相らしく、なかでもシンプルな三角形は例としてあげられることが多い。聞くところによると土地の角の形状や数が重要らしい。実際に有名な事件、事故が凶相の土地で発生しているケースがあり、そうした土地の建物を舞台にした実話怪談も散見される。
 ほとほど怖さの第一話~第四話のうち、最も怖ろしいの絵面があるのは「第四話 真夜中に忍び寄る…」だった。内容はいまいち脈絡のない心霊体験談ながら、「階段の幽霊」の邪悪な顔貌が素晴らしい。サブタイもいい感じだ。

 体験者の年齢が高めってことで、本シリーズには珍しい不倫がらみのエピソードが収録されている。「第十話 暗い目の少女」がそれで、夫との不倫の末、生霊と化した少女に祟られる妻子の体験談だ。『今昔物語集』にも載ってるような古典的なテーマだが、少女向けのこのシリーズに含まれているとちょっと新鮮に感じる。手にした出刃包丁で妻の全身はおろか、「何度も何度も子宮のあたりを刺す」という少女の生霊がおぞましい。本シリーズの古くからのレギュラーである黒田祐乎による第九話~第十一話は、作画のレベルも高く構成も上々で読み応えがあった。



『奇妙な同居人 他』画・七色虹子 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号、11月号、’93『ハロウィン』9月号 掲載
 「第一話 奇妙な同居人」投稿者・茨城県 匿名希望 ※幽霊屋敷・金縛り
 「第二話 私が来る!?」投稿者・福岡県 克子さん ※ドッペルゲンガー・霊感少女
 「第三話 雨女」投稿者・東京都 ふぶきまなみ(仮名)さん ※路上の怪
 「第四話 真夜中に忍び寄る…」投稿者・富山県 山下貴子(仮名)さん ※霊感少女

『第五話 魔の棲む部屋』投稿者・福岡県 児玉幹子さん 画・藤方萌葱 ’93『ハロウィン』11月号 掲載 ※幽霊屋敷

『第六話さよならの予言』投稿者・大阪府 岸恵美子さん 画・天ヶ江ルチカ ’93『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※予知・霊感少女

『霊感上司 他』画・神谷和巳 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、’93『ハロウィン』7月号 掲載
 「第七話 霊感上司」投稿者・愛媛県 匿名希望さん ※霊能者
 「第八話 青白い手」投稿者・栃木県 荒巻由紀子さん ※金縛り

『闇への視覚 他』画・黒田祐乎 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号、11月号 掲載
 「第九話 闇への視覚」投稿者・岐阜県 匿名希望さん ※職場の怪談
 「第十話 暗い目の少女」投稿者・千葉県 山口奈美さん ※生き霊
 「第十一話 花博怪談」投稿者・島根県 匿名希望さん ※職場の怪談



『ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館
 著者:七色虹子 他

 ISBN-13:978-4-2579-8539-6
 ISBN-10:4-2579-8539-9

MODEL Art (モデルアート) 2019年 06月号 No.1014

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 MODEL Art (モデルアート) 2019年 06月号 No.1014

 今月号はの特集は「ハウツービルド カーモデル」。超久々、ここ数年来なかったカーモデルの特集だ。記事の冒頭にも「最近は全然カーモデルを正面から取り上げておらず、それを反省(!!)する意味を込めて、久々にカーモデルを特集します」とある。MAでは新製品が出れば「NEW KIT REVIEW」で取り上げられているし、充実した特別記事やカーモデルの連載記事もあるので、それほどカーモデルが冷遇されてるって感じではないけれど、特集については良さげなタイミングを逃してきたように感じる。例えばタミヤの「ポルシェ 934」が出て以降の状況を考えると、どこかでレーシングポルシェの特集が組めたのではないかと思う(見たかった!)。あとBEEMAXのキットをはじめ、充実してきているラリー関連の特集とか。
 今回の特集の作例は偏光塗料のサンプルを除くと3例と少ないものの、途中写真をたっぷり用いた製作記事は非常に充実している。ポイントは製作の流れに沿ったテクニックの解説で、表紙にも載ってるBEEMAXの新製品1/24「ランチア デルタ S4」を例にとると、表面処理やクリヤーパーツの扱い方などの基本的なことから、エッチングパーツを用いた簡単なディティールアップやデカールの貼り方、研ぎ出しまで言及されている。好キットが目白押しの「ランチア」の中にあって、「デルタ S4」はこれまでキットに恵まれてなかったらしいが、マルティニカラーが実にかっこいい。
 個人的に嬉しかったのはタミヤとエレールの「A110」のニコイチの作例で、実車が好きってのもあるけど、懐かしい感じの切った張ったの記事なのが良かった。本誌には「カスタム」の名目でカーモデルを切った張ったする頼もしい連載記事「ヤングタイマー・ガレージ」が掲載されているが、カーモデルに限らず、大掛かりな改造やキットの修正(ディティールアップでなくて修正)記事は最近あまり見かけなくなった。キットの出来の向上やアイテムの多様化など、諸々の「事情」によるものと思われるが、作者の個性がよく伝わってくるし、モチベーションを上げるにはもってこいの記事なので残念だ。

 毎回楽しみにしてる連載記事の「FOLLOW YOUR HEART』では、今回 メビウス1/8の『2001年宇宙の旅 スペースポッド』が取り上げられている。1/8スケールである。記事によるとヘルメットくらいのサイズだとか。でかい。欲しいけど、買えないかなあ。せめて1/24スケールで欲しい。今回は内部の製作で完成は次号とのこと。
 それから前号までモノクロだった連載記事「It’s a FIGURE WORLD 目眩くフィギュアの世界」が、今回めでたくカラーページに昇格している。ヒストリカルフィギュアを中心とした各社のキットの紹介と、フィギュアにまつわるよもやま話の記事だが、せっかくなので製作記事も載せて欲しい。



 - 作例リスト (掲載順) - 航空機 戦車 艦船 車/バイク ■その他

連載記事『地名を名に持つ船とその場所のエピソード 艦船諸国漫遊記 Vol.42』
『ロシア海軍 原子力潜水艦 クルスク(オスカーⅡ)』タミヤ 1/700 ※海面ベース付き作品
『アメリカ海軍 原子力潜水艦 ロサンゼルス級 フライトⅠ』童友社 1/700
『アメリカ海軍 原子力潜水艦 改ロサンゼルス級 フライトⅢ』

特集「ハウツービルド カーモデル」
『ランチア デルタ S4 ’86 モンテカルロラリー仕様』BEEMAX 1/24
『アルピーヌ ルノー A110 ’73 ツール・ド・コルス仕様』タミヤ 1/24「アルピーヌ ルノー A110 モンテカルロ ’71」+エレール 1/24「アルピーヌ A110 (1600)」 ※ニコイチ改造
『Honda CIVIC TYPE R (2017)』モデラーズ 1/24 ※レジンキット

連載記事『モデリングJASDF 278回 “オジロロス” 真っ只中でつくる 302SQ白黒つがいのF-4EJ改 その2』
『F-4EJ改 スーパーファントム “302SQ F-4 ファイナルイヤー 2019”』ハセガワ 1/72

情報「World Modelers News No.23 アレクサンドル・クトベンコ氏にインタビュー」

NEW KIT REVIEW
『日本海軍戦艦 長門 昭和19年/捷一号作戦』フジミ 1/700
『陸上自衛隊 16式機動戦闘車』タミヤ 1/48 ※ジオラマ作品
『ローゼンバウワー パンサー 6×6 空港用化学消防車』ハセガワ 1/72 ※ジオラマ作品
『ドイツ海軍 軽巡洋艦 ケーニヒスベルク 1940年』フライホークモデル 1/700
『B-52H ストラトフォートレス』モデルコレクト 1/72
『川崎キ45改丁 二式複座戦闘機 屠龍』造形村 1/32 ※完成

特別記事「ハセガワ1/72F/A-18DをATARS(新型戦術機上偵察システム)仕様にする」
『アメリカ海兵隊 F/A-18D ATARS』ハセガワ+モデルアート「1/72 U.S.Marine F/A-18D ATARS」 1/72

連載記事『北澤志朗のヤングタイマー・ガレージ 連載第6回』
『メルセデスベンツ E430』フジミ 1/24改造

連載記事『日本機大図鑑 連載第169回』
「「寿」発動機架」

連載記事『FOLLOW YOUR HEART 第59回』
■『2001年宇宙の旅 スペースポッド』メビウス 1/8 ※完成は次回

連載記事『It’s a FIGURE WORLD 目眩くフィギュアの世界』
「ドイツ海軍 Uボート 艦長 バスト」ヤングミニチュア 1/10バスト
「「魔女飛行隊」ソ連空軍 第46親衛夜間爆撃航空連隊 パイロット バスト」
「テンプル騎士団の騎士 エルサレム バスト」



 次号の特集は「発表! 飛行機模型グランプリ (仮題)」が予定されている。



ランチア デルタ S4 ’86 モンテカルロラリー仕様』BEEMAX 1/24

いけ『ねこむすめ道草日記〈18〉』

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 いけ『ねこむすめ道草日記〈18〉』徳間書店 2019 リュウコミックス

 先月、めでたく刊行された最新刊。雑誌がwebに移行してもこうして単行本をしっかり出してくれるのは有難い。
 で、この18巻の中身はというと、前巻で予告されてた通りの「話も作画もまったりほのぼの進行」。……いつもと一緒だ。というか何もなさ具合は初期の巻に戻ったかのような何もなさ。新たに登場する主要な妖怪キャラは「雷様」くらいで、あとは黒菜を中心に、レギュラー妖怪の面々や再登場した妖怪が活躍する。

 収録されているのは「第107話 お化け猫と鬼ごっこして道草」から「第113話 深夜のゴミ出しで道草」までの7編。サブタイからして心機一転って感じの「第109話 猫娘の日記で道草」以降が「COMICリュウWEB」発表分となっている。これまでの雑誌掲載分と比べても全くクオリティが変わらないのが嬉しい。その「第109話」は連載12年めにして、ついに黒菜が日記を書こうとする話。といっても劇中で明らかにされるように、これまでにも何度か書こうとして挫折しているらしいのだが。
 収録された中で最も好ましかったエピソードは「第110話 夕立の雨宿りで道草」で、黒菜がやんちゃな年下の男の子「まー君」と二人、どこかの家の軒下で雨宿りをする。無邪気でお子様な黒菜とそれよりも年下の男の子の二人組だから、『釣りキチ三平』の雨宿り回のような甘酸っぱい話にこそならないが、いつもより何割り増しかでお姉さんな黒菜は新鮮。またこのエピソードが雷様の初登場回でもある。

 うちにある漫画は単巻か、そうでなくても短めの作品が多いのだが、この道草日記は18巻。一緒に買ってる『セントールの悩み』(これも18巻が出ました)とともに、かなり付き合いの長い作品となっている。気軽に再読できるし、ぼや〜っと読むのに最適な作品なので、今後もまったりほのぼの続けていってほしい。



『ねこむすめ道草日記〈18〉』
 徳間書店 2019 リュウコミックス
 著者:いけ

 ISBN-13:978-4-1995-0671-0
 ISBN-10:4-1995-0671-3

MODEL Art (モデルアート) 2019年 05月号 No.1012

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 MODEL Art (モデルアート) 2019年 05月号 No.1012

 今月号の特集は「今さら聞けない!? 接着剤」。プラモデル用の接着剤だけで特集一本である。こうなってくると橋脚専門誌やトンネル専門誌やタイヤ専門誌みたいな、不思議なオンリー雑誌に近い印象になってくる。内容は接着と接着剤にまつわるQ&A、各社各種接着剤の解説、シーン別接着剤の選択とベストな使い方、さらに接着以外の用法やハンダ付けについても軽く言及されている。作例は残念ながらタコムの1/35「アメリカ試作重戦車 T30/34」1例のみ。各接着剤の解説は身近な割にしっかり説明される機会のない商品だけに、結構興味深く読むことができた。知らない商品もあった。「キャノピタン」は見かけたら買ってみようと思う。
 といった感じで接着剤事情についてはさすがに充実した特集になっているが、何も特集にしなくても通常の製作記事に+αで充分に対応できるような気はすごくする。確かに有用なのだが、作例が1例というのはやっぱ寂しいし。

 NEW KIT REVIEWでは造形村の超キット1/32「屠龍」なんかも取り上げられているのだが、自分はF-5系の機体が好きなので今回の目玉はAFVクラブの1/48「サーエゲ80」だった。サーエゲはイランがF-5Eをベースに勝手に開発したアザラフシュの発展型で、見た目はF-5を無理やり双尾翼化したような機体である。かの国の兵器らしく詳細がよくわからないところも魅力的だ。キットも実機同様、F-5のバリエーションキットになっている。AFVクラブのF-5は全面に打たれたリベットがちょっと鬱陶しいかなってくらいで、もともとよくできたキットだったからサーエゲにも期待できそう(買います)。作例は3色迷彩の機体で、実にかっこいい。



 - 作例リスト (掲載順) - 航空機 戦車 艦船 車/バイク ■その他

連載記事『地名を名に持つ船とその場所のエピソード 艦船諸国漫遊記 Vol.41』
『日本海軍 工作艦 明石』アオシマ 1/700
『海上自衛隊 掃海艦 あわじ MOS-304』シーラインシリーズ 1/700 ※メタルキット

特集「今さら聞けない!? 接着剤」
『アメリカ 試作重戦車 T30/34 2 in 1』タコム 1/35

連載記事『フィギュア塗装のマジック vol.3』
『Claus von Stauffenberg』ナッツプラネット 1/10バスト

情報「ジオラマを楽しもう!!」
『T-90』モンモデル 1/35 ※ジオラマ作品

情報「World Modelers News No.22 ムラット・オズクル氏にインタビュー」

特別記事『ハセガワ 1/72 F/A-18D をコンバージョンキットで現在仕様に改修する』
『F/A-18D ホーネット』ハセガワ+モデルアート「1/72 米海兵隊 F/A-18D ATARS VMFA(AW)-242 BATS CONVERSION KIT」 1/72

連載記事『モデリングJASDF 277回 “オジロロス” 真っ只中でつくる 302SQ白黒つがいのF-4EJ改 その1』
『F-4EJ改 スーパーファントム “302SQ F-4 ファイナルイヤー 2019”』ハセガワ 1/72

NEW KIT REVIEW
『川崎キ45改丁 二式複座戦闘機 屠龍』造形村 1/32 ※完成は次号
『フォードGT』タミヤ 1/24 ※作例は2例
『イラン戦闘機 サーエゲ80』AFVクラブ 1/48
『ホーカーテンペスト Mk.Ⅴ(シリーズ1)』エデュアルド 1/48
『カルソニック ニッサン R91CP』ハセガワ 1/24
『サーブ JA37 ビゲン』タラングス 1/72
『T-80U 主力戦車』RPGスケールモデル 1/35

連載記事『北澤志朗のヤングタイマー・ガレージ 連載第5回』
『BLMC G/HN5D MG-B MK-3 ’74』アオシマ 1/24改造

連載記事『日本機大図鑑 連載第168回』
「「栄」一二型エンジン架」

連載記事『FOLLOW YOUR HEART 第58回』
■『マットアロー1号』ウェーブ 1/72

「It’s a FIGURE WORLD 目眩くフィギュアの世界」 ※モノクロ記事
「アメリカ南北戦争 南軍 ラッパ手」ミニソルジャーズ 1/35
「アメリカ南北戦争 南軍歩兵 1862年」ペガソモデル 54mm
「アメリカ南北戦争 「アトランタの戦い 1862年」」アンドレア 54mm

 Hobby Snap主催 MODEL Art協賛 #ナナニイ単発機コンペ 結果発表!
 第26回 KIYA CON 審査結果発表!



 次号の特集は「やっぱりカーモデル (仮題)」が予定されている。久々のカーモデル特集だ。


イラン空軍 戦闘機 サーエゲ80』AFVクラブ 1/48

『吸血鬼サーカス団』

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 吸血鬼サーカス団

 1810年、セルビアのシュテッテル村では子供の行方不明事件が頻発していた。犯人はミッターハウス伯爵。吸血鬼である。村人たちは徒党を組んで伯爵の城を襲撃し、伯爵の胸に杭を突き立てた。これで村は安泰、かと思いきや伯爵は死に際に不吉な言葉を残した。村全部を呪ってやると。
 15年経った。シュテッテル村には忌まわしい病が蔓延していた。村人が次々に死んでいく。伯爵の呪いではないか、そう口にする者もあった。このことから村は周辺の集落から隔離され、村への出入りは厳しく制限されていた。そんなとき、村にジプシーのサーカスがやってきた。その名も「夜のサーカス団」。
 サーカスはすぐに興行を始めた。小人の道化師に双子の軽業師、セクシーなダンサー、怪力男、猛獣のショーが、疲弊した村人たちを慰めた。しかしこのサーカス団を率いているのは吸血鬼、ミッターハウス伯爵の従兄弟にあたる男で、村の子供の血によって伯爵の復活を目論んでいたのだった。

 ハマー・フィルム、1971年の作品。吸血鬼がサーカスに化けてやってくる、なんでまたそんな遠回りなことを~って気がしないでもないが、予想外にサーカスのシーンの見応えがあるので、その辺はまあいいかって気分になる。スケールが小さくて、適当で、猥雑で、怪しい、まさに辺境をドサ回りするジプシーのサーカス。うすぼんやりと浮かぶイメージとの整合性はドンピシャだった。
 吸血鬼のシーンはというと、サーカスに尺をとられて少々不足気味。製作側の意図としてはサーカスを導入して、シンプルな吸血鬼との対決ものからの脱却を図ったのかもしれないが、肝心なところを削ってしまってるように思う。また吸血鬼側、村人側、ともにキャラが多く出入りも激しいため、繁雑になってしまって主人公の存在感が薄い、というか主人公主人公した主人公がいないから没入感も不足気味。閉ざされた村のゴタゴタを外側から眺めている感じ。

 そんな作品だけど、つまらないわけでは全然ない。毎回ハマー映画の感想に書いてることだけど、とにかく雰囲気は抜群にいい。古城と森のそばにある辺境の村が見事に描き出されている。セットから衣装、小物にいたるまでバッチリ世界観に則しているのは毎度のことで、そういうところはさすが。アバンの出来は特に素晴らしく、鬱蒼とした森の中で幼女が一人で遊んでる幻想的なシーンから→綺麗なおっぱい→村人の襲撃(流血あり)と、全く隙がない。全編この調子ならとんでもない作品になったに違いない。見るのは疲れるだろうけど。あと全然活躍しないけれど、ヒロインの女の子がやけに可愛い。せっかくなのでもっと出番と露出が欲しかった。



『吸血鬼サーカス団』(“Vampire Circus”)
 1971 イギリス
 監督:ロバート・ヤング
 出演:エイドリアン・コリ/ローレンス・ペイン/ソーリー・ウォルターズ/ジョン・モルダー・ブラウン/リン・フレデリック
 映像色 : カラー
 上映時間:86分

大阪圭吉『幽霊妻』

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 大阪圭吉『幽霊妻』(『とむらい機関車』国書刊行会 1992 探偵クラブ 所収)

 専門学校の校長、平田章次郎が殺害された。46歳だった。彼は厳格で口喧しい学者肌の男で、最近も判然としない理由から、一回りも年下の妻を離縁していた。そして元妻が身の潔白を訴える遺書を残して自殺したと聞いても、葬儀にさえ出ようとしなかったのである。そんな偏屈な平田の様子が目に見えておかしくなったのは、しぶしぶ出かけた元妻の墓参から帰ってからのことだった。何か怖ろしいモノを墓地で見たらしい。
 下男によって発見された平田の遺体は、強い力で首をへし折られていた。何者かに怯えたように両目を見開き、握りしめた右の拳には長い女の髪が絡みついていた。おまけにその髪からは元妻の愛用してた香油の匂いが漂っていたという。果たして平田を殺害したのは何者なのか、いかなる手段を用いたのだろうか。

 オチを読んで愕然としてしまうが、その手前までは完全に正調怪談な雰囲気の作品なので、推理と怪奇、両方のジャンルのアンソロジーに収録されてたりする。おかげで著者の作品の中では、わりと目にする機会の多い作品ではないか思う。
 以前感想を書いた『とむらい機関車』(←前の記事へのリンクです)でも顕著だったように、著者の作風は怪奇ジャンルのファンが喜びそうな濃厚な怪奇色と、それを一掃するような論理的なタネ明かしが特徴となっている。「戦前を代表する本格短編の第一人者」とされる所以だろう。当然本作『幽霊妻』にもその作風はばっちり反映されていて、とりわけ怪奇に大きく振っているところが嬉しい。直接的な怪異を全く描かずに、話者である下男が知り得た事実と平田のリアクションだけで、怪奇っぽい雰囲気を見事に醸成している。

 ところが↑のような怪奇な雰囲気は、ラストで犯人が特定された途端に吹き飛んでしまう。犯人の正体は一瞬何書いてあるのか分からなくなるくらい、突飛で異様である。
 犯人を知った後でよくよく読み直してみれば、確かにヒントらしきものは散りばめられているのだが、とても普通の脳みそでは犯人に辿り着けそうにない。本作を収録した推理系のアンソロジー『ミステリーの愉しみ 第1巻 奇想の森』の解説にも「本作品の犯人はまさしく前代未聞で、モルグ街の殺人犯人同様、研究家には記憶されてしかるべき」とある。
 考えてみれば、もしも実際に被害者のような目に合ったなら、幽霊がドーンと出るより本作の犯人の方が怖いかもしれない。どうもオチが気に入らない的なニュアンスの感想になってしまったが、大いに驚かされたし、楽しく読むことができた。


 ※ 参考 鮎川哲也, 島田荘司編『ミステリーの愉しみ 第1巻 奇想の森』立風書房 1991



『とむらい機関車』
 国書刊行会 1992 探偵クラブ
 著者:大阪圭吉
 解説:鮎川哲也「論理派ミステリーの先駆者」

 収録作品
 「デパートの絞死吏」
 「死の快走船」
 「気狂い機関車」
 「とむらい機関車
 「燈台鬼」
 「闖入者」
 「三狂人」
 「白妖」
 「あやつり裁判」
 「銀座幽霊」
 「動かぬ鯨群」
 「寒の夜晴れ」
 「坑鬼」
 「幽霊妻

 ISBN-13:978-4-3360-3361-1
 ISBN-10:4-3360-3361-7