読書メモ(怪奇系多め/ネタバレあり)

感想文、雑記。ネタバレあります。

MODEL Art (モデルアート) 2019年 08月号 No.1018

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 MODEL Art (モデルアート) 2019年 08月号 No.1018

 今月号の特集は「艦船模型製作の肝は比較と作り込み」。作り込みは分かるけど、比較とは? って感じの特集だ。ざっと目を通してみると、先月号の予告にあった「戦艦大和と艦船模型 製作法のあれこれ (仮題)」の方がぴったり来てるような気がした。
 特集の作例はフジミの1/200大和パーツと、アオシマの1/700「護衛艦 あさひ」の2例だが、サンプルの途中写真や実艦の画像をたっぷり用いて、「船体外板の再現方法」「艦橋窓の再現方法」「リノリウム甲板の押さえ金具」「木甲板の塗装方法」「キャンバス張りの手摺り」などなどが解説されている。ほとんどが本誌でも繰り返し言及されている既出の手法だが、丁寧な途中写真とキャプションが実に分かりやすかった。一つのお題に複数の手法が紹介されているのも良かった。
「作り込みの」はそんな感じで、「比較」の方はというと、巻頭から10ページほど使ってタミヤ、アオシマ、フジミ(特シリーズ)、フジミ(艦NEXT)、ピットロード各社の1/700「大和」のキットが「艦橋」「主砲&副砲」「甲板」~といった具合に各パートごとに比較されている。ジャンル問わず久々の大々的で詳細な比較記事だ。この手の記事はジャンル問わず読んでて楽しいのだが、キットの仮組み状態オンリーではなく完成品の比較も見たかった。

「NEW KIT REVIEW」は今月もバラエティに富んでいる。中でも目を引いたのがドイツレベル1/16『ポルシェ 356C カブリオレ』だった。356というとプラモにせよミニカーにせよ、黒の組織のジンが乗ってる356Aがチョイスされることが多いのだが、キットは356の最終型の356C。このドイツレベルのキットは多少大味なところもあるようだが、作例を見ると実にいい雰囲気でイエローのボディカラーもよく似合っている。エンジンもスケール相応の出来栄えだ。価格は13.400円。
 連載記事『モデリングJASDF』では白黒つがいの「F-4EJ改」が完成している。飛行姿勢で製作された作例は、華やかで美しい仕上がり。ぱっと見、京都あたりで売ってる工芸品のような雰囲気で物欲を刺激される。
 物欲といえば、「でものはつもの」や広告のページに造形村1/72「ホルテン Ho229」が載ってた。ついに発売される模様。しかも1/144のミニホルテンとセットとか。これは絶対に欲しい。



 - 作例リスト (掲載順) - 航空機 戦車 艦船 車/バイク ■その他

連載記事『地名を名に持つ船とその場所のエピソード 艦船諸国漫遊記 Vol.44』
『日本海軍 軽巡洋艦 神通』アオシマ 1/700
『日本海軍 駆逐艦 三日月』ヤマシタホビー 1/700「睦月」改造

特集「艦船模型製作の肝は比較と作り込み」
『戦艦大和 艦橋/九四式46センチ3連主砲塔/中央構造/副砲』フジミ 1/200
『海上自衛隊 護衛艦 DD-119 あさひ SP シーレーン防衛作戦』アオシマ 1/700

特別記事「アカデミー 1/72 単座の F/A-18Cを複座のD仕様に改修する」
『アメリカ海兵隊 F/A-18D VMFA (AW) -224』アカデミー 1/48「F/A-18C」改造

連載記事『モデリングJASDF 280回 “オジロロス” 真っ只中でつくる 302SQ白黒つがいのF-4EJ改 最終回』
『F-4EJ改 スーパーファントム “302SQ F-4 ファイナルイヤー 2019”』ハセガワ 1/72 作例は2例

情報「World Modelers News No.25 シニアエース・モデラーズクラブにインタビュー」
情報「World Scale Modeler Special News ダグラス・リー作品の魅力」

NEW KIT REVIEW
『ホーカーハンター F6』エアフィックス 1/48 ※A&AEE所属機の作例も掲載
『F/A-18E スーパーホーネット) -224』ドイツレベル 1/32
『ポルシェ 356C カブリオレ』ドイツレベル 1/16
『イギリス駆逐戦車 M10 ⅡC アキリーズ』タミヤ 1/35 ※ジオラマ作品
『ブリストル ブレニム Mk.ⅠF』エアフィックス 1/48
『ドイツ Ⅳ号戦車 G型 (中/後期型)』ボーダーモデル 1/35

連載記事『METHOD OF JET-MODELING 第2回』
『F-15E』グレートウォール・ホビー 1/48 ※機首/胴体の製作

連載記事『FOLLOW YOUR HEART 第61回』
■『科学忍者隊ガッチャマンⅡ ニューゴッドフェニックス』童友社 ノンスケール

連載記事『北澤志朗のヤングタイマー・ガレージ 連載第8回』
『ポルシェ 968 CS』ハセガワ 1/24改造

連載記事『日本機大図鑑 連載第171回』
「九九式三番三号爆弾改」

連載記事『It’s a FIGURE WORLD 目眩くフィギュアの世界』
「騎馬武者 14世紀」アンドレア 90mm
「源義経 1159-1189年 (騎馬)」ペガソモデル 90mm
「虎の敷物にすわる戦国武将」ポストミリテール 90mm

第11回 タミヤプラモデルファクトリー新橋店 モデラーズコンテスト



 次号の特集は「そうだったのか!? フィギュア塗装 (仮題)」が予定されている。


 

航空自衛隊 F-4EJ改 スーパーファントム “302SQ F-4 ファイナルイヤー 2019”』ハセガワ 1/72

末広恭雄『魚の風土』

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 末広恭雄『魚の風土』河出書房新社 1985 河出文庫

 毎月JAFから送られてくる動物が表紙の冊子に松任谷正隆のエッセイが載っている。主に自動車に関連するアレコレを書いたエッセイなのだが、数号前のネタが路上の怪談だった。いつもはふわっと目を通すだけだったが、思いがけないところで好みの記事を見つけて、なんか得した気分になった。
 自分にとって魚釣り関連の本は、そんな思いがけない、いい話の穴場である。実家には魚釣りのエッセイ全集みたいな箱入りの綺麗な本があって、海の怪談・奇談の記事がぽつぽつと載っていた。目次を見てもそれとは分からないことが多いから、適当に拾い読みをして結局それらしい記事は全部読んでしまった。この本もそんないい話を目的に購入した一冊で、油断するといつの間にか海の怪談・奇談になっている。ありがたいことに。

 本書は著者が実際に赴いて見聞した日本各地の魚にまつわるエッセイ集である。ご当地グルメや旅程の思い出話もあって、紀行文としても楽しく読める。当然、水産業と特産品の魚介類の話が中心になっているが、前述の通り海の怪談・奇談分もばっちり含まれている。
 収録されている34話のうち、印象に残ったものをあげると、禁足地の神聖な池で経血で汚れた腰布を洗ったことから、池の主に拐かされた女の話「乙和の池の花嫁」。それからわりと珍しいガチ人魚っぽい話が出てくる「新島の思い出」もよかった。海底で抜けなくなった錨を潜水して見に行ってみると、錨はどこにも引っかかってなくて、ただその上に黒髪を水になびかせた女が腰かけていたという。「唐桑の巨釜半造」では海難にあった商人を救助した白鯨の伝説が紹介されていて、これは唐桑半島の御崎神社の境内にある鯨塚の謂れである。続く「捕鯨紀行」では著者は実際に捕鯨船に乗り込んで、捕鯨の様子を見学している。

 こんな感じで、頻出するってほどでもないけど、やたらに目に付くその手の話の中で最も印象に残ったのは、昭和36年に読売新聞社が主催した華厳の滝の科学調査にまつわるエピソード「華厳の滝の冒険」だった。著者は当地における生物の調査を担当していた。
 華厳の滝は全国的に有名な心霊スポットで、現在は(ほとんど)なくなったとされるが、かつては自殺の名所として知られていた。著者が参加した調査の際にも、岩場や水中から複数の死体が見つかっている。陸上の死体は鳥獣の餌食となって酷い有様だったようだが、滝壺の底で発見された死体は蝋細工のように美しい状態を保っていたという。屍蝋化していたのだろうか。激しい水流に洗われて、ほとんど裸だったらしい。ほの暗い水中でゆらゆら揺れる死体、なんとも美しく不気味な光景である。



『魚の風土』
 河出書房新社 1985 河出文庫
 著者:末広恭雄

 ISBN-13:978-4-3094-7078-8
 ISBN-10:4-3094-7078-5

MODEL Art (モデルアート) 2019年 07月号 No.1016

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 MODEL Art (モデルアート) 2019年 07月号 No.1016

 てっきり特集に合わせたデザインなのかと思ったが、表紙がおめでたい感じなのは新元号一冊めを記念してのことらしい。正月とか元号とかこういうところに拘るのが、なんとなく本誌らしいと思う。あと気付いたら広告ページを除いて誌面が完全にカラーページになっていた。新製品の紹介はもとより読者ページまで。紙質のいい雑誌なのでカラーページの増量は喜ばしい。

 今月号の特集は数号前から作品募集の告知がされていた「発表! 飛行機模型グランプリ」。応募総数は各国の機体を対象にした「一般部門」と日本機・自衛隊機の「日の丸部門」、合わせて392点だったそうだ。募集期間こそ短いものの、テーマの間口が広かったこともあって、直近のSAコンと比べてもかなり多い。応募作品の機種別総数はレシプロ機が204点とジェット機よりやや多く、漠然とジェット機の方が多いと思ってたから意外だった。日の丸部門はレシプロ機が、一般部門はジェット機が強かったらしい。また遠からずコンペを予定してるのだろうか、応募作品が並んだページの間に、撮影のコツを解説するページあるのが面白かった。毎年一冊分の特集ページを割いてまでやることはないと思うけど、たまにはコンペも楽しい。

 作例は「NEW KIT REVIEW」と連載記事の分だが、すでにキットを持ってたり(Bf109G-6)興味ある作例が多くて物足りなさは感じなかった。タミヤのニューキット1/72「Bf109G-6」は素組みとディティールアップしたものの2例を掲載。自分は仮組みしてコクピットを製作しただけだけど、精密だし嵌合も抜群にいいのであっという間に完成しそう。別売デカールの豊富な機体だけに、アレコレ悩むのも楽しい。
 で、今回一番ぐっときたキットは、モンモデル1/35「マガフ6B ガル・バタシュ」だった。この戦車については「マガフ」って名前の他は何も知らなかったのだが、作例はすごいインパクト。架空の戦車よりも架空の戦車っぽい。ベースはM60パットンとのことだけど、跡形もない(M60は知ってた)。イスラエル凄い。記事では基本塗装とウェザリングを途中写真を用いて解説している。キットの出来もかなりいいらしいけど、調べてみたら結構高額なキットのようだ。うーむ……。
 連載記事の「FOLLOW YOUR HEART』では、メビウス1/8の『2001年宇宙の旅 スペースポッド』が完成している。このサイズのキット(ヘルメットくらいのサイズだとか)を白で塗るのは大変だったらしいが、作例はしっとりとした光沢のある美しい仕上がり。欲しいけど、やっぱでかすぎるなぁ。



 - 作例リスト (掲載順) - 航空機 戦車 艦船 車/バイク ■その他

特集「発表! 飛行機模型グランプリ」

連載記事『METHOD OF JET-MODELING 第1回』
『F-15E』グレートウォール・ホビー 1/48 ※新連載。今回はコクピットの製作

NEW KIT REVIEW Special
『USMC AH-1Z Shark Mouth』アカデミー 1/35

連載記事『地名を名に持つ船とその場所のエピソード 艦船諸国漫遊記 Vol.43』
『アメリカ海軍 軽巡洋艦 ジュノー CL-52』ドラゴン 1/700
『アメリカ海軍 駆逐艦 ザ・サリバンズ DD-537』タミヤ 1/700

連載記事『モデリングJASDF 279回 “オジロロス” 真っ只中でつくる 302SQ白黒つがいのF-4EJ改 その3』
『F-4EJ改 スーパーファントム “302SQ F-4 ファイナルイヤー 2019”』ハセガワ 1/72

NEW KIT REVIEW
『メッサーシュミット Bf109 G-6』タミヤ 1/72 ※作例は2例
『フォードGT ル・マン』ドイツレベル 1/24
『U-2A 高高度偵察機ドラゴンレディ』AFVクラブ 1/48
『ドイツ試作戦車 VK3001(P)』ホビーボス 1/35
『中島 E8N2 九五式二号水上偵察機』RSモデル 1/72 ※ハセガワ1/72「呉式二号射出機五型」使用
『アメリカ空軍 B-1B ランサー』童友社 1/144
『イスラエル主力戦車 マガフ6B ガル・バタシュ』モンモデル 1/35

情報「World Modelers News No.24 アンドリュー・ケアンズ氏にインタビュー」

連載記事『北澤志朗のヤングタイマー・ガレージ 連載第7回』
『フェラーリ F355 ベルリネッタ』フジミ 1/24改造

連載記事『日本機大図鑑 連載第170回』
「「零式三座水偵・九九式艦爆・疾風」の発動機架」

MODEL ART SPECIAL
「F-4EJ Kai」ハセガワ 1/48 ※「DXM デカール」の紹介記事

連載記事『FOLLOW YOUR HEART 第60回』
■『2001年宇宙の旅 スペースポッド』メビウス 1/8 ※完成

連載記事『It’s a FIGURE WORLD 目眩くフィギュアの世界』
「中国 義和団員 1900年」エリート 70mm
「義和団員 1900年」アレクサンドロス 75mm
「義和団員 1900年」ヴァリアント 54mm



 次号の特集は「戦艦大和と艦船模型 製作法のあれこれ (仮題)」が予定されている。



IDF イスラエル主力戦車 マガフ6B ガル・バタシュ』モンモデル 1/35

SCALE AVIATION (スケールアヴィエーション) 2019年 05月号 Vol.127

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 SCALE AVIATION (スケールアヴィエーション) 2019年 05月号 Vol.127

 更新がズレにズレまくっているが、『SCALE AVIATION』5月号の特集は『メッサーシュミット Me323 ギガント』。その冗談みたいなデカさと形状から知名度の高い(おそらく人気も高い)機体である。自分が知ってる限り、これまで模型雑誌で特集されたことはなかったはず。とても珍しい特集だ。で、そのギガント、実機がどのくらいのサイズかっていうと、戦車やトラックを積めるサイズ。でかい。しかも全体が羽布張りのうえ、ぬぼーっとした表情の「顔」が明確にある。レトロなSFにでも出てきそうな雰囲気の機体で、戦闘機ばっかり買ってる自分もしっかりストックしている。確か雑誌『マスターモデラーズ』に載ってた作例を見て衝動買いしたものだ。
 特集記事の作例はイタレリの1/72が中心で、他にピットロードの1/144、ついでにハセガワの1/72「He111Z」が載ってる。作例が少なめなことから、一例ずつのページ数が多くて見応えがあった。今回は連載記事の『改造しちゃアカン リターンズ!』でも、特集に合わせてイタレリのギガントが取り上げられている。機体表面のリブテープを表現する等、大変そうなディティールアップの施された作例は大迫力。こちらもページがたっぷり割かれているのが嬉しい。
 また連載記事の『ちっちゃいことは、いいことだ!』ではガンダムの「アウドムラ」、『夢見る翼』では「スーパーグッピー201」、新連載の『Planes of Toy Box』では「ポテ 540」、それからナウシカの「トルメキア軍 戦列艦」のフルスクラッチが取り上げられている。非常にバラエティに富んだラインナップで、ギガント特集とはいうもののトータルでは「でかい機体特集号」といった趣きの一冊になっている。
 


 - 作例リスト (掲載順) -

特集「Messerschmitt Me323 GIGANT」
連載記事『改造しちゃアカン リターンズ!』
『メッサーシュミット Me323E-2 ギガント』イタレリ 1/72改造 ※レベル1/72「ファモ」「17cm砲」ローデン1/72「オペルブリッツ」の作例も併載
『メッサーシュミット Me323D-1 ギガント』ピットロード 1/144 ※ジオラマ作品

SPECIAL ARTICLE
「たまごガールズコレクション No.1 羽澄れい」ハセガワ 1/12 ※レジンキャストキットの完成見本

特集「Messerschmitt Me323 GIGANT」
『メッサーシュミット Me323E-2/WT ギガント』イタレリ 1/72改造
『ハインケル He111Z ツヴィーリンク』ハセガワ 1/72
『メッサーシュミット Me321 ギガント』イタレリ 1/72

SPECIAL ARTICLE
「キ43-1 中島 一式戦闘機 隼 一型丙」ファインモールド 1/72 ※マガジンキットの紹介記事

連載記事『Alternative modeling garage vol.21』
『英米空挺部隊・対抗拳闘大会試合シーン9体』マスターボックス 1/35 ※モノクロ記事、フィギュアの製作記事

連載記事『ちっちゃいことは、いいことだ!』
『2分で作る! ガンダム名鑑ガム2 アウドムラ』バンダイ ノンスケール(1/5374スケール相当) ※モノクロ記事

連載記事『Planes of Toy Box 第1回』
『ポテ 540』エレール 1/72

連載記事『夢見る翼 NO.63』
『スーパーグッピー201』オオタキ 1/144

連載記事『MINIOR AIR FORCE LABORATORY Vol.3』
『パキスタン空軍 CAC/PAC JF-17 サンダー』トランペッター 1/72

SPECIAL ARTICLE
『一式陸上攻撃機』タミヤ 1/72 ※ジオラマ作品

SPECIAL ARTICLE
『トルメキア軍 戦列艦』フルスクラッチ 1/72

『NOSE ART QUEEN Vol.67』近藤みやび



 次号は本誌2回目のスウェーデン空軍特集。「Swedish Air Force」。


 

メッサーシュミット Me323 ギガント』タミヤ/イタレリ 1/72

手塚治虫『鉄の旋律』

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 手塚治虫『鉄の旋律』(『手塚治虫漫画全集 MT96 鉄の旋律』講談社 1980 所収)

 妹がイタリアンマフィアの御曹司と結婚した。主人公のダン・タクヤもなし崩し的にファミリーの一員となった。マフィアの内情に無知だったタクヤは、知らずファミリーの掟を破ってしまい、残酷な制裁を受けることになった。両腕をトロッコで轢断されたのである。瀕死の状態でファミリーから放逐されたタクヤは「意志どおりに動く義手」を求めてさまよい、カリフォルニア大学超心理学研究室でESPの研究をする一人のユダヤ人科学者と知り合った。彼はタクヤが望む義手をくれるという。ただし科学者の提示する過酷な要求に、忠実に従えばとのことだった。
 拷問のような長いトレーニングの末、タクヤは念願の義手を得た。金属の筒で構成された義手は何ら稼働のための仕組みを持たないがらんどうの物体だったが、タクヤはPKによってそれを自由に動かすことができた。当然、拳銃の引き金を引くことも。タクヤの復讐が始まる。

 トロッコと線路、金属の義手、拳銃、金属の質感が印象的な作品。サイキックものである。雰囲気は『スキャナーズ』(1981)とかあの辺で、あとがきに「ぼくの青年マンガには夢のひろがりがなく、たのしさにかける、といった読者がいます。はっきりいえば、ぼくは青年マンガでは、そういうものをつとめて消そうとしているのです」とある通り、終始陰鬱で殺伐としている。
 超能力ものの鉄板ネタで構成されたストーリーは、著者が「無茶苦茶に雑誌の仕事に突進していった時期の作品」というわりに、お手本のように美しく整っていてよどみがない。自分が読んでて楽しかったのは、主人公の復讐を描いた後半よりも、前半のトレーニングのくだりだった。強制的にPKの発現を促す方法は、主人公を高温の室内で拘束し、水の入ったコップをその眼前に置くだけというシンプルなもので、極限状態における渇望が超自然の力を呼び起こすらしい。リアリティの塩梅が絶妙で、実際にできそうな感じなのが素晴らしい。ネタ的にはいかがわしさ満点のはずなのに、いかがわしい感じにならないのが著者の作品らしい。本作のキーマンであるユダヤ人の科学者は、登場人物の中で最もマンガ的に表現されたキャラで、大戦中、強制収容所で拷問や飢餓で死にそうになりながら、収容所長を念じて殺したという過去話も面白かった。超能力の発現から暴走までを、真正面から、地味に描き切った佳作。



『手塚治虫漫画全集 MT96 鉄の旋律』
 講談社 1980
 著者:手塚治虫

 収録作品
 『鉄の旋律』
 『白い幻影』
 『レボリューション』

 ISBN-13:978-4-0610-8696-8
 ISBN-10:4-0610-8696-8

『ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』

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ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館

 粒揃いだった前巻とは打って変わって玉石混淆な一冊。作画、構成が安定したエピソードに混じって、久々にかなり崩れた作画が見られた。また投稿内容を消化しきれないまま終わってしまってるような、ごく短いエピソードもあった。投稿者(体験者)の年齢は前号よりやや上がっており、住居や職場の体験が中心になっている。この巻にもドラマ化されたエピソードが複数収録されている。

 同一の作画担当者による第一話〜第四話は、すごく怖いってわけではないけれど、手堅くまとめられた印象。「第一話 奇妙な同居人」では三角形の土地に建てられた三角形の家に怪奇現象が頻発する。変わった形の土地というのは使いづらいだけじゃなくて、風水的にも凶相らしく、なかでもシンプルな三角形は例としてあげられることが多い。聞くところによると土地の角の形状や数が重要らしい。実際に有名な事件、事故が凶相の土地で発生しているケースがあり、そうした土地の建物を舞台にした実話怪談も散見される。
 ほとほど怖さの第一話~第四話のうち、最も怖ろしいの絵面があるのは「第四話 真夜中に忍び寄る…」だった。内容はいまいち脈絡のない心霊体験談ながら、「階段の幽霊」の邪悪な顔貌が素晴らしい。サブタイもいい感じだ。

 体験者の年齢が高めってことで、本シリーズには珍しい不倫がらみのエピソードが収録されている。「第十話 暗い目の少女」がそれで、夫との不倫の末、生霊と化した少女に祟られる妻子の体験談だ。『今昔物語集』にも載ってるような古典的なテーマだが、少女向けのこのシリーズに含まれているとちょっと新鮮に感じる。手にした出刃包丁で妻の全身はおろか、「何度も何度も子宮のあたりを刺す」という少女の生霊がおぞましい。本シリーズの古くからのレギュラーである黒田祐乎による第九話~第十一話は、作画のレベルも高く構成も上々で読み応えがあった。



『奇妙な同居人 他』画・七色虹子 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号、11月号、’93『ハロウィン』9月号 掲載
 「第一話 奇妙な同居人」投稿者・茨城県 匿名希望 ※幽霊屋敷・金縛り
 「第二話 私が来る!?」投稿者・福岡県 克子さん ※ドッペルゲンガー・霊感少女
 「第三話 雨女」投稿者・東京都 ふぶきまなみ(仮名)さん ※路上の怪
 「第四話 真夜中に忍び寄る…」投稿者・富山県 山下貴子(仮名)さん ※霊感少女

『第五話 魔の棲む部屋』投稿者・福岡県 児玉幹子さん 画・藤方萌葱 ’93『ハロウィン』11月号 掲載 ※幽霊屋敷

『第六話さよならの予言』投稿者・大阪府 岸恵美子さん 画・天ヶ江ルチカ ’93『ほんとにあった怖い話』7月号 掲載 ※予知・霊感少女

『霊感上司 他』画・神谷和巳 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、’93『ハロウィン』7月号 掲載
 「第七話 霊感上司」投稿者・愛媛県 匿名希望さん ※霊能者
 「第八話 青白い手」投稿者・栃木県 荒巻由紀子さん ※金縛り

『闇への視覚 他』画・黒田祐乎 ’93『ほんとにあった怖い話』7月号、9月号、11月号 掲載
 「第九話 闇への視覚」投稿者・岐阜県 匿名希望さん ※職場の怪談
 「第十話 暗い目の少女」投稿者・千葉県 山口奈美さん ※生き霊
 「第十一話 花博怪談」投稿者・島根県 匿名希望さん ※職場の怪談



『ほんとにあった怖い話〈26〉読者の恐怖体験談集』
 朝日ソノラマ 1994 ハロウィン少女コミック館
 著者:七色虹子 他

 ISBN-13:978-4-2579-8539-6
 ISBN-10:4-2579-8539-9